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葵書房ノスタルジー

 写真を撮りながら散策すれば、ここで文章だけ書いて投稿するよりも見栄えがいいし、その分たくさんの人に読んでもらえ、「いいね」も増えるのではないかと思うのだが、「いいね」が増えたからって何やねん、という反発心もある。しかし、この反発心は所詮、「いいね」が増えないから芽生えるものであり、毎回1000を超える「いいね」をいただいていたならば、こんな反発心は生まれてこないわけであり、要するに相手にされなくて僻んでいるのであるが、それを書くと「いいね」の多さに拘泥しているようで情けなくなる。俺は別に「いいね」の多さなんて気にはしていないのだ。そこのあなたの心のこもった「いいね」が一つあれば、他に何を望むことがあるだろう。太陽が燃えているだけでは足りないが、「いいね」が一つあれば、俺はそれで満足だ。仮に「いいね」が1000あったとして、それは「いいね」が1000あるのではなく、一つの「いいね」が1000個あるのである。あれ?なんかおかしいこと書いてますかね。ニュアンスだけどうぞ汲み取ってください、このニュアンス泥棒め!!!

 京都市内を散策したことを日記に書こうとしたのにこんな具合に話が逸れてしまう。悪い癖である。思い起こせば一昨日だったか、松竹撮影所へ収録しに行った話を書こうとしたのに、このワガママな左手がどんどんよくわからないフィクションを打ち込んでいき、気づけば「鉄籠日記」という日記風の小説になってしまっていた。松竹撮影所のある太秦界隈を歩いたのも久しぶりだったから、その散策日記も近いうちに書きたい。

 今日は散策といっても自転車なのだが、北大路通りまで行ってきた。近頃また少しずつ売れている私の著書『1人目の客』に収録されている「千北のエマ」という短編小説にも北大路通りが出てくるのだが、あれは烏丸通り以西、千本北大路あたりまでの北大路通り。今日俺が向かったのは加茂街道より東、加茂川と高野川の間である。二つの川がY字に流れているうちのVの内部である。扇型になっており、その扇の中央、芯のようにして下鴨本通りが貫いている。 
 下鴨神社の糺の森や出町桝形商店街、出町ふたば、みたらし団子が有名な甘味処、そこに至るよりもっと前、丸太町あたりの誠光社や、その近くの銭湯その他もろもろ、撮るべき場所がいくらでもあったはずの自転車の旅なのに、結局私が撮った写真は一枚だけ。下鴨本通りと北大路通りが交差する交差点の東南角、葵書房の跡地である。

 大学卒業後、出雲路橋西詰近く、加茂川沿いのグッピーハウスというアパートに引越した俺は、ろくに就職活動などせず、バンド活動に力を入れ、当時のバンドマンや芸人、芸術家たちの悪ノリに感化され、クズであることこそ、ステータスであるというような錯覚に毒されており、実に実に不毛で不純で他人にとっては不愉快でしかない二十代を過ごしていたのだが、そのくせ、文化人には憧れがあり、その頃の俺にとっての文化人といえば三島由紀夫だったり、澁澤龍彦だったりしたわけだが、そういう本を俺は恵文社一乗寺店へ買いに行っていた。ただ、出雲路橋西詰から一乗寺は少しばかり遠いのである。葵書房はちょうどいい距離のところに位置していたし、ごくごく個人的なことを書くと、葵書房の少し北に当時お付き合いしていた彼女が住んでいたものだから、私 俺にとって、あのあたりは庭でもあったのだ。ちょっと北へいくと、ちょっと高級なスーパーがあり、そこでちょっとした高級食材を買うのも楽しみだった。あのスーパーまだあるのかしら。

 かといって、取り立てて思い出があるわけではない葵書房なんであるが、それはつまり、俺にとってあまりにも日常であったということでもあるわけで、そんな葵書房が今、もう営業をやめて五年くらい経つのだろうか。閉店したまま、まだ別の店になっておらず、外観がそのまま残っていることがより悲しさを助長する。

 少し西へいくと、あの頃から伝説的に美味いと評判だった「いいちょラーメン」があるのだが、こちらは最近、ご主人がお亡くなりになったという。京都新聞で知った。確か俺の趣味が記事になったのと同じ日の京都新聞じゃなかったかな。いまは遺志を継いで息子さんがお店を営んでいるらしい。久しぶりに行ってみようかと思ったらお休みであった。そういう星の下を散策している。

 「いいちょラーメン」のすぐ近くにオリジナルTシャツのプリントをしてくれるお店があり、そこにオーダーしていた「1人目の客Tシャツ」が完成したので取りにいったというわけなのである。明日、明石家電視台に出演するのを記念して新たに作った。すでに暇書房にて販売しているのであるが、明日の電視台出演後にちゃんと告知しようと思っている。

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というわけで、ウェブショップ「暇書房」で是非私の著書『1人目の客』をお買い求めください🎵

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