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図書館のお便り『パワー・クエスチョン』

「これから」を考える人たちが集う町、加美原町。
ここの住人たちは、深い「思考と対話」が好きだ。
お互いの発想を広げ合おうと、今日も町は賑わう。

この町では、本は読むものではなく、「使うもの」

加美原町の図書館を初めて訪れた人は、少し戸惑う。
なぜなら、ここはとても賑やかだからだ。
この町では、図書館は静かにする場所ではなく、対話をする場所なのだ。

アウトプット、言語化、表現。
「わかりやすく話すこと」がこの町では評価される。
読んで、話して、試して、知恵は身につくようになっている。

今日は一冊の本について、住人たちが「質問」を重ねていた

「あなたはなぜ今の仕事をしているのですか?」
「他にしたかったことはありませんか?」
「今日話し合わなければいけない最重要問題は何ですか?」
「これまでで一番やりがいがあったことは何ですか?」
「逆の立場だったら、どうしてもらいたいですか?」

一つ質問を出しては、答えたい人が答える。
話しているうちに、新しいひらめきが生まれる。

「質問」には不思議な力がある。

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「質問は、わからない人がわかる人にするものだと思われていますが」

みんなの質問の応酬をうまくまとめていたのは、雫のお父さんだった。
「深い理解があるほど、良い質問ができるようになります」
さも自分で発見したかのようにドヤ顔で語る姿は相変わらずだ。

最近は世の中に「オンライン化」の波がきている。世界中のさまざまな人たちとつながれるようになってきたから、相手を知ろうとする工夫は一層必要になってきている。

この町でも、外からやってくる人や外へ出ていく人のつながりを保つため、コミュニケーションや外交について積極的に学ぶ人が増えている。

「良い質問ができるほど、早く深く人を理解できるようになりますね」

住人たちの感想を挟みながら、質問による対話はどんどん進んでいった。
自分の胸に手を当てて質問に答えるだけで、いろんな気付きがあった。

「これまでで一番幸せだった日はいつですか?」
「あなたにとって正しい決断は何だと思いますか?」
「なぜそうしたいのですか?」

基本的に、人は誰でも話を聞いてほしい

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本の内容への意見交換が終わると、雫のお父さんは意見をまとめた。

「今日の質問ワークから得た気付きが、コミュニケーションの良いヒントになりそうですね。

多くの人が考えているのは、『何を話すか、何を教えるか』であって、『何を聞くか、何を教わるか』ではない。

人は話を聞いてほしくて、実は人の話を聞いている時でさえ、次に自分が話すことばかり考えている。」

図書館の一角からは、感嘆の声が漏れた。
もったいぶっておいて核心を突くファシリテーションはいつも好評だ。
会場の雰囲気に満足して、雫のお父さんは話を続けた。

「だから逆に、聞く力を身につければチャンスになります」

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話したい人ばかりで、ちゃんと聞いてくれる人が少ないなら、「聞く人」の価値が高まるでしょう?

特にオンライン環境では、一度に一人しか話せませんから、聞き上手な人や話し合いをコントロールできる人の存在が重要になってきます。

相手が気持ちよく話せるような質問を投げかけられる人がいたら、人気が殺到するかもしれません。もしかしたら、「話を聞くこと」そのものが仕事になることもあるでしょうね。

話す人が注目される時代から、聞く人が注目される時代へ

本の内容についてみんなで話し合ったことで、理解が深まった。思考と対話を重ねた人たちは、自分のコミュニケーション力、特に「質問力」をこれからもっと磨いていこうと思った。

こうして本の知恵は少しずつ町に溶け込み、やがて「文化」となっていく。

今度誰かがこの町を訪ねてくる頃には、住人の中に「聞き上手」が増えていることだろう。

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