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記事一覧

偽りの管理人【怪談・怖い話】

私はかつて、大学の片手間で定食屋の配達員のバイトをしていました。そこは長年にわたり、近隣の学生マンションへの宅配をメインの業務としてきました。しかし、ある出来事がきっかけで、一切の宅配を拒否するようになったのです。 その頃、私は夜な夜な、ある古びた学生マンションへ注文を受けることがありました。マンションの外観はボロボロで、無人のように見えました。それでも、中から「管理人室です」という声が聞こえたため、私は戸口を叩きました。するとヒョロっとした男がドアを開け、私は安心して食事

湖畔のキャンプで消えた娘と謎の友達【怪談・怖い話】

一年前のことだった。私たちと友人家族は、とある湖の近くでキャンプを楽しんでいた。チェックインは昼の1時、テントの設営を終え、大人たちは休憩、子供たちは周辺で遊んでいた。その時は平和で楽しい時間が流れていた。 夕食の準備が整い、子供たちを呼び戻そうとしたところ、当時小学校1年生の娘が見当たらなかった。子供たちに尋ねても、さっきまで一緒に遊んでいたというだけで、行方はわからなかった。 キャンプ場は閑散としており、私たちのグループともう二組のグループしかいなかった。見通しの良い

コンクリートの向こう:誰かが見ていた【怪談・怖い話】

俺が小学生だった頃の話だ。三階の廊下の奥に、どこにも通じていないドアがあった。そこを開けると外に出られるが、行き先は何もない空間。よく小学一年生たちが鬼ごっこに夢中になり、このドアを開けてしまうことがあった。結果、三階から落ちて即死する事故が頻発したんだ。俺の記憶では、一年間で十人近くの生徒がこの事故で亡くなったと思う。さすがに学校側もこれを重く見て、対策を講じることになった。 その結果、問題のドアはコンクリートで埋められた。外から見ると、三階のドアから地面まで血の跡が残り

県道で見つけた奇妙な店【怪談・怖い話】

ワイは仕事柄いろんな街に行くんやが、そんとき看板とかちらっと見るんや。結構おもしろいのもあったりするからな。例えばでっかい社長の顔看板とか。 ある時、某県道を走ってた時に妙な看板を見つけたんや。「この先***m ---屋」って書いてあった。こんなかすれてんのにほったらかしとくんか、とちょっと疑問に思ったけど、そんなこともあるかと切り替えた。 そんで帰る前にその近くを通ると、今度ははっきり読めた。 「この先100m 呪い屋」って。 仕事終わりで疲れもあったからか、ボーッと見

深夜に鏡を覗いてはいけない【怪談・怖い話】

「あんた、深夜に鏡を覗いたら、ろくなことが起きんよ」。 祖母の言葉が今も耳に残る。子供の頃、そう言われるたびに、鏡の中から手が伸びてくるイメージが浮かんで、夜な夜な布団をかぶって震えたものだ。しかし、大学生になって理系の道を歩むうち、そんな迷信を信じることはなくなった。 ある深夜のこと、テスト勉強に追われ、寝不足で目がしょぼしょぼしていた。時計は午前2時を指していた。無意識に鏡を見たその瞬間、祖母の警告が頭をよぎったが、「馬鹿馬鹿しい」と笑い飛ばしてしまった。科学的に考えれ

呪われた運動部員の秘密【怪談・怖い話】

友人から聞いた話をしよう。10年以上前の話になる。彼はK高校に入学し、寮生活を始めた。当時、その学校は運動部が強かったが、相当荒れていたらしい。大きく分けると、ヤンキー、助っ人外人、スポーツ推薦の脳筋、いじめられっ子、普通の人の五つに分類される。友人は陸上部で、普通の人に分類されていた。 ある日、クラスのいじめられっ子が学校に来なくなった。彼は運動が苦手で、理由もなくボコられていた。その日は寮にいる彼を呼びに行くことになった。誰かが呼びに行くと、彼は素直に学校に来た。教室で

寮生活初夜に聞いた不思議な話【怪談・怖い話】

すごく怪談らしくて気に入ったので記録しておこうと思う。 未成年の飲酒が出てくるけど、何十年も前で時効だから見逃してやってほしい。それと、説明していたらやたら長くなった。 祖父が都会の大学に進学し、寮に入ることになった時の話だ。祖父の父親はこう言った。 「都会には若者を堕落させる誘惑がいっぱいある。田舎から出てきたばかりの1年生なんて、カモにされ放題だ。悪い友達に誘われても、絶対に応じるな」 祖父はこの言葉を胸に刻み、注意深く行動しようと心に決めた。 寮生活が始まって数日後

雨の夜の怪談【怪談・怖い話】

待ってても誰もこないので、自分ではなします。7年くらい前、タクシーの運転手さんに聞いた話です。当時、六本木の会社に勤めていて、夜遅くなることが多かった。仕事半分、遊び半分って感じです。終電を逃すことが多く、タクシーで帰るのが常でした。横浜市に住んでいたので、六本木からだと40分くらいかかります。 その日は4月か5月だった気がします。うっすらと雨が降っていたか、雨上がりでした。六本木で2時過ぎまで遊んでいた私は、アマンドのある交差点から防衛庁、龍土町の方へと歩いてタクシーを拾

兄が見たコワイモン【怪談・怖い話】

九年前のある日、兄が蒼白な顔で家に帰ってきた。釣りに出かけた兄はガタガタ震え、「○○ガマには行くな、コワイモンがいる」と繰り返すばかりだった。温かい紅茶を飲ませると、兄は少しずつ話し始めた。 兄は毎年この時期に釣りに通っているリアス式の湾内へと出かけた。○○ガマは平家の落人が塩田を開拓した場所で、家族で通い詰めていた秘密の釣り場だった。静かな湾内は湖のようで、そこに至るには険しい獣道を下らなければならない。 兄が釣りに行ったその日、昼飯を食べているときに「コワイモン」を見

記憶障害【怪談・怖い話】

冒頭に重要なことを言っておくと、私はこの出来事の真相を知る者ではありません。ただ、私の友人ユミコの経験した怪奇な出来事を伝えるだけです。 ユミコの家族がかつて住んでいた街は、大都会の中心から少し離れた閑静な住宅街でした。うららかな街並みには、のどかな日々が流れていたように見えました。しかし、そんな外観とは裏腹に、ある隣家に怪しい家族が住んでいたのです。 何せその家族は、まるで"生きた化石"のようだったと、ユミコは語ります。皮膚の色は灰白く、髪は土のように赤く、薄ら寒い視線

カビの生えないパンは悪いパン【怪談・怖い話】

若い母親の美由紀は、ネットで読んだ「某製パン会社のパンは添加物まみれだからカビない」という噂を信じてしまった。彼女は「添加物は身体に悪い」と固く信じ、スーパーで買ったパンを家族に与えることを断固拒否した。 美由紀は手作りパンを焼くのが趣味だった。だからこそ、家族のために手作りパンを提供し続けた。しかし、ある日いつものように焼いたパンに見えない雑菌とカビの胞子が潜んでいた。気づかぬうちにカビ毒とサルモネラ菌が発生し、子供たちはひどい下痢と高熱に苦しむこととなった。 病院に緊

小麦パラドックス:長生きしたけりゃパンを喰え【怪談・怖い話】

セイスケは町で名高い健康オタクだった。 小麦製品を徹底的に避ける彼の生活スタイルは、周りから一目置かれていた。たしかに、本屋にいけば、小麦を食べると死ぬ!といわんばかり勢いで小麦の害を警告する本で溢れている。 そんな、友人のサスケも彼の影響を受け、ある程度パン類を控えるようになっていた。 ある日、サスケはセイスケに尋ねた。 「お前さん、パン類は一切食べないんですか?」 「もちろんです」と答えたセイスケ。 しかし、その夜、サスケは偶然セイスケの家に立ち寄り、衝撃的な光景を

須磨海岸の怪異【怪談・怖い話】

三日前のことです。日曜日、徳井さんと吉岡さんと僕の三人で須磨海岸へ行くことにしました。家からそんなに遠くないので、自転車で向かいました。海岸の方に降りる道をバス停の近くで下っていると、四人の暴走族がバイクを止めていました。避けると因縁をつけられそうだったので、僕たちは関心のないふりをして、「昨日のあのゲームさ」とわざと会話しながら通り過ぎようとしました。 ところが、僕の自転車の後ろの部分が彼らのバイクの部品に擦れてしまいました。「やばいな」と思ったのですが、気づかれていない

霧に消える人影【怪談・怖い話】

夜も更け、友人の運転する車で山道を走っていた。 ふと道の端に白いものが目に入った。それは明らかに異質で、私たちは無意識に車を止めた。振り返って確認すると、そこには白い服を着た女が立っていた。裸足で、服も髪も乱れている。何かがおかしい。明らかにこの世のものではなかった。 「ヤバイ、ヤバイって!」と私は叫んだが、友人はバックミラーに釘付けで、一向に車を発進させる気配がない。女はふらふらとこちらに近づいてくる。よく見ると、その体は透けており、背後の景色が薄っすらと見えていた。私は