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小説×音楽の化学反応/「夜に駆ける YOASOBI小説集」

「夜に駆ける」は、コンポーザーのAyaseさんとボーカルのikuraさんからなる、「小説を音楽にする」ユニット・YOASOBIのデビュー曲です。


この小説集は、これまでYOASOBIが作った音楽の、原作となる小説を集めた一冊となっています。


私はこの本を読むまで、YOASOBIの楽曲は「夜に駆ける」しか知らなかったのですが、これを機会にYOASOBIの1stアルバム「THE BOOK」を聴き、すっかりAyaseさんの作る曲と、ikuraさんの歌声のファンになりました、ぴょん!

この本は、こんな人におすすめ

①小説も音楽も好きな人
②磨き上げられた切なさを味わいたい人
③小説を音楽にするって何? と疑問に思った人

 それでは、収録作品をひとつずつ、曲と照らし合わせて紹介しようと思います、ぴょん!

*夜に駆ける「タナトスの誘惑/夜に溶ける」

「夜に駆ける」は、死神が見えるという恋人の女性が、度々自殺を図ろうとし、それを止める男性の話です。
物語の最後はあっと驚く展開で、改めて曲を聴き返し、MVを見返すと、「そういうことか」と納得できました。

原作小説のタイトルにある「タナトス」は、死を神格化したギリシア神話の神様の名前です。なので、決して明るく爽やかな物語ではありませんが、儚く切なく美しい物語だと思います。

冒頭でご紹介している「THE FIRST TAKE」のバージョンは、ikuraさんの声がより鮮明に聴こえて個人的にとても好きです。

*あの夢をなぞって「夢の雫と星の花」

「あの夢をなぞって」は、予知夢を見ることができる少女と、その幼馴染みの少年の、甘酸っぱい恋愛の物語です。

予知夢がテーマなので、SFっぽい要素や神秘的な印象もありますが、恋愛要素が強いので、爽やかな雰囲気がただよっています。読後感も爽やかな作品です。
曲には予知夢という言葉はひとつも出てきません。なのに、小説を読んだうえで曲を聴くと、「この言葉はこういう意味だったんだ」と初めて分かります。

こちらはコミカライズもされているので、気になる方は是非チェックしてみて下さい。


*たぶん「たぶん」

「たぶん」は、一人暮らしのはずの家に響く物音で目を覚まし、主人公が元同居人に思いを巡らせるところから物語が始まります。男女の別れがテーマです。

この曲は、「少し冷えた朝だ」という言葉で終わりますが、ここに言い知れぬ切なさが漂います。とても短い物語ですが、行間を味わいながら噛み締めたい作品です。


*未発表曲「世界の終わりと、さよならの歌」

最後の「未発表曲」は、後に発表された「アンコール」という曲です。
この物語は、明日で世界が終わるという設定で、そんな中出会った男女の奇妙な交流が描かれています。寂しさと切なさに胸が締め付けられますが、最後には微かな希望が見えます。

曲と合わせて鑑賞すると、寂しさや切なさを柔らかな優しさがそっと包み込んでいるような、あたたかい作品にも思えました。


*ハルジオン「それでも、ハッピーエンド」

最後は、失恋から立ち直るまでの心情を女性目線で描いた作品です。全体的に切なく寂しげな雰囲気が漂っているからこそ、最後の最後に射す希望の眩しさが引き立っています。

楽曲は、息つく暇もないほど速い曲調が印象的です。まるで「ああだ」「こうだ」と頭の中で何度も過去を回想し自問自答している様子に重なるようで、何度も聴きたくなります。爽やかなラスサビに心がふわりと軽くなる1曲です。



以上、5編です。
個人的には、まず小説を読まずに歌を聴いて、そのあとに小説を読み、また歌を聴く、という鑑賞の仕方が好きです。

購入者特典としてikuraさんの「タナトスの誘惑」の朗読動画も視聴することができるので、気になる方は要チェックです。
是非、小説と音楽のコラボを楽しんでください、ぴょん!


(2021年3月27日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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