某カステラの思い出
百貨店の地下の食品売り場、通称「デパ地下」の定番になっている某カステラがあり、確か長崎県の会社の商品なんですが、小学生の頃、このカステラを父親が買ってきて、誇らしげに私たち子供に食べさせました。その柔らかい生地にしみる砂糖の甘みが幼い舌にはたまらなく美味で、しかし、それは高級であったため、二個も三個も口にできるものではなく、割り当てられた一個をゆっくり味わいながら最後の一切れがなくなってしまうことを惜しみながら、こんなとき、ドラえもんのひみつ道具「バイバイン」があればいいのに、と思いながら、パクリといった思い出の味。行儀悪いことは承知のうえで、まだ子供なんだからおおめに見てよと言わんばかりに、底に付いてあった紙にひっついていた名残りのカステラもぺろりんしました。
大学入学を機に京都へ来て、デパ地下へ行くと、そんな某カステラが平然と並んでおりました。幼少期、黄金に輝いていたあの某カステラが、それなりにお値段を輝かせながら平然と。持ち合わせがなく、そのときは買わなかったんですが、幼い頃を思い出したため、この某カステラが大好きなんだという話を同僚にしたところ、「まあ、もっと美味しいカステラあるけどな」と一蹴され、いやいや、いま私は、どこのカステラがいちばん美味しいかを話してるんじゃないねんっていう、この程度のことでも伝わらなさを痛感する。人と分かり合うというのは簡単なことではないのです。
蠱惑暇
こわくいとま
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以下はイベント告知です。
開催まではしつこく書きます。
いよいよ1週間後となりました。
涌井大宴会in磔磔。
2月26日(月)本編19時30分スタートです。
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当日の1人目のお客様には
この書籍をプレゼントいたします。
コロナ禍を経て高まり続けた磔磔の価値が下がる瞬間を
是非みなさま、目撃しにおいでくださいませ。
予約不要です。
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面白い夜になります。
なんと!この日は取材が入るのだ。
皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
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