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東京日記3 浦安

舞浜を出発した武蔵野線は東へ走る。おそらく東へ向かっている。路線図は時に方角や距離をおもいきり無視することがあるから実際のところはわからない。しばらく電車に揺られるらしいから、本でも読もうと鞄の中をがさごそ探す。大多数の乗客が舞浜で降りたから車内は閑散としている。ふと顔をあげると、車窓から太陽光の反射した海面が見える。乗客が多ければ今座っているロングシートの端の席からは見えなかったはずだ。舞浜駅まで気がつかなかったのはそのためだろう。
 折しも先日、サザンオールスターズ の茅ヶ崎ライブを観たばかりである。ここは湘南ではないが、この海はあの海と繋がっているし、伊豆の海にも繋がっている。伊豆の漁師の言葉で雁渡しというのがある。初秋から仲秋にかけて吹く北風のことで、この頃、雁が渡ってくることから雁渡しと呼ぶ。雁渡しが吹き出すと、潮も空も秋らしく青く澄むようになるという。すべて角川の俳句歳時記に書いてあった。
 目の前には澄み渡る青空の下、太陽光に海が煌めいている。雁渡しで一句できそうな気がした。新浦安駅あたりのことである。
 浦安といえば、水島新司の『球道くん』で中西球道の一家が住むことになった町のはず。現実の浦安を眺めるのは初めてであるが、豪腕で鳴らす球道くんが汚れたユニフォームで野球漬けの毎日を送っているところを想像し、ああ、この町であの野球少年は思春期を過ごしたのか、と思いを巡らせる頃には太陽光の乱反射した海は見えなくなっていて、代わりに合成樹脂などを作っていそうなコンビナートが現れた。建物の一棟一棟がでかい。スーパーマリオ3の巨大の国に来たかのようだ。土地の使い方が潔い。東京都心や京都市内は、ちんまりした町だと思う。京都なんて紅葉にしろ桜にしろ、こじんまりと上品すぎる。悪くはないが、山全体が真紅に染まるというような紅葉が観たいではないか。浦安のコンビナートはでかい。

続く
※続かないかもしれない

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