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(先行公開)『本を書きたい人のための本(仮題)』の前書き原文をお見せします!

 タイトルそのままになりますが、「本を書けるようになりたい」「文章力をつけたい」という人のための本を出版することが決まりました!

 実際に本の販売がスタートするのはもう少し先ですが、今の時点で早く文章力をつけたい人の声も伺っているので、先行して「伝え方の技法」のマガジンで小出しにしていくことにします。

↓よければマガジンにご登録を↓

 また「書き方」だけでなく、「話し方」への関心をお持ちの方もいるので、併せて『話し方・書き方のフィードバックコミュニティ』としてFacebookグループを立ち上げました。

↓「伝え方」を上達させたい方はぜひご参加を↓

 まずは前書きを全文公開するので、よければ読んでみてください。僕もまだまだ発展途上の身なので、ご感想やフィードバックなどいただけると嬉しいです。世の中に良い話し手・書き手が増えていくように、一緒に学び合っていきましょう。よろしくお願いします。

あなたが文章を書けるようになることは、人類史に残る偉大な挑戦である

書きたい気持ちはあるのに、書けない。そんな経験ありませんか?

「……ふう、とりあえず息抜きにコーヒーでも飲むか」
 一文を書き始めるまでに、もう一時間も経っている。書き始めてしまえばなんてことない一文だし、人に読まれるのもほんの一瞬。なのに書く側は、頭がはち切れそうになるほど苦心してその一文を紡ぎ出す。
 何時間も、気付けば何日も、スクリーンは真っ白なまま。頭の中にアイデアはあるはずなのに、いざ書き出そうとするとまとまらない。散歩をしたら名文が浮かぶ。シャワーを浴びればパッとひらめく。だけど、スクリーンを前にするとその勢いは途端に萎んでしまう。
 あなたもこんな経験ありませんか? 気分転換という名の現実逃避を繰り返し、「今日こそ書くぞ」と意気込んで、結局今日も日が暮れる。文章を書こうとする人の多くが似たような挫折を味わってきました。もちろん、僕たちもそうでした。

 書きたい気持ちとエネルギーはあるのに、手は一向に進まない。そんな現象を執筆界隈では「ライターズブロック」と呼んでいます。手が止まったまま、頭の中だけマイナス思考が縦横無尽に駆け巡るイヤな現象です。
 話せばいくらでも言葉が出てくるし、ひらめいた時は書ける気しかしないはずなのに、いざ書く時だけ時間が止まったようにピタッと手が止まる。決してサボっているわけじゃないから、余計に実力不足を痛感して自分に嫌気が差してきます。
 定型文や事務連絡の文章は予定通り書き上げられても、自分で考えて書く文章だとそうはいきません。時間を確保したからといって書けるとは限りません。書けないまま時間を浪費するくらいなら、他の詰まっている予定を先に済ませた方が、よほど気持ちが楽になる。そうしているうちに、文章を書く作業は遠くの方へ追いやられていきます。

果たして「書く」という技術は、どこまで確立されているのか?

 ライターズブロックに陥ると、僕たちはどうしても自分を責めてしまいます。国語は学校で習ってきたし、本もそこそこ読むし、人ともよく話す。だから「言葉」は普段からよく使っているはず。なのにうまく書けないということは、自分に実力や才能がないということかもしれない……こんな思考回路に陥ってしまいます。
 でも、冷静に考えてみてほしいんです。果たして僕たちは、どこまで「書き方」を学んできたでしょう? これまでどれくらい「書けない」という気持ちに寄り添ってもらったことがあったでしょう? ほとんどないはずです。
 書店に行けば、それなりに「文章の書き方」を題材にした本が見つかります。しかし、そこに載っているのは基本的な文法や論理に関するものばかり。教養として学ぶには役立ちますが、実際にあなたが書く時に「使える!」と思えるものはほとんどありません。
 気持ちの面での向き合い方となるともっとひどくて、「みんな経験するものだ」「それでも書くしかない」といった論調ばかり。解決策は何も提示してくれません。文才が評価された人や売れた人の話は説得力がありそうに見えますが、その陰には同じくらいレベルが高いのに評価されなかった人たちが無数にいます。成功者の話は結果論にすぎません。

 本当の意味で、文章を書く人のスキルやメンタルを補ってくれる本や学校は、実はまだほとんど存在していません。なぜなら、私たちが「書く能力」を必要とするようになったのはここ数十年くらいの話だからです。人類の長い歴史において、「書く能力」は全然確立されてこなかったのです。信じられますか?
 人類が言葉を使うようになったのはおよそ十万年前、文字を使うようになったのはおよそ五千年前と言われています。人類はそれ以来たくさんの会話を交わし、文字を残してきました。身体や環境にハンデを抱えていない限り、話したり聞いたりする能力は誰にでも備わっているはずです。
 しかし「書く能力」だけは、長らく一部の裕福な人たちにしか備わっていませんでした。識字率を見ればわかる通り、現代でも読み書きができない人が世界中にたくさんいます。今ではほぼ100%の識字率を誇る先進国各国でさえ、ほんの百年前まで、識字率が50%を超える国は数カ国しかありませんでした。
 歴史的に考えると、私たちが書くことに悩むのは必然です。「書く技術」というものは、実は世界各国で見てもまだほとんど確立されていません。あなたが書けないのは、実はスキルやメンタリティが不足しているからではありません。そもそも書くための技術や手法が、「歴史上まだ存在していない」からです。

これは、人類史に残る挑戦だ!

 裏を返せば、あなたが文章を書けるようになることは、人類の歴史を前に進めることでもあるということです。数百年後、数千年後、子々孫々が歴史を学ぶ時を想像してみてください。「識字率の上昇は十九世紀、文章術の普及は二十一世紀」と教わるとしたら……今あなたが文章術を学ぶことは、歴史の先駆者になるということになりませんか?
 私たちの挑戦は、ただ文章を書けるようになることでも、ウケる本を書くことでもありません。これは、書く技術を確立し、「人類が書く楽しみを獲得する」という歴史に残る挑戦です。あなたの苦悩やスランプ、そしてそれを乗り越えていくプロセスは、後世がより良い人生や社会を築いていくための礎となります。
 だから、今はまだ書ける自信や実力がなくても大丈夫。この本を通して一緒に学び、少しずつ文章を書き上げていくことで、「こうやって書けばいいのか」と実感していただけたらOKです。

 この本の役割は、あなたの執筆作業の「伴走」です。文章を書く時に手元に置き、手順を確認したり問いに答えたりしながら、とにかく書き進められるようにする。綺麗な文体や構成まで欲張るのではなく、まず「書き上げる」ことを目指す。それがこの本の狙いです。
 本と付き合うことは、友だちと付き合うことと同じだと言われます。「あなたはどう思う?」と問いかけ、「大変だよね」と寄り添い、「がんばろうぜ」と高め合う。この本も、あなたにとって友だちみたいな存在になれるように、願いを込めて書きました。困難を一緒に乗り越える友のように接していただけると嬉しいです。
 文章を書く作業は、面倒で困難で孤独かもしれません。しかし、同じように書くことに挑戦する私たちがここにいます。少しでも書き進めやすいように、伴走するこの本があります。実際に書く作業は一人かもしれませんが、独りではないはずです。
 これまで人類が飢えの苦しみや暑さ寒さの苦しみを乗り越えてきたように、私たちは「書く苦しみ」を乗り越えていきましょう。文章を一字一字書き連ねていくことが、歴史を一歩一歩進めていくことになるように。これからよろしくお願いします。

執筆者代表 福田幸志郎


サポートがあると、自信と意欲にますます火がつきます。物語も人生も、一緒に楽しんでくださって、ありがとうございます。