都庁で働くデジタル人材:ICT職向けの新任研修を作る 編
東京都では現在、「シン・トセイ」戦略で示した「各局リーディング・プロジェクト」を技術面から支援するとともに、区市町村のDXをサポートできるデジタル人材(デジタルシフト推進担当課長)を公募しています。
今回は、ICT職向けの新任研修を企画・運営した、民間出身のデジタルシフト推進担当課長のインタビューをお届けします。
ICT職を採用開始したけど、どうやって育てていく?
都庁では、今回募集している民間出身のデジタルシフト推進担当課長のほか、この4月から「ICT職」の新規採用職員が働いています。
さて、この「ICT職」の新規採用職員が都庁で活躍していくためには、その専門能力を育てる研修が必要です。
この前例のない研修の企画で活躍したのが、民間出身のデジタルシフト推進担当課長である長岡翔平さんです。
さて、長岡さんはどんな風に企画したのでしょうか?インタビューをご覧ください!
ICT職向け新任研修を企画!民間出身のデジタル人材にインタビュー
最初に、長岡さんの経歴をお聞きしました。
前職では、情報通信企業のシステムインテグレーション部門でマネージャを務めており、企業向けのコンサルティングやプロジェクトマネジメントの他、新規事業の企画や、社内外のプロダクトを組み合わせたソリューション開発等に携わっていました。
社会人としてのキャリアが10年を超えて、もっとダイレクトに社会貢献に繋がる仕事をしていきたいという気持ちが高まっていました。そんな時たまたま見たニュースでデジタルシフト推進担当課長の公募を知り、迷わずチャレンジすることを決めました。
前職でのコンサルの経験を生かし、現在は主にICTを用いた人材戦略や組織開発を担当しています。行政サービスの品質を高めていくために、自律的に成長を続ける組織づくりが最大のテーマですね。
その中でも、職員のデジタルスキルを可視化して効率的な成長をサポートするための新しい仕組みの構築や、研修・自己啓発支援の企画等、人材育成には特に力を入れています。その一環として、ICT職向けの新任研修にも、企画段階から携わりました。
ICT職向けの新任研修の企画について
民間でのコンサルの経験を生かし、都庁でICT人材育成を担当する長岡さん。20代のICT職の新任研修をどのように企画したのでしょうか?
はい、企画段階で3つのテーマを持っていました。
1つ目は、あらゆる分野の基礎知識を幅広く習得してもらうこと、です。
それぞれの配属先によって求められる専門分野は異なりますが、それがどんな分野だとしても、基礎レベルは理解した上で配属先の業務に応じた知識をキャッチアップしていける状態にする、というのが狙いでした。
実際の研修では、コンピュータ基礎からネットワーク、アルゴリズム、データベース、仮想化、クラウド、Webなど、幅広いカリキュラムを組みました。
2つ目は、研修後も学び続ける習慣を身につけてもらうこと、です。
当然ながら研修だけだとインプットの量は限られますし、技術のライフサイクルも早いので、研修が終わった後も日常的に学習を続ける「習慣」を身につけてもらうことが何より重要だと考えていました。
そこで研修中には、確認テストを用いた復習や次回講義の予習等を習慣化した他、講義テーマに関連する情報を毎日メールで配信し、自発的な知識習得や情報収集を習慣化してもらうためのきっかけ作りも行いました。
3つ目は、研修生どうしの関係構築です。
新規採用のICT職1期生として、これから相互に高め合っていけるような関係を構築することも重要なテーマでした。
そのため研修ではグループワークの比率を高めたり、研修生どうしでフィードバックし合う機会も多く作りました。
実際、研修開始当初はオンライン特有のコミュニケーションの難しさも実感したのですが、次第に打ち解け、研修後半になると信頼関係が築かれた上で批判的なフィードバックも行われるようになり、互いに良い刺激を与えて成長し合えるような関係性が出来上がってきたなと感じていました。
ちなみに研修後も継続して情報交換や疑問解決等のコミュニケーションが取れるように、オンラインのコミュニティも準備中です。
想像していた以上に、というと研修生たちに失礼なんですが、みんな積極性があって理解力やプレゼンテーション力も高く、予習・復習もしっかりやってくれたので、徐々に研修をレベルアップしていけたことですかね。
計画を立てた時点では、講義範囲や進行のスピード感、グループワークの状況設定等に関して、ベースラインは決めておいて、研修生の理解度に応じてレベルを上下させようと考えていました。実際にはレベルアップさせていくことができて、かなり中身の詰まった研修になったと思います。これに関しては、研修生たちに感謝とリスペクトですね。
後は、研修後に、何人かから配属先の業務で「研修で学んだことが役立ちました!」と報告してくれることがあって嬉しくなりました。
そういえば先日、研修生たちの発案で、業務時間外に有志でLT会(注)をやったんですけど、みんな個性的なプレゼンで楽しかったです。こういう繋がりも、今後続けていけたらいいなと思っています。
(注)LT:Lightning Talksの略。短い時間でプレゼンをすること。
行政系の都職員と働くことについて
民間出身の職員にとって、これまで都庁で働いてきた行政系の職員とは組織文化や風土が違って、うまく溶け合ってやっていけるのか気になりますよね。今回のICT職向けの新任研修ではどうだったんでしょうか?
研修生の所属部署とのきめ細やかな連絡・調整、研修用のPCやテキストの配備、オンライン研修特有のトラブルに備えた事前対策など、オペレーションは全般的に対応してもらいました。
研修の企画・運営に関しても意見を出し合いましたし、都庁歴の長い先輩職員からは味のあるフィードバックがあったり、研修生と同期の職員は緊張を解いて関係構築を促進してくれたりと、ワンチームで厚みのある研修を作り上げられたかなと思います。
特に新任研修は基礎編ということで理論的・概念的な内容も多くなるので、それらが実践にどう繋がるのかイメージしやすくなるエッセンスを盛り込んだり、研修中にも実例を交えてコメントしたり、といった形で自分の経験が生かせたかなとは思っています。
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長岡さんとともに、ICT職向けの新任研修を実施した行政系の都職員にも話を聞いてみました!
民間出身のデジタル人材である長岡さんがその専門性を生かし、都庁で長く働いてきた行政系の職員が自身のキャリアを踏まえたアドバイスをするなど、お互いの強みを生かしながらワンチームで働いていることがわかりますね!
デジタルシフト推進担当課長として働くことについて
最後に、デジタルシフト推進担当課長として都庁で働くことについて聞きました。
デジタルサービス局がこの春に発足するなど、基本的に、前例のない状態でゼロから作り上げていくタイプの仕事が多いので、日々新しいことにチャレンジする環境に身を置いているという実感がありますね。
都庁の中には、クールに見えるんですが内面には熱い思いを持った魅力的な職員が多く、一緒に仕事をしていると毎日のように刺激を受けます。また、都庁内だけでなく政府や他自治体、民間企業の方々とコミュニケーションを取る機会も多く、さまざまな視点の発想や最新の技術トレンドにも触れることができています。
私は都庁に入って仕事をして、行政機関の「中の人」として政策に関わることが、こんなにダイナミックでやりがいのある仕事なんだと驚きました。公共のために自分の経験やスキルを生かしてみたいと考えている方には、非常におもしろいポジションだと思います。
東京のDXという壮大なテーマに向かって、知恵を出し合い、力を合わせて挑戦していきましょう。
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東京都では現在、長岡さんと同じく、都政のDXを推進する「デジタルシフト推進担当課長」を公募しています。詳細は以下のnoteをご覧ください。ご応募、お待ちしております!
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【追記】ICT職の新規採用職員の声を公開しました。