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金髪の上司がメチャクチャ「しごでき」な人だった

先輩との出会い

 彼女は会社の上司だった。金髪がトレードマークでいかにも「ヤンキー上がりです卍」という風貌。
 初めて顔を合わせた時、僕は「怖っ…」と内心ビクビクしていた。

 しかし、そんな見た目とは裏腹に仕事は丁寧でとてもできる人だった。また、物腰が柔らかく誰に対しても分け隔てなく接するとても誠実な人だった。

 新卒で入社した僕はわからないことが多く、上司に質問することが多かった。社会人経験が浅いことから質問内容もまとを得ないものが多く、上司に煙たがられることも少なくはなかった。
 しかし、彼女は自分の仕事が忙しいにも関わらず、一つ一つ丁寧に業務を教えてくれた。
 仕事以外でも、「その服素敵ですね」「スマホの待ち受けかわいいですね!」などと積極的に話しかけてくれた。


先輩のプライベート

  ある日の仕事終わり、先輩から「酉の市行きません?」と声をかけられた。
お酒が大好きな僕は「喜んで!」と即答した。
 連れていかれたのは新宿のとある神社。そこで初めて僕は酉の市が居酒屋ではなく、お祭りであることを知った。そのことを伝えると彼女はくすっと笑った。

 お祭りで出店などを回った後、少し休もうということで、僕らはお酒を買い、近くのベンチで飲んだ。
 そこで僕は、彼女が僕の2つ年上で出身地が同じであることや入社日が3ヶ月しか変わらないこと。
 そして、娘がいる中、仕事と子育てを両立していることなどを知った。話していると不思議と心が癒され、まるで姉ができたようであった。とても楽しく、時間はアッという間に過ぎた。

僕が後悔してること


 その後すぐ、先輩は会社を辞めてしまった。
 今、僕はとても後悔している。
 もともと内気な僕は、話しかけよう思っても「今忙しいかな」「邪魔だったらどうしよう」と躊躇してしまい、職場では業務以外のことはほとんど話してこなかった。
 業務の細かい部分はもとより、社内事情や自分のキャリアについて、話せる機会にもっと色々相談しておけばよかった。
「もっと色々おしえてください!「もっと仲良くなりたいです!」となぜ素直に言えなかったんだろう。

 先輩が去ってから半年、僕は当時の彼女よりも多くの仕事を任されるようになった。
 途中、くじけそうになったことも沢山ある。しかし「先輩のようになりたい!」という一心で耐えることができた。

 僕は今、先輩にメチャクチャ会いたい。会って「いろいろ教えてくれてありがとうございました! あなたをとても尊敬しています!」ときちんとお礼を言いたい。

 とはいえ、残念ながら彼女と会う機会は二度とないと思う。なので今ここに忘れないように書き記しておく。

「先輩、僕はあなたに追いつくことはできましたか?」



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