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2024年5月の記事一覧

霊感商法に魅入られた男《元統一教会信者の独白》【怪談・怖い話】

昭和54年秋、足立区で起こった奇妙な訪問者の話 昭和54年の秋のこと、ぼくは足立区の江北橋近くで突貫工事をしていた。昼下がりの3時、仮設小屋でエバラギから来ているおばちゃんたちとスルメや漬物を食べながら休憩していると、突然小屋のドアが開いて一人の女性が現れた。 「こんにちわー、健康管理センターから来ました田中でーす」 その女性は黒い大きなバッグを肩に掛けており、22-3歳くらいの清楚で可愛らしい感じの人だった。こんなところに訪れるのは普通、押し売りのヤクザくらいのものな

祈りを込めた罪の告白【怪談・怖い話】

この話は真実の出来事である。 数十年前、この町には古くからの施設があり、そこには人智を超えた恐ろしいものが潜んでいた。施設の中には「あってはならないもの」が2つあり、町の英雄とも言うべき精霊者が早期の処理を提言したが、祟りは後世に残されてしまった。 歳月が流れ、町の役員がその呪われた施設に関わると、次々と不運に見舞われるようになった。ヒトラーの生誕地であるオーストリア・ブラウナウ市に類する禍根を持つ施設だった。我が父は、先達の言葉を胸に刻み、祟りを解くことを決意した。

鏡に映る影【怪談・怖い話】

私の名前はフィリップ・ジョーンズ。 就職し、実家を離れて独り暮らしを始めた頃のことがその恐怖の始まりだった。バタバタとした日々の中で、少しおかしな出来事があった。 朝、トイレに入ると、スリッパが乱れて置いてあることがたまにあったのだ。親は整理整頓が厳しく、トイレのスリッパは必ずきちんと並べるよう躾けられていた。その習慣が身についていたため、一人暮らしでもスリッパはいつも揃えて脱いでいた。しかし、忙しい毎日の中でそれほど気にならず、寝ぼけていたのだろうと思っていた。 人は

雨に濡れた悲恋の物語【怪談・怖い話】

天は雨を降らせ、地上は霧に包まれていた。私の祖父の国では、このような日に特別な儀式が営まれるのだった。 雨粒が水たまりに落ちる音が響く中、マリウスは傘を差して歩いていた。突然、寺院の鐘の音が遠くから聞こえてきた。不思議に思いながら、その音に導かれるように足を進めると、やがて葬列に出くわした。 列には知らない顔ぶればかりだったが、奇妙なことに全員が白い薔薇を手にしていた。霧に包まれた薄暗い光景の中、そのコントラストが際立っていた。葬列に紛れた人々の顔は、まるで幽霊のようにぼ

祖母の信仰と変貌【怪談・怖い話】

俺のばあちゃんは仏教に傾倒していて、毎日仏様の話をしてくれたり、お経の話をしてくれたりする。ばあちゃんはとても熱心で、いろんなことを知っていて、確固たる宗教観があるらしい。 小さいころから世話になっている大好きなばあちゃんなんだが、ひとつだけ問題がある。それは、ばあちゃんが妙に排他的だということだ。 キリスト教も新興宗教もひっくるめて馬鹿にしている。そんなばあちゃんが俺の人生に大きな影響を及ぼす出来事が起こるなんて、その時は思いもよらなかった。 ある日、大学の学園祭に遊びに

テレパシー実験【怪談・怖い話】

ある夜、東北地方のとある村で、不思議な体験をした。 心理学が好きな友人の話に興味を持った私は、彼女とテレパシーの実験を試みることにした。二人で遠く離れていても、感情が通じ合うかどうかを試すために、特定の日と時間に互いを思い出すことにした。結果として、十中六回は感情が一致していた。これがただの偶然か、それとも何か深い意味があるのか、私たちは確信を持てなかったが、この実験は私に強い印象を残した。 人間の死の瞬間に遠く離れた親しい者にその知らせが届くことが、単なる怪談ではなく

心の闇に迷い込んだ男【怪談・怖い話】

夏の終わり、ある百物語の饗宴が催された。 暑く蒸し暑い季節が過ぎようとしていた。私は石田という友人から、郊外の寺院で開かれる百物語の会に誘われた。百物語とは、昔ながらの怪談の場に行われる風習だ。百本の蝋燭に火を付け、一人一人が怪談を語り、最後の一本の蝋燭が消えた時、本当の幽霊が現れるという噂がある。石田は最近、写真を趣味としており、そういった風物が好きらしい。一方で私は、彼とは正反対の人間だった。脚本を書いており、演劇の常識を打ち破ることに情熱を燃やしていた。だが、この百

行商人の復讐【怪談・怖い話】

【オマージュ】田中貢太郎作/狸と同棲する人妻 山形県最上郡豊田村に住む行商人、仁蔵は家業に熱心に打ち込み、毎日のように村から村へと商売に出かけていた。しかし、あるとき仁蔵は行商から帰らなくなった。妻の直は心配で途方に暮れ、近所にも尋ねたが仁蔵の行方は分からなかった。そしてしばらくして、雪解けの季節が訪れた頃、仁蔵は突然姿を現した。 ふと見れば、そこには鉄格子の向こうに仁蔵の姿があった。 直は喜んで駆け寄り、仁蔵に取り付いて涙を流した。しかし、なぜかその顔には以前のような

■幽霊坊主の怨恨【怪談・怖い話】

房州の海岸に一人の若い漁師が住んでいた。 江戸時代の終わり頃、房州の小さな漁村に、壮年の漁師がひとり住んでいました。ある日の夕暮れ時、妻が赤子の面倒を見ながら夕食の支度をしていると、いつの間にか汚れた坊主が家の外を覗き込んでいるのに気づきました。 妻は坊主が施しを求めにきたのだろうと思い、おむすびを用意して持っていきましたが、坊主は横目で見るだけで手を伸ばしません。そこで銭を差し出しますが、坊主はそれをも無視しました。妻は不気味な坊主に怯え、急いで家の中に逃げ込みました。

光と闇の狭間【怪談・怖い話】

盗賊の館 この世の全ての悪夢は、人の精神に宿る。南半球にあるこの一軒家にも、暗い影が忍び寄っていた。かつてこの家に住んでいた人物が残した怨念が、壁に掛けられた肖像画に宿っているのだ。 夏の夜、友人たちと引っ越し祝いの宴を開いた私は、酔って床に倒れ込んだ。目を覚ますと、誰かが私たちに呪いの言葉を唱えていた。私の体は金縛りにかかり、動けなくなっていた。これは古代の呪術か? 血に塗られた暗示 暗闇の中、肖像画から影が現れ、私の方へとよろめいてくる。その口から漏れる言葉は、韓

幻想時間旅行記【怪談・怖い話】

俺は眠りから覚めた。 私は目を覚ますと、すぐに違和感を覚えた。朝のニュース番組が、家を出る前に見ていた内容とは異なり、まだスイーツ特集をやっていたのだ。そして時計を見れば、出勤時間からわずか5分しか経っていない。これは一体どういうことだろう。 私は長年の経験から、こうした不可解な出来事には必ず理由があることを学んでいた。古今東西、世界には数多くの謎が存在し、その一つ一つに真相が隠されているのだ。例えば、エジプトのピラミッドの建設方法は長らく研究者を悩ませてきた。しかし近年

秘密結社フード集団【怪談・怖い話】

あたしは、都市伝説として語り継がれる「秘密結社の倉庫」の噂を確かめるため、闇に包まれた廃墟の倉庫に向かった。友人の説得もむなしく、好奇心が勝ってしまったのだ。 倉庫の扉を開けると、内部は薄暗く、埃っぽい空気が充満していた。床には古びたCDケースやポスターが散乱し、箱が無造作に積み重ねられていた。あたしは、緊張感に包まれながらも、一歩一歩奥へ進んだ。 奥に進むにつれ、倉庫内の陰影がますます不気味に感じられた。光が届かない隅には、黒いフードをかぶった影が潜んでいるようだった。

一枚の写真が開く、怪奇の扉(オマージュ)【怪談・怖い話】

ある日、教室で撮影された不思議な写真 1994年5月の某日、地方の小さな町にある古びた中学校の教室で、数人の生徒たちによる心霊写真撮影会が開かれた。集まった者たちの目的は、何か霊的なものを写しこむことだった。彼らが生み出したのは、ただの一枚の写真に過ぎなかった。しかし、現像された写真に写っていたのは、赤いワンピース姿の少女が宙に浮かんでいる姿だったのだ。 驚愕したメンバーの一人が、写真の真偽を確かめるため、専門家に写真の改ざんや合成の有無を調べてもらった。しかし、専門家の

無情の介護【怪談・怖い話】

ある日の朝。 デイサービスの通所介護に向かう途中、利用者の方が自宅玄関前で待っていらっしゃるのを見かけた。認知症の症状が重く、時折外出し過ぎる方だった。 「まだデイサービスの時間ではありませんよ」 私は親しみを込めて声をかける。 「お家の中で待っていてくださいね」 「そうだな。じゃ、後で行くわ」 普段の彼女ならそう答えるはずだった。 職場に戻ると、上司から一報が入っていた。 「あの桐越さん、昨晩他界されたそうです」 医療機関からの連絡とのこと。私は戸惑いを隠