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読書の記録 岡本真帆『水上バス浅草行き』
短歌研究2月号の巻頭作品「バック・グラウンド・ムービー」がすごくいいなと思ったので岡本真帆さんの名前を検索したら『水上バス浅草行き』が出てきて、帯に
ほんとうに
あたしでいいの?
ずぼらだし、
傘もこんなに
たくさんあるし
っていう短歌が載っていました。
この短歌がいつ作られたものかわかりませんが、私は確かにこの短歌を以前にも見たことがあり、そのときに「うわー、なんて素敵な短歌なんやろか」と思ったことを思い出しました。
この感覚は、私、以前にも経験がありまして、
吉田美奈子さんの「夢で逢えたら」めちゃくちゃええ曲やな〜。。
須藤薫さんの「あなただけI love you」めちゃくちゃええ曲やな〜。。
森進一の「冬のリヴィエラ」めちゃくちゃええ曲やな〜。。
調べてみたら全部作曲大滝詠一やん!!っていう、あの驚きが岡本真帆さんの短歌にもあったわけです。
こうなれば、もう間違いないやん?
すぐに書店で『水上バス浅草行き』を買いました。一日に少しずつ読んでいきました。
日常のなんでもないような出来事がすごく丁寧に誇張されることなくうまいこと三十一文字にハマってるのがすごいなー。
悲しい気持ちのときに開いて読んでみたら、なんか三十一文字に慰められるような、なんか変な感覚があって、すごく、しんどいとき、つらいときに寄り添ってくれるような不思議な力を持っているなと感じました。
正直なところ、短歌の歌集って余白も多いし、同じ金額でこのボリュームはもったいないんじゃないかっていうことを、裕福ではない私なんぞは悲しいかな、考えてしまうんですが、この余白こそが短歌。余白はこちらで埋めていくのだ。好き勝手な解釈で余白を埋めたら、心の隙間も埋まるのだ。
巻末の短い「あとがき」もとてもよかった。
岡本真帆さんいわく、浅草行き水上バスは、浅草に急いで向かう乗り物じゃない。むしろ、乗らなくてもいい、そんな乗り物。でも、そんな一見無駄のように思える存在が、私を生かしてくれるんだって書いていて、私もそういうものが好きで好きでたまらなくて、だから、緊急事態宣言の頃、そういう「なくても生きていけるもの」たちが、不要不急だと弾かれていくのが悲しく、さらに、その「なくても生きていけるもの」たちが「俺たちは不要不急じゃない」と気張らなければまたならないことが悲しくて仕方なかった。
水上バス浅草行きみたいな存在が、そのまま愛される世界が好きだ。私もそういうものを作りたい。
ここ最近、悲しい気持ちに支配されているなかで読んでいたら、心が晴れ晴れとしたり、きゅーっと締め付けられたり、何かと余白が騒がしくってしまったなかで、すごくすごくいいなと思った短歌を引用させてください。
自分にも飼い慣らせない動物を抱きしめて寝るような孤独だ
↑泣いた。
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