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特殊設定恋愛小説

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「特殊設定」を取り入れた恋愛小説。 少し不思議な恋愛小説をまとめてみました。
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#叶える

【随筆】新しいジャンルを作り出したかもしれない話 ♯特殊設定恋愛小説

いつも、私の創作物を読んでくださる方、スキをくださる方、フォロワー様、こんにちは。説那です。 タイトルにある新しいジャンルの名前は、『特殊設定恋愛小説』です。全ては、私とやり取りしてくださっているフォロワー様からの指摘から始まりました。そもそも、『特殊設定』とは何だ?という話からしなくてはなりません。 本を読むことが好きな方々であれば、『特殊設定ミステリー』というジャンルがあることをご存知かもしれません。『特殊設定ミステリー』は、SFやファンタジー、ホラーなどの設定を用い

【短編小説】自分のことがよく分かってないよね。♯一つの願いを叶える者

「貴方は選ばれました。貴方の願いを一つ叶えましょう。」 そう言って、現れる白い服、白い肌、中性的な面立ち。 彼、彼女は、誰かの前に決まり文句を吐いて現れ、相手の願いを一つ叶えてくれると言う。 都市伝説のような、怪しい話。 そもそも、願いを叶えたら、その叶ったことすら忘れてしまうと言うのだから、その話が広まっていることすらおかしい。だが、救いのない今の世界には、好意的に受け取られ、広まった。 いや、実際に見た事のある人は、ただ一人としていない。 私だって、目の前で決まり文句

【短編小説】それは困りますね。♯一つの願いを叶える者

私の夫の帰りは遅い。 私は夕食を作って、彼の帰りを待つ。時間はいつも大きく変わらないので、職場からどこにも寄らず、真っ直ぐ帰ってきているようだ。 職場の飲み会などの誘いも、付き合い以外のものは、今は極力私を理由に断っているらしい。家に帰って、私が作った夕食を美味しそうに食べてくれるのを見ると、私の口元も緩んでしまう。 でも、私は夫の心の中に、一人の女性がいることを知っている。 その女性の名前は美空という。 彼の大学時代の恋人だったらしい。もちろん、本人にお会いしたことはな

【短編小説】本当にそれでいいのですか?♯一つの願いを叶える者

職場の入っているオフィスビルを出て、最寄り駅までの国道横の道を歩く。国道の車通りは激しい。どうせ、まっすぐ帰っても、少し寄り道しても、帰る時間はそれほど変わらない。家では、妻が夕食を準備して、帰りを待っていることは分かっていたが、僕は、最寄り駅への地下への階段の脇を通り抜けて、その先の歩道橋を登った。 歩道橋の、国道のちょうど中央辺りで、足を止めて、下の国道を見つめた。 光の川だ。色とりどりの光が、国道を走っていく。 どれくらい、ぼうっとその光の川を眺めていただろうか。ふと

【短編】お気に召しましたでしょうか?♯一つの願いを叶える者

♯一つの願いを叶える者 願いリクエスト作品(Yuricoさん) 「容姿を変えたいというのが、貴方の願いですか?」 新島絵里の前で、白い靄でできた人が首を傾げるようなしぐさを見せた。 「そう。だって、私、顔は大きいし、目は小さくて一重だし、鼻は丸いし、唇は分厚いし、いい所なんてどこにもない。」 「すみません。私には人の美醜というものが分からないのです。私は、貴方の顔にいい所がないなどとは思いませんが。」 「ダメなの。とにかくダメ。私の顔をモデルのように綺麗にしてほしいの。

【短編】私を呼んでください。♯一つの願いを叶える者

♯一つの願いを叶える者 願いリクエスト作品(高見純代さん) 手にたくさんのレジ袋を下げて、誰もいない自宅に戻る。一人で住むには、この2LDKのマンションは広すぎた。 ダイニングテーブルにレジ袋を置いて、中に入っていた数多くのタッパーを取り出した。タッパーの中には、俺の婚約者である遥の母親が作った総菜が詰まっている。帰り際に、家で食べるように持たされた。 きっと、すごく気を遣わせてしまっているんだろうな。 タッパーを冷蔵庫にしまう。冷蔵庫には飲み物以外はほとんど入ってい

【短編】貴方は選ばれました。♯一つの願いを叶える者

よく眠れない。 頻繁に夢を見る。たまに悪夢。そして、夜に目が覚めてしまう。 更年期障害の症状の一つ。女はよく聞くけれど、男にも更年期障害は発生する。ホルモンの減少に体が付いていけずに出る。 病院にかかって、薬は飲んでいるものの、そう簡単に治るものでもない。 だから、最初それを見た時、俺は夢を見ているんだと思った。 夜中に目が覚めてしまって、喉の渇きも覚えたので、キッチンの流しで白湯を飲んでいた時の事。暗い部屋の中央に、白い靄のようなものが見えた。 それは徐々に大きくなり、最

【短編】願いを一つ叶えましょう。♯一つの願いを叶える者

「貴方は選ばれました。貴方の願いを一つ叶えましょう。」 私の目の前で、人の形をした白い靄が、腕を広げて言った。 ここは私の自宅で、もう寝ようと、ベッドに横になった時だった。 部屋の中央に白い靄が見えた。私の目が疲れているのかと、瞼をこすってみたものの、その白い靄は徐々に大きくなり、最終的には人の姿になった。 それは、男なのか、女なのかも、よく分からなかった。 体のラインを拾わない服を着ているように見えて、体を見ても性別の判断はできなかった。髪は短いから男性?でも、ショート