二つの世界の狭間で【怪談・怖い話】
これは、北陸のある町に住む山下君が体験した話だ。
山下君は高校三年生の時、ある女性のために東尋坊を訪れた。その女性とは、数年前に東尋坊から落ちて亡くなったクラスメートの沙織さんであった。彼は毎年、沙織さんの命日に東尋坊へ行き、彼女を弔っていた。そんなある日、山下君の母親から電話が入った。兄が植物状態からついに亡くなったという連絡だった。しかし、母親の声には悲しみの色はなく、冷たい口調で事務的に知らせてきた。
東尋坊の崖に立っていた山下君は、ショックと悲しみに暮れていた。そ