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「私は指示も命令も一切しませんから」と言い切る社長が作った最強の会社

全国のトヨタ系カーディーラーの中において、ダントツの顧客満足度を誇るのが、高知に拠点を構える「ネッツトヨタ南国」です。

坂本光司先生の著書『日本でいちばん大切にしたい会社2』でも取り上げられたこの会社のことをもっと知りたいと思い、以下のオンラインイベントに参加しました。

創業者で今は相談役に退かれている、横田英穀さんのその口から語られた組織経営の“秘訣”は、目からうろこの連続でした。

「私は指示も命令も一切したことがない」と語る横田さん。

いったいどういうことなのか。

その詳しくは、上記動画で横田さんのお話をじっくり聞いて欲しい思うのですが、2時間にわたる動画を見る時間がない方のために、そのエッセンスを整理してみました。

いわゆるヒエラルキー型の組織で働いてらっしゃる方(経営している方)にとっては、その正反対とも思える経営哲学にきっと驚かれることと思います。

<創業時から「人材の採用」に力を入れてきた>

○37歳で会社を任された。実績も経験も人望もない自分が何ができるかと考えた時、都会の他店に量的にはとても敵わないが、質的に一番になることはできるのではないかと考えた

○当時、会社に一番足りていなかったのは「人材」だと考え、いい人材を採用しようと思い、採用活動に一番力を入れた(時間と労力とお金をかけた)

○採用活動には自分自身が一番積極的に取り組み、夢を語り、共感してくれた人を採用していった

<組織の「あるべき姿」を追い求めてきた>

○(横田さんの考える)企業の存在理由は「社会的責任を果たすこと」であり、具体的には以下の5つである。
 ・社員の幸せと満足
 ・顧客の幸せと満足
 ・ビジネスパートナーへの貢献
 ・地域貢献
 ・株主(これを一番最後にもってこれるのが中小ならではの強み)

○私はあるべき姿や理想を語り、それを元に文化は社員が作ってきた。自分はもともと気が弱く強いリーダーシップを持っていなかった。発揮しても誰もついてこないと思ったからやらなかった。今もそうだが、1980年頃には既にリーダーがあれやれこれやれと指示しても動かない時代になっていた。

○多くのヒエラルキー型組織では、
 ・上の人:指示・命令・考える
 ・下の人:報告・連絡・相談
 となっている。
 つまり、上司が考える人で、部下が言われてやる人

言われてやる人(下の人)がリーダーの立場になった時、いきなり考える人になれない。若い時から考える人でスタートすべき。

○組織をフラット化し、
 ・上の人:見守る、信頼する、考えさせる
 ・下の人:自ら考えて行動し反省する
 の関係を目指した。この組織は失敗を容認する組織でもある。

○部下が上司と同じ価値観と判断力、人間力を持っていれば、相談する必要が無くなる。自分の判断で行動するようになる。(私は相談役だがだれも相談しに来ない笑)

○このような組織を目指すのは何故か、が判ってないと、形だけ真似ても実現できない。一歩ずつ前に進みながら少しずつ変えていくことで実現する。サラリーマン社長は周りが許さないため難しいかもしれないが、次の代の社長への準備と位置づけ、引き継いでいくことで達成できるのではないか。

<「働きがい」のある企業風土を育ててきた>

○人気企業が持っているのは知名度、規模、安定性、待遇(給与、賞与、休日)だが、これらは既にあるものであり、それに惹かれて学生が入社していく。だが、入社後彼らの一番の関心事は昇進昇格になってしまいがち。それ以上に大事な事を目指す会社、すなわち働きがいを得られる会社にしようと考えた。人材を獲得する為にも、中小企業は「働きがい」のある企業風土にすべき。

○規模、安定性、待遇らは「満足」であり、他人から与えられるもの。一方で「働きがい」は自分で得るものであり、それが働く人の「幸せ」に繋がる

○会社が一方的に「働きがいのある会社にしよう」と言っても、待遇が悪いのに何言ってるんだと反発がでる。その為社員アンケートを取り、社員の口から出た言葉を整理し「見える化」する事で、社員の主体性の結果として「働きがい」のある会社を目指すよう仕掛けてきた。

○彼らの口から出てきた言葉の多くは、マズローの欲求段階でいうところの上位のもの(自己実現、自我地位、集団帰属)だった。ある社員の発言により、上位の欲求(自己実現、自我地位、集団帰属)が満たされれば下位の欲求(安全欲求、生理的欲求)も必然的に満たされる事に気づいた。

40年前から「社員が幸せになる会社をつくる」と言い続けてきた。

<横田さんへの質問コーナー>

Q:採用に力を入れる前からいた社員と後から入ってきた社員とで、質の差が生まれてしまうのではないか?
A:差を埋めるのでは無く、前からいた社員が新しい考え方に反対されないようにする。真正面から意見を否定せずに、できるだけ否定せずに、やんわりと自分の意見が部分最適になっていると気づかせる。本人が自分で判断をすることが大事。強制的に従わせる事もできるが、それによって心の傷が生まれ、違うところで反発が出てきてしまう。(もともと私は気が小さいから上からガツンという事はできないししない)

Q:自ら考え行動し反省する、のうち、反省しない社員に対して反省を強制的に促してしまうが、どうしたら良いか。
A:権限委譲がポイント。自分の判断で(決済で)決められる幅が広い為、全て自分ごとになる(そしてその分喜びも大きい)。一方で上司に伺いを立てて決めてもらうと、その時点で他人事になり、反省や振り返りをしようという気持ちも湧かなくなる。社員がいつでも言いたい事を言える。上下関係が無くフラットな組織。社長であっても「対等」な関係。

Q:なぜこのような考え方ができるのか。
A:ひとつは20代の頃に経営を勉強したことがある。多くの経営者は間違った事をやっている、という事を学んだ。だから他の会社より少しだけ良い事をやってきたと言う自負がある。間違った事とは、例えば…
・叱りつける
・人参ぶら下げて走らせる
・同僚と比較したり競わせたりする
・下手な人事効果
など。
また、物事の因果関係を知るのが得意、というのもある。個ではなく全体を見て考えてきたのがよかったのかもしれない。

Q:フラットな組織における上司のあり方とは?
A:愚者の演出が出来るのが一番良い。仮に相手に演出がばれていたとしても。上司が正解を持っていたとしても、ひょっとしたら間違っているかもしれないという前提で、「君ならどう思う?」と問いかけるのが大事。何かを指示する時も、まず相手に意見を求める、もしおかしな答えが帰ってきたとしても、「なぜそう考えるの?」と聞く、それでも折り合いがつかない場合のみ「今回はこの通りにやって」と頼むのが良い。(但し私はそもそも指示命令しないのでこれはやらない

Q:どんな社員教育をやっているのか?
A:人間教育。採用の面接の時から既に始まっていて、必ず「君は何のために働くの?」を何度も問いかける。初めは考えて無いしちゃんと答えられないが、何度も問いかけられる事で考えるようになり、答えが出てくる。

Q:自己実現に向かうために何が必要か?
A:人柄に磨きをかける。より良い価値観を身につけるように少しずつ変わっていく。ある社員が、自己実現=人生の成功は、成長し続けること、変化し続ける事、だと言っていたが、うちではそう考える人が多い。

Q:自己実現欲が高い人はいずれ辞めて独立してしまうのではないか?
A:それは無い。この会社で働くのがみんな好きこのメンバーと一緒に働きたいと本気で思っている
会社を立ち上げた時に、人材だけが足りていないと気がつき、人を育てる会社にしようと決めた。各資源の中で、人だけが逆境に立ち向かうことのできる原動力であり、それ以外(商品力、資金力、土地、歴史、信頼、等)は補助的な位置付けである。
どの会社も創業者の時代は人材の育成に積極的だが、ある程度事業が軌道に乗り、時間が経つと、目の前の業績を上げることばかりに意識が向き、長期的な目線で物事を考えなくなる。結果、人材育成におざなりになる。本当は、目に見えないものを大事にしなければいけない。

Q:人事考課のあり方について、
A:前提として人間力、人柄の良い人、思いやり、利他、慈愛、感じさせる人。頭に詰め込んだ知識は道具であって、その知識を使いこなす為の力が人間力(マネジメント力)。
これを高める為に会社中で、社員は「自ら考え発言し行動する」を繰り返している。
多くの会社は結果に近いところで評価をしているが、人間力は結果に至るプロセスの中で発揮する力であり、結果とは遠いところにある。
結果をできるだけ評価しない。いい結果が出ないいいプロセスと言うのはない。いい成果はいいプロセスからのみ生まれる。

Q:昇格や昇級の決め方
A:極めて年功序列。そもそもいい結果を出している人とそうで無い人との差が少ない

<最後に>

格言が好きで、150個くらいノートに書き込んである。格言というのは多くの人はそれと反対のことをやっているからこそ意味を持って存在している。私も何かあるたびに格言を読み直し、自身の行動を振り返っている。

そして最後に、以下のイチローの言葉を締めの言葉としてご紹介いただいて、回は終了しました。

「チャレンジするのに大切なことは、それができるかどうかとか、うまくいくかどうかではなく、自分自身がそれを本当にやりたいかどうか」





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