膝枕外伝 実況!膝枕ダービー

まえがき 

こちらは、脚本家・今井雅子先生の小説「膝枕」の2次創作です。お馬さん擬人化アニメ勢、原作にわかなので間違っている箇所もあるかと思いますが許してください。先に言っておきますが、ハリボテエレジーは出ません

今井先生のエピローグ
それからの膝枕(twitterの画像をご覧ください)

下間都代子さんによる朗読

kaedeさんによる朗読
(stand.fm)今井雅子作 膝枕

Noteに投稿されたスピンオフ
下記のマガジンをご覧ください。

Note以外に投稿されたスピンオフ
藤崎まりさん作
(stand.fm)今井雅子作・膝枕 アレンジバージョン

やがら純子さん作
落語台本「膝枕」

下間都代子さん作
ナレーターが見た膝枕〜運ぶ男編〜
(Youtube)大人の朗読リレー「膝枕は重なり合う」(朗読:下間都代子さん、景浦大輔さん)

kana kaede(楓)さん作
「単身赴任夫の膝枕」

賢太郎さん作
「膝枕ップ」

松本ちえさんも「からくり膝枕」をお書きになりました。
(限定公開のようでしたので紹介に留めます)

本編

実況!膝枕ダービー
〜クラハ賞・秋(GⅠ)、芝2000M〜

依然として細かい雨が降り続いております、東京レース場です。12年ぶりに不良膝場ひざばで行われる秋のクラハ賞。今年はなんと出走18膝中13膝が関西膝。4年連続して今回の盾も箱根の関を超えて関西へ渡るんでしょうか。実況は〇〇〔ご自身のお名前〕、解説は細江ヒサコさん(*または大川久次郎さん)でお送りします。細江さん、よろしくお願い致します。

細江 よろしくお願い致します。

早速、出走膝をゼッケン番号順に紹介します。

出走表(改)

1いち枠1番《ポッチャリヒザ》。体重増もなんのその。
1枠2ふた番《ハハノミミカキ》。遠い日の思い出が蘇ると話題です。
2枠3番《コエダノヨウナ》すらっとした足で懸命に膝をにじらせる。
2枠4番に2番人気の《ヴァージンスノー》。一気に前に出ると誰もその膝を触ることができない。
3枠5番《キングピロー》。大舞台で王者の風格を見せることができるか。
3枠6番《ワンオペイクジ》。子育てに奮闘するみなさんを応援します。
4枠7番にはアメリカンオークスの覇者《ヒーザリオ》。
4枠8番《ネオチロウドク》。今日は國男か漱石か。
5枠9番《ツインジェット》。このレースでも大逃げを期待。
5枠10とお番に3番人気の《スタンドバイニー》。格上相手でも恐れはしない。
6枠11番《ダンスオブワニ》。その走りは踊るようだと人気です。
6枠12じゅうふた番《ミスターアグラ》。ワイルドなすね毛が一部界隈で大人気。
不動の一番人気はこの膝。春秋はるあき連覇がかかる7枠13番《ヒザゲリクイーン》。
その隣に7枠14番《ニシノカナタニ》。信じた夢はすべて現実のものとなる。
7枠15番には我らがアイドル《ウラナイシーチャン》が入ります。
8枠16番《ハシレテツアツ》はこれが最後のレース、有終の美を飾ることができるか。
8枠17番《マクラバクシンオー》。外からのスタートだが、先手を取りに行きたい。
最後に8枠18番、雨とは相性がいい《ヌレソボロ》。

まとめますと、1番人気、関西の13番《ヒザゲリクイーン》を2番人気の4番《ヴァージンスノー》、10とお番《スタンドバイニー》が追う展開。

細江 以下、《ニシノカナタニ》、それから《ハハノミミカキ》も入ってきますね。

さて、コースと聞きどころを抑えておきましょう。実況席は地図の下側、その目の前にゴールがあります。スタート地点は実況席から見て右手前方。第2コーナーポケットからの発走です。スタートから第2コーナーまでは先行争い、先手争いに注目です。

細江 外枠、つまりゼッケン番号の大きい膝はなるべく早く内側を狙って行きたいところです。

第2コーナーを周ると向正面の直線に出ます。途中までは緩やかな下り坂ですが、直線の途中には上り坂があります。第3コーナーにかけてはまた下り坂、そしてコーナーの途中から上りに転じます。最大の見どころ、残り600メートル、第4コーナーからの直線。ここに最後の坂があります。なお、スタートとゴールの標高は同じです。

コース(詳細)

▲東京レース場コース平面図。内側のダート・障害コースは省略。

白いダブルのスーツに白いハットの発走委員、スターターがスタンドカーに登ります。スタート台がゆっくりと上がっていきます。赤い旗を振るのがゲートインの合図。

♪ファンファーレ

大変な歓声が上がりました。11万人が聞き守る中、先に奇数番号の膝がゲートに入ります。ゲートインは順調です。

細江 これだけの大舞台ですから、緊張で膝が固まってしまったり、逆に興奮して抑えがきかなくなったりする膝もいますからね。特に《ヒザゲリクイーン》は非常に冷静ですね。

そうですね。続いて偶数番号の膝が入っていきます。あと6膝というところです。最後に16番、これがラストランとなります《ハシレテツアツ》が入りました。ゲート後方の発走委員が、全ての膝がゲートに入ったことを確認します。係員がゲートから離れました。ゲート正面の赤いランプがスターターへの合図です。これが付いたら発走準備完了。スタートボタンを押すとゲートが開く仕組みです。

ゲートが開いて秋のクラハ賞、各膝一斉にスタート。11番の《ダンスオブワニ》がちょっと後手を踏みました。好スタートを見せたのは6番《ワンオペイクジ》。さあここからが大変第2コーナーまでの先手争い、先陣争いですが、外から13番《ヒザゲリクイーン》が行った。外から、なんと《ヒザゲリクイーン》が先頭に立っていこうと、蹴っていこうとしています。しかしインコースから3番《コエダノヨウナ》。いや《ヴァージンスノー》、4番《ヴァージンスノー》も前に行きました。4番《ヴァージンスノー》と10とお番《スタンドバイニー》。この2膝のせめぎ合い。思わぬ展開になりました。《ヒザゲリクイーン》は下げて今三番手。人気3膝が前を行っています。第2コーナーの坂を下ります。さあそれから膝差3つ、四番手には早くも18番《ヌレソボロ》、14番《ニシノカナタニ》、内からは2ふた番《ハハノミミカキ》この3膝。四番手集団で向正面。膝差2つ後ろに9番《ツインジェット》中段の位置になりました。あとは後方から15番《ウラナイシーチャン》、 12じゅうふた番《ミスターアグラ》、あるいは内をつきましてゼッケン3番《コエダノヨウナ》中段の位置かなり縦長。膝差4つから5つ離れて5番《キングピロー》、7番《ヒーザリオ》。17番《マクラバクシンオー》も後ろから。その後ろには16番《ハシレテツアツ》が追走して、1番《ポッチャリヒザ》、11番《ダンスオブワニ》、後方から6番《ワンオペイクジ》が続いていきました。最後方に、最後方に8番《ネオチロウドク》。縦長になって残り1200メートル。早くもこのレース、審議の青ランプが灯っています。審議の青いランプが付いています。第3コーナーのカーブにかかりました。先頭は依然10とお番《スタンドバイニー》、《スタンドバイニー》頑張っている。膝差2つリード。そして4番《ヴァージンスノー》が二番手の位置。さらにこれをマークするように、13番の《ヒザゲリクイーン》、《ヒザゲリクイーン》は三番手。その3膝が1つになりそうであります、ひとかたまりになりそうです。前の3膝を追って、2ふた番《ハハノミミカキ》、14番《ニシノカナタニ》、怖い怖いこの二脚が徐々に差を詰めにかかりました。18番《ヌレソボロ》外からスパートを見せています。あるいは外からじりっじりっと12じゅうふた番《ミスターアグラ》でしょうか、上がっていきました。その直後に17番《マクラバクシンオー》も上がってきました。その後ろに、5番《キングピロー》と7番《ヒーザリオ》。内から11番《ダンスオブワニ》、すぐ後ろ15番《ウラナイシーチャン》、外から6番《ワンオペイクジ》が固まっていく。後方から16番《ハシレテツアツ》、9番《ツインジェット》、3番《コエダノヨウナ》が続く。その後ろ1番《ポッチャリヒザ》、シンガリ8番《ネオチロウドク》。先頭集団は残り800メートルを切りました。《スタンドバイニー》頑張っている。《スタンドバイニー》のリードは膝差1つにつまってきた。その後ろに4番《ヴァージンスノー》、13番《ヒザゲリクイーン》この2膝がほぼ並んで行きまして、3膝並んで600メートルの標識を横切って行きます。その後ろから2ふた番《ハハノミミカキ》と18番《ヌレソボロ》も上がってくる。第4コーナーを曲がってさあ直線コース。11万人の大歓声が18脚を迎えている。先頭の《スタンドバイニー》リードはわずか。《ヒザゲリクイーン》と《ヴァージンスノー》がすぐ後ろにつけている。残り400メートル。懸命に頑張っている《スタンドバイニー》。《スタンドバイニー》頑張った。頑張って坂を登り切った。後ろから《ヒザゲリクイーン》が仕掛けに来た。《ヒザゲリクイーン》差しに行く。《ヒザゲリクイーン》抜けるか。完全に抜けた。《ヒザゲリクイーン》抜け出して膝差1つから2つのリード。二番手10とお番《スタンドバイニー》、外から2ふた番《ハハノミミカキ》、14番《ニシノカナタニ》。200メートルを切って、三番手から2ふた番《ハハノミミカキ》懸命に走る。14番《ニシノカナタニ》も外から追い込んできたが、しかし10とお番《スタンドバイニー》二番手で頑張れるか。外から14番《ニシノカナタニ》、それから2ふた番《ハハノミミカキ》が飛んできている。先頭完全に《ヒザゲリクイーン》。残り100メートル《ヒザゲリクイーン》リードを膝差4つ5つと広げていく、ぐんぐんと膝を伸ばしていく。二着争いは10とお番《スタンドバイニー》、2ふた番《ハハノミミカキ》、14番《ニシノカナタニ》の3膝、誰が先に行くか。《ヒザゲリクイーン》楽勝でゴールイン! 二着はどうやら《スタンドバイニー》よく頑張った。しかし勝ったのは《ヒザゲリクイーン》! 強すぎる! 強すぎる! 春秋連覇《ヒザゲリクイーン》! 3膝目の春秋連覇《ヒザゲリクイーン》!

(歓声)

このレースは審議の青いランプが付いています。確定までしばらくお待ちください。それにしても、細江さん、《ヒザゲリクイーン》強すぎますね。

細江 強すぎますね。格が違いました。《ヒザゲリクイーン》の完勝でしたね。しかしそれにしても《スタンドバイニー》よく粘りましたね。

頑張りましたね。

細江 直線入った時に、《ハハノミミカキ》が二着で、2つがちぎるかと思いましたが、《ハハノミミカキ》がそこまで来たらいっぱいになってしまって、《スタンドバイニー》との差が詰まらなかったですね。むしろ外から《ニシノカナタニ》が来て、これが《ハハノミミカキ》との写真判定になっていますが、三着は《ニシノカナタニ》でしょうね。

《ニシノカナタニ》が突っ込んできましたが、そのあたり写真判定になっています。しかしこの《ヒザゲリクイーン》の、ゴール前の突き抜け方はすごかったですね。

今の審議についての情報が入りました。どうやらスタート直後《ネオチロウドク》の進路が狭くなった、この件についての審議が現在行われているようです。審議は採決委員によって行われます。レースのパトロールビデオを確認しているものと思われます。パトロールビデオは、各コーナーにある監視塔、これをパトロールタワーと呼びますが、パトロールタワーからレースの模様を撮影したものです。競走中にアクシデントが発生した場合に参考とされるのがパトロールビデオです。細江さん、やはりスタートから第2コーナーにかけてでしょうか。

細江 2000メートルはやや早めに行かなければならないですから。今の時点では、ちょっと、何とも言えませんね。外の膝が早かったんですか。そんなに不利だったのかなとも思いますけれども。正面から見ないと分からない画面ですね。

パトロールビデオを見れば、スタート直後の様子も正面から分かるかと思います。

これで《ヒザゲリクイーン》は《ハコイリムスメ》、《ヒザマメ》(*アドリブOK)に続く史上3膝目のクラハ賞春秋連覇を達成したわけでありますが……

掲示板(審)

掲示板に着順と着差が表示されました。一着は13番《ヒザゲリクイーン》、二着10とお番の《スタンドバイニー》、三着14番《ニシノカナタニ》、2ふた番《ハハノミミカキ》、17番《マクラバクシンオー》と出ております。着差は上から膝差6つ、膝差3/4、サラそして、膝差1/2と表示されておりますが、まだ審議中です。確定までお待ちください。審議というのは《ネオチロウドク》の発走後の進路が狭くなったということで、どの膝が影響するのかちょっとまだ情報が入っておりませんけれども。もし進路妨害ということになりましたら、妨害した膝の着順が妨害された膝の着順の後になります。

ただ今、審議が終わったという情報が入りました。繰り返します、審議が終わりました。これから場内アナウンスで審議結果が伝えられる模様です。

「お伝えします。審議の結果、第1位に入った13番は8番、他数膝の進路を妨害したため降着とします」

たった今アナウンスがありました。13番《ヒザゲリクイーン》が進路妨害で降着という結果になりました。電光掲示板にも1位入線の13番《ヒザゲリクイーン》が18着に降着と表示されています。進路妨害を受けた8番《ネオチロウドク》が18着でしたので、《ヒザゲリクイーン》が18着になって、その他の膝が1つずつ順位を上げるという形でしょうか。

掲示板(確)

確定です! 一着代わりまして10とお番《スタンドバイニー》、二着14番《ニシノカナタニ》、三着が2ふた番《ハハノミミカキ》、四着17番《マクラバクシンオー》、五着が18番《ヌレソボロ》。こちらで確定しました。えー、《ヒザゲリクイーン》が降着ということですが、細江さん、この結果を受けていかがですか。

細江 一番人気の膝だけに、ショックは大きいですね。

そうですね。ただ今、実況席ではパトロールビデオが表示されています。ゲート正面から見たスタート直後の映像です。スタートしてすぐに《ヒザゲリクイーン》が前に出て、内側に入ろうとしたところ。インコースに入ろうと斜行しゃこうした結果、他の膝とぶつかりそうになっていますね。アナウンスでは8番《ネオチロウドク》の進路を妨害したという採決でした。《ネオチロウドク》はスタート直後は中段につけていますが、あー、ずるずると後退して最後尾まで下がってしまいました。このことを受けての降着という決定です。《ヒザゲリクイーン》が斜行しゃこうして隣を走る、これは10とお番《スタンドバイニー》でしょうか、非常に近づいてしまっています。それで《スタンドバイニー》もぶつかるまいと中へ入ってしまいますから、どんどんと狭くなって団子状になってしまっています。

細江 結果的には多くの膝が不利を受けましたが、うーん、《ヒザゲリクイーン》だけがというと……微妙ですね。個人的にはちょっと厳しい裁定ではないかなと思います。

今だに場内がざわついております。波乱の展開となりました秋のクラハ賞。以上で中継を終わります。解説は細江ヒサコさんでした。細江さん、ありがとうございました。

細江 ありがとうございました。

ここまでの実況は〇〇〔ご自身のお名前〕でした。ファンの皆様は複雑な気持ちかもしれませんが、ウィニングライブを楽しみましょう。私も客席から声援を送ります。それではごきげんよう。

着順(改二)

あとがき

詳しい方はお分かりかと思いますが、このレースは第104回天皇賞・秋(1991年10月27日)がモデルになっています。また何膝かは実在の競走馬の名前を元にしています。ヌエボトウショウ(実際のレースでも8枠18番)→ヌレソボロは自分でも上手いと思うのですが(笑)

「中山の直線は短いぞ」も言ってもらいたいですね。

ファンファーレ作曲:nakano sound様(https://www.nakano-sound.com/free/fn.html)

参考資料
小川隆行「アイドルホース列伝」星海社新書(2021)
小川隆行、ウマフリ「競馬 伝説の名勝負1990-1994 90年代前半戦」星海社新書(2021)

勝ち時計(参考) 3分12秒
4ハロン 1分4秒67
3ハロン 54秒41

9月3日 記事公開。膝開き王・徳田祐介さんにお願いして読んでいただきました。ありがとうございました。
9月8日 藤本幸利さんに読んでいただきました。ありがとうございました。
3月2日 わくにさん&おもにゃんのペアで読んでいただきました。ありがとうございました。

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