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令和6年読書の記録 藤井直敬『現実とは?脳と意識とテクノロジーの未来』

 あなたにとって「現実」とは何?この一見当たり前すぎる問いに、解剖学者、言語心理学者、メタバース専門家、能楽師など各界の俊英が出した八者八様の答えとは。SR(代替現実)や脳と機械をつなぐBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)などのテクノロジーの進展により、脳に気づかれることなく「現実」を操作できるようになった現代。科学と哲学の融合した「現実科学」がここから始まる。あなたの脳をあらゆる角度から刺激し、「現実」をゆたかにするヒントを提示する知の冒険の書。

↑カバーそでに書いてある解説より

 この解説に「脳に気づかれることなく「現実」を操作できるようになった現代」って当たり前に書いてあるんですけど、「そうなん?」って思った私が果たしてこの本を読んでよいのかしら?と躊躇いもありながら読みましたが、確かによくわからない難しい内容の箇所が多い!しかしながら、中年の私に少し背伸びをさせてくれ、知的好奇心を揺り起こしてくれる一冊でありました。

 近頃、同じ世界を生きているにもかかわらず、見えている現実が違うのではないか、と思うことがあまりにも多い。ロシアのウクライナ侵攻しかり、イスラエルとハマスの問題しかり。京都国際の校歌について読むに堪えない罵詈雑言をSNS上で見つけたりもする。私の見ている現実と他人の見ている現実はどうやら違う現実らしい、ということをふんわり考えていたところ、我が家の本棚にこの本を見つけたのは、今読めということだったのだと思う。

 本書で「現実とは?」を語っているのは以下の八人です。

●東京大学総長特任補佐・先端科学技術研究センター副所長/教授の稲見昌彦さん

●アーティスト、妄想インベンターの市原えつこさん

●解剖学者の養老孟司さん

●情報科学者の暦本純一さん

●慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみさん

●クラスター株式会社代表取締役CEOの加藤直人さん

●下掛宝生流ワキ方能楽師の安田登さん

●東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長の伊藤亜紗さん

 八名の俊英に「現実とは?」という問いを投げかけるのが株式会社ハコスコ代表取締役社長で医学博士・脳科学者の藤井直敬さんです。

 難しい内容であるにもかかわらず、なんというか、とてもポップな感じに仕上がっていて読みやすいのは各章ごとに藤井さんがうまいこと、わかりやすく丁寧にまとめてくださっているからなのでしょうか。
(藤井さんと苗字にさん付けすると全然知らない人なのに変に知ってる感が出て逆に失礼なんじゃないかと思ってしまう)
 
 なんだかよくわからない話で藤井さんとゲストの方が盛り上がっているのを読んでいると、よくわからないけど、「ああ、この人たちの見ている現実があるんだなー」と納得してしまう。この人たちの見ている現実のことをもっと知りたいと思う。だから、よくわからないものを読むという、その行為自体がもう既に私の脳をあらゆる角度から刺激し、「現実」をゆたかにしてくれていると思う。

 今井むつみさんや養老孟司さん、伊藤亜紗さんは著作を読んだことがありますが、他の方々については名前を見るのもはじめてでした。皆さん面白い方たちで、今回この本が皆さんの研究分野、活動分野への私にとっての入口になりました。

 以前、能の勉強を挫折したことがあるのですが、安田登さんのお話を読み、また能のことを学んでみたいと思いました。八者八様の内容について書くと膨大な文字数になってしまうけど、ここまで書いた内容はこの本を紹介するにあたり実に薄っぺらい。本を紹介するのは難しいですね。back numberのクリスマスソングばりに長くなりすぎたからまとめると、「この本面白いよ」

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