大好きだった人の香り
彼女の香りが変わった。
それも突然。僕になんの相談も無く。
彼女が今まで使っていたのはシャネルのNo.5。
これは僕が一番好きな香水だ。
彼女は香水なんて全く興味がない女の子なのに対し、僕は日頃から香水をつけない日はないといった具合に香水が好きだ。
そんな僕を見てか、彼女がある時僕に言ったのだ。
「私にも香水選んでよ」
僕は嬉しかった。
彼女に香水の良さを知ってもらいたいと常々思っていたからだ。
「いいよ!今度一緒に買いに行こうね!」
そう言って彼女と一緒に買いに行った思い出の香水だった。
それからというものの、彼女は僕に会う時は毎日その香りをつけてくれる。
一度たりとも忘れたことはない。
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そんな彼女の香りがある日突然変わった。
なんの前触れもなく。急に。
シャネルのNo.5とはずいぶんかけ離れたシプレー調のメンズっぽい香りに。
なぜだろう。
買ったのは50mlのはずだからこんなに早くなくなることはない。
思い返せばファッションの系統も変わったような気がする。
それから心なしか彼女のLINEが素っ気ない。
連絡の頻度も減った。デートの回数も少なくなった。
まるで僕たちの距離がどんどん遠くなっているような気分になった。
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そんな日々がしばらく続いたある日、久しぶりに彼女から連絡がきた。
「今度会える?話したいことがある」
久しぶりに彼女の方から連絡がきたものだから、僕は喜んで返した。
「いいよ!俺もちょうど一緒にご飯食べたいなって思ってた!」
そんな僕の思いとは裏腹に彼女の対応は冷たかった。
「カフェがいい」
そういって日時と場所を合わせ、会話は終わった。
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そしてデート当日。
彼女は少し遅れてカフェに到着した。
相変わらずシプレー調の香りがする。
服装も前の面影はない
挙げ句の果てには髪の色まで最後にあった時と違うじゃないか。
まぁそんなことはいい。久しぶりに会えたんだから。
席に座ってすぐ、彼女は僕の目を見てこう言った。
「他に好きな人ができた」
これが僕と彼女の最後のデートになった。