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消える壁消えない壁

 お昼にラーメン屋へ行く。定食を注文するとたやすく千円を超えてしまう。数年前はこんなじゃなかった。よほどのことがなければ千円を超えることなんてなかったんだ。ところが今は定食でなくとも、ちょっとラーメンを大盛りにするだけでも千円を超えてしまう。千円がもはや壁ではなくなってしまっている。

 この感覚は何だと思い返してみる。あれだ。四天王プロレスと呼ばれた全日本プロレスの2.9カウントの応酬。三沢のエメラルドフロウジョンを小橋が返したとき、「これはあかんやつや」と思った。
 ドラゴンボールや魁!男塾で主要メンバーが続々と生き返ったときにも思った。ドラゴンボールでは終盤に悟空が「どうせドラゴンボールで生き返るんだから大丈夫だ」みたいなことを言ったことがある。正確なセリフがどんなだったかは忘れたが、「これはあかんやつや」と思った。男塾に関しては、主要メンバーがみんな生き返るのに蝙翔鬼と独眼鉄と男爵ディーノは生き返らせてもらえなかったのが残酷だった。

 一度タガが外れると外れているのが当たり前になってしまう。ラーメン屋もたぶん千円の壁には随分抵抗したのだと思うが、ついに千円はたいした壁ではなくなってしまった。オリンピックでバスケットボールの試合を見たが、背の高い選手が優々ダンクを決めているのも、なんとなくタガが外れてしまっている気がする。ダンクは見せ場の一つには違いないが、あれだけ背の高い選手が有利になると競技としての公平性はどうなのか、と思ってしまう。例えばゴールの高さをいまより50cm高くするとか、そういう対策が必要なのではないか、内村航平さんが背の高い選手がずるいというようなことを言っていたが、私もそれに賛成である。※バスケットボールのことをよく知らない人間の戯言です。

 文庫本もそういえば最近は千円の壁が消えつつあるし、新聞の書評を見ていると近頃の書籍は普通に三千円四千円するから値段を先に見て到底手が届かないとわかったら最初からその書評は読まなくなった。

 知らないうちにいろんなところで壁が消えている。消えてほしくない壁ほど消えてしまった気がする。

#日記 #コラム #エッセイ
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