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パワハラを「もう終わったこと」と一蹴した元上司


クリニックで「いじめ」と表現されたパワハラ


「もう終わったこと」

電話口の、元上司は冷たくそう言い放ちました。

私は大学新卒時に入職したところ(障害者施設の事務職)で、当時は今ほど浸透していないであろう、パワーハラスメントという言葉すら生易しい様々な言動を受け、今もそのことを思い起こすと動悸が止まらなくなったり、眠れなくなったり、悪夢でうなされたりします。

私は冒頭の元上司の、さらにその上の立場の人に、以下のようなハラスメントを受けました。

・自分の席の後ろを通り過ぎるときだけ物凄い足音を立てる
・なぜか会議室に呼ばれてまるで取り調べのように他のなんという企業から内定を受けたか、面接の様子なども詳細に聞かれた(どうやら私が本当に他社から内定を受けていたことを疑っていたよう)
・施設内にはテニスコートがあり、突然テニスをしようと言われ、物凄い血走った目で本気のサーブ、ボールをぶつけられる。その後、ため息を付きながら「もういい。お前テニスやっていたとか嘘だろ」と立ち去る。
・気持ちが悪いんだよお前はと日常的に言われる
・いつまでもそんな風なら辞めていただきたいと事あるごとに言われる

その後、冒頭の上司に、「このようなことはもう耐えられない。一緒に次長(事務室内で一番えらい人)に相談してくれないか」と頼みましたが、ご家庭がお有りで、ご自身の体面も会ったのでしょう「一緒に言ってもいいけど……」とあやふやにされたので、一人で相談しました。

エスカレートするパワハラ


次長は、「今あなたが言ったことをそのまま当人に伝えていいか」と聞いてきて、新卒で右も左も分かりませんでしたから、首を縦に振りました。

ハラスメントは収まるどころか、一層ひどくなりました。
足音もそうですが、意味もなく自身の机の分厚い書類を持ち上げて落としたりを繰り返したり、こちらを睨みながら舌打ちをしたり、字が下手だからと書き直しを何回も命ぜられたりと、およそ理解のできない行動ばかりを取られました。

職場へ足が向かなくなり退職


やがて私は職場がある駅へ向かう電車に乗っていると、涙が止まらなくなり、手前の駅で降り、電話の電源を切って、ゾンビのように街を徘徊しました。
それで二度とそこに足を運ぶことはなく、郵送で退職手続きを取り、退職をしました。半年の勤務でした。労働基準監督署で相談したら絶句しており、完全なパワーハラスメントだと言っていましたが、そこから先の、斡旋だとか、具体的に取るべき行動は教えてくれませんでした。

「パワハラは確認されなかった」組織運営を優先させた本部の対応に絶望


ところで、私が働いていたもと施設の運営主体は社会福祉法人で、本部が別の場所にあります。
本部の人はこのことを知っているのだろうかと、退職直前に私が受けたパワーハラスメントを詳細に記した書面を、本部に送りました。後日電話がかかってきて、どこかで会えないかとなり、会うことになりました。

事前に名前で調べるとその人はいわゆる国家の天下りの人で、会った際もそんな雰囲気でした。
私は、ほとんど泣きながら、事の次第を話しました。相手も、神妙に聞いており、「実はハラスメントを行った上司に話を事前に聞いており、本人からも、辞めろいうことを言ったと聞いた」としていました。そして、私の話に関しても、「それが本当なら、許せないことだ」と憤りの様子を見せていました。

しかし、後日届いた厳封での書面には、「パワーハラスメントは確認されなかった」という趣旨の文言が冷たい活字で書いてありました。このときの地獄に突き落とされたよう形容できない絶望感、憤りは今でも鮮明に覚えております。

それから私はメンタルクリニックに通うようになり、企業での勤めは長続きせず、いくつかの媒体でライターをさせていただき、今に至りますが、一昨年、どうしてもこのことをどうにかしないと、自分の中でかたがつかないと思い、弁護士に相談したことがあります。

「もう終わったこと」


すでに10年以上前のことなので、訴えることは難しいだろう。他の方法としては、冒頭の上司の監督責任を問うこととか、といったことを仰っていました。何か理由をつけて会えないかという書面を送り、そこで監督責任を問うというものです。これは時効ってないのでしょうか。よく分かりませんでしたが、弁護士のかたが言うならと、本人限定受取で郵便を送り、「就職することになったので、アドバイスがほしい。ついては、お会いできませんか」と、日時を場所(喫茶店)を記載し、当日、その場所で待っていました。

一方的に送ったので、別に来なかったら来なかったで別に仕方がないと思っていました。

お店に電話がかかってきて、店員さんが私に受話器を渡してきました。元上司からの電話でした。
相変わらず穏やかな口調で、優しいけれど、自分本位な方であることは分かっていたので、すでに、過去に次長に一緒に相談に言ってくれなかった人だという頭で、会話をしました。

ご自身もメンタルがやられていて、クリニックに通っている上に、ご家族の介護をしており、どうしても行けないということでした。そして、意図が不明ですが、私の同期も皆辞めたと言っておりました。

「あのときの○○部長のパワーハラスメント行為についてどう思いますか」

それに対しての答えが、冒頭の「もう終わったこと」でした。

私はあなたを監督者責任について問いたいから今日お呼びしたとすると、先程までと打って変わった口調になり、「私を騙したんですか」と激高なさいました。この人の本質が出た瞬間のように思いました。

その後も色々と問答がありましたが、結局、メールをすると言われ、メールでやり取りする約束をしました。

突然警察がやってきた日


幾日経ってもメールが来ませんでしたから、もと職場に電話をし、自分の名前を出すと、「申し訳ありませんがお取次ぎができません」と電話交換のかたが言いました。
なぜですか、と聞くと「お取次できない人のリストに入っている」とのことで、一方的に電話を切られました。
その対応が納得できなかったので、再度電話をしても同じ対応で、電話を切ろうとするので思わず「切らないでください」と何度も言っていると、横で当人が聞いていたのでしょう、もういいと小さく声が聞こえるが早いか、電話が切れました。

それから、数時間後に、家になぜか警察がやってきました。呼び鈴を連打し、人の名前を住宅街に響き渡るような声で絶叫、扉をドンドン……開けると、男女それぞれ一名。私は取り乱し、なんでここまでされなくてはならないのか、と、絶叫しながら泣き崩れました。それでも、とりわけ女性の方は冷たい口調で「施設からあなたの行動についてどうしたらいいか分からず困っているという相談を受けて来ている。双方の話を聞きたい」と言いながら、終始私を一方的に非難するように、「もう二度と近づかないように」といったことを言われました。

今度はその対応に納得が行かず、数時間後に警察署に電話をし女性に代わってもらうと、やはり終始冷たい口調でした。加えて、私が「とても疲れた」と言うと「こっちの方が疲れた。県をまたいで田舎に行かされて」、何かを質問すると半笑いで答えるので、なぜ半笑いなのかと聞くと「だって何回も何回も同じこと言わされるから、疲れちゃって」、自分はメンタル弱っているので、あなたに話したことを忘れてしまうかもしれないと言うと、「大丈夫ですからね〜、ちゃんと記録取ってありますから忘れちゃっても」……録音した音声を聞くたびに、どっと疲労感が押し寄せてきます。警察の人って皆こうなのでしょうか。

こんな風にして生きてきて、今はご覧の通り作文能力も落ちてしまい、メンタルが絶不調なので、どうやって生きていこうかなあと、色々思案しているところです。

人生は道。過去があるから今がある。終わったことなどない。

生きている以上、「終わったこと」なんてあるのでしょうか。良いことでも悪いことでも、あらゆる経験をした上で、今の自分が存在すると思います。過去のことを、簡単に「終わったこと」と表現してしまうと、それは今存在している自分自身を否定することになると思います。有名な詩の一節のようですが、本当に、これまで歩いてきた、通ってきた道があるから、今の自分がいると思います。その道は、きれいに舗装された一本道の場合もあれば、転んで大怪我をしてしまう場合もあるかもしれません。いずれにしても、そういったことがある上で、今生きている人間はいるのだと思います。

命が事切れて、初めてその言葉は使うことができると思います。
私が通り、あなたもご覧になっていた道を、終わったことなどと軽々に表現するのはやめてください。