見出し画像

1人目の客になれた話 京都南座編

 趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。この趣味についてまとめた書籍『1人目の客』の販売を開始したり、京都新聞に掲載していただいたりしたおかげで、ずいぶんこの趣味も周知されてきたように思うのですが、先ほど花見客でごった返す木屋町を1人目の客Tシャツを着て闊歩する私に声を掛ける人は一人もいませんでした。

 何故私が木屋町を闊歩していたかというと、本日、四条大橋を渡ってすぐのところにある南座に新店がオープンするという情報を仕入れたからです。昨日この情報を私に知らせてくださったN氏は昨日のうちにレセプションに行っていたらしく、紙資料もいただきました。

 私は全く知らなかったのですが、今日オープンする「なだ万茶屋」なるお店はなかなかの高級店であり、本来なら私のような下々の人間が足を踏み入れることのない感じのお店らしい。
いやいや、そやけど、うどん屋やで?と思い、改めて紙資料を確認してみると、いちばん安い「あごだし稲庭うどん」が税込1650円。。。
むむむ、や、や、や、安いなー。しかし、私の給料はもっともっと安いからな。←鳥肌実

 しかし私はオープンしたお店の1人目の客になることを趣味にしており、新店開店の情報を知り、行けないわけではない以上、私は行かねばならぬのだ。それが趣味というものだ。

 阪急京都河原町駅を降り、地上へ上がり、木屋町通り沿いに咲く満開の桜には見向きもせず、四条大橋を早歩きで渡りきったところ、南座前の川端四条の交差点は東岸へ渡る歩行者信号がちょうど赤になってしまった。はやる気持ちを抑えきれず、京阪祇園四条駅へと向かう地下へ降り、地下道を抜けて南座前の出口を出ると木屋町と変わらぬ混雑ぶりですが、どことなくおじいちゃんおばあちゃんが多いようです。今日は南座で舟木一夫のコンサートが予定されている。

 せっかく紙資料があるのでお店について書いておくと、もともと南座のこの場所には「なだ万茶寮 京都四條南座」というレストランがあったのですが、このたび、1830年創業のなだ万史上初の「うどん専門店」として今回、「京都南座 なだ万茶屋」がオープンするということらしい。レストラン時代は観劇客限定のお店だったのですが、新たに川端通り沿いに玄関を作り、観劇以外の人も入店できるようになりました。

 そう、川端通りにはもともと玄関なんてなかったのです。だから私はこの玄関を見つけるまで四条通り沿いの南座前を右往左往東奔西走四苦八苦しておりまして、こうしているうちに誰かが1人目の客になりはしないかとお花見日和の陽気の下、冷たい汗をかいておりました。
 紙資料に再び目を通し、川端通り沿いの玄関の存在を知った私はフル回転の早歩きでそちらへ向かうと関係者らしきスーツ姿の皆さんが開店を祝う胡蝶蘭の前に集まっておりました。
 どうやら誰もお客さんはいないらしい。

 「柔和」で画像検索したら出てきそうな柔和な顔したスタッフのおじさまが「11時30分開店でございます」とおっしゃるので「待たせてもらってもよいですか」と聞くと「ありがとうございます」とさらに柔和どん!といった笑顔を見せてくださり、晴れて私は1人目の客になることを確定させたのですが、そうしたところ、別の女性スタッフの方が「すごい!1人目の客って書いてあるんですね」とおっしゃるので、「はい、実は新店の1人目の客になるのを趣味にしておりまして」と話す私の顔もまた「柔和」で画像検索したら出てきそうな表情であったと思う。

実際に「柔和」で画像検索してみた結果がこちら


「何や、今日オープンかいな?何時や?11時半!?ほな待たせてもらおかいな」
 既に少し酒が入っているのではないかという上機嫌なおじさまがやってきて、スタッフさんを捕まえ、なんやかんやと話しはじめる。
「なだ万はわし好っきゃで。よう弁当買うたわ。おん?ここはうどんなんか?硬いんか、柔らかいんか?」
「当店稲庭うどんでして京都は柔らかいんですけどうちはちょっと硬めで」
「太いんか?細いんか?」
「細めですね」
「ほうかいなほうかいな、で、兄ちゃんはオープンを待っとるわけや。わしは2人目の客っちゅうわけやな」
 その後、おじさまが三重県から舟木一夫のコンサートを観にやってきたことや、母校の松阪高校はかつて甲子園に出場したことがあることを知る。おじさまが来てからのオープンを待つ時間は光陰矢のごとしといった趣がありました。

 いよいよオープン、純白の生地に店名の書かれた暖簾をくぐり抜けると赤色の絨毯が2階にあるお店まで続いています。階段には鴨川沿いに座るカップルの如く等間隔に胡蝶蘭が置いてありました。スタッフの方が入店する私とおじさまの姿を撮影しています。もちろん事前に我々が了承しておるものです。あの動画、どこかでアップされるんだろうか。アップされたら私の存在がさらに周知されてしまう。街中で声を掛けられる日も近い。

 令和6年4月6日、京都南座にオープンしたなだ万初のうどん専門店「京都南座 なだ万茶屋」の1人目の客は私です。

いえい!!
トッピングしたきつねの分厚さにびびりました



 そんな私の活動や著書『1人目の客』についてお話する機会をいただきました!本日23時配信のYouTube「魔女ラジライブラリー」に出演させていただきます!melodyさんとblondyさん、よろしくお願いいたします!

めちゃくちゃ緊張しております、、、



 そんな魔女の皆さんに朗読していただいた猫の短編小説3作も収録されている『1人目の客』はネットショップ「暇書房」でご購入いただけます。今日一冊注文ありました!ありがとうございます😭


 

#note日記 #日記 #コラム #エッセイ
#1人目の客 #蠱惑暇 #こわくいとま
#暇書房 #京都南座 #なだ万茶屋 #うどん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?