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どっちもどっち


 オンナの視線は、わたしを通り過ぎ、あのオトコを見つめていた。話も上の空。
いつもそうなんです。そう。

 ある日、いつものようにオンナと話をしていると同僚の声が聞こえてきた。
振り向くと、

「ねえねえ、聞いた? Dさ、結婚するらしいよ、大学時代からの彼女らしい。」

 それを聞いた周りの同僚たちから
「おー。」と歓声が上がった。

(おいおい、知ってるよ、わたし)
オンナの方に視線を戻すと

 オンナの顔が凍りついていた。
必死に動揺を隠そうとしたがなおさら顔がこわばっていた。

そうなんだよね。
やはり付き合っていたんだね。
残念だったね。

それまではなぜか自信満々、幸せいっぱいだったものね。

 オトコは、ちょっと目立つ風貌。
男にも女にも好感を持たれるいい奴です。
仕事もできるし、おまけにスポーツマン。

 もしもパートナーになったらさぞかしオンナはご自慢だったろうに。


 そんなザワザワから1週間後のこと。
こんどはオンナが動いた。
同僚がわたしのところに来て
「聞いた?彼女、製造部門の人と婚約したんだって!」

(ふーん、そういうことね、オンナも二股!?)

「そうなのね」

 今度はわたしの隣にいたオトコが引きつっていた。
そして、
「女ってわからないよな。」

(はあ!?そう言う)

 その言葉に抑えきれず、思わず私の口から出たのは
「オトコもね。」
といいながら、オトコを見つめた。

「えっ?!」
思いがけず、わたしのツッコミにオトコが固まった。

 ふっと笑みを浮かべながら、さらにオトコを見つめた。

 あまりのわたしの勢いにたまらず、オトコは
「あっ、ちょっと飲み物買ってくるね」
と、席を立つとそのまま戻ってこなかった。

別にこの二人が特別なのではない。
常に安全策を取りながら、種の保存のために日夜、DNAに導かれ男と女は動いていのだった。

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