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読書の記録 万城目学『八月の御所グラウンド』

 エフエム京都のフラワーハミングという番組に万城目学さんがゲスト出演されていて、今月刊行されたばかりの新作『八月の御所グラウンド』についてお話されていました。

 今回のお話は京都が舞台。表題作「八月の御所グラウンド」は八月の御所グラウンドを舞台にした草野球の物語、もう一作「十二月の都大路上下ル」は十二月の京都の風物詩、女子駅伝のお話です。

 万城目さんといえばデビュー作が『鴨川ホルモー』で、京都のイメージがあるんですが意外と京都が舞台の作品は今回が約十六年ぶりとのこと。京都はあらゆる作家さんが題材にしているため、万城目さんの目にはもはや焼け野原にしか見えないらしい。京都をそんな風にしてしまった作家はたくさんいますが、その代表が万城目さんご本人であり、そして森見登美彦さんであるとのことで、もはや京都で物語は作れぬとばかりに万城目さんは奈良で『鹿男あをによし』滋賀で『偉大なるしゅららぼん』大阪では『プリンセス・トヨトミ』を書き上げ、京都の外堀を埋め、はからずも森見さんを京都に閉じ込めることになったらしい。

 そんな万城目さんがどうして今、再び京都を舞台にした物語を書いたのか、といえば、焼け野原の中から書ける題材が見つかったわけで、それが何かというと「生者」と「死者」との繋がりであり、このことが思い浮かんだときに「いける!」と思った、というようなことを話しておられました。「八月の御所グラウンド」では大学生の草野球、「十二月の都大路上下ル」では女子高生の駅伝と、生者と死者が交わり合います。

 「八月の御所グラウンド」では「あなたには火がない」と言われ彼女にフラれた朽木くんが草野球を通じて「火」をたぎらせていく様子もなんかええやん!って思うし、ぐっとくるところに「死者」がやってくるんですからね。普通の青春小説で終わらんところがいいっすよね。面白い!是非今月読みたい一冊ですね。  

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