パリ五輪の抱える諸問題:「性分化障害」のアルジェリア「女子」ボクシング選手をめぐるあれこれ

8月2日(金)晴れ

昨日は車検が上がり、電話があったので少し早めに取りに行って家に帰って少し休んでいたら、つい眠ってしまって午後の出がギリギリになった。なんだか疲れが溜まっているので、気をつけていきたいと思う。

今日は何を書こうかといろいろ考えていたのだが、読み始めた漫画「Thisコミュニケーション」が面白いのと、「POLE STAR」という作品のこと、「王政復古の大号令」の革命性、日本の近世・近代の「貴族」とは何かという話、教育勅語と宗教戒律の違い、フランスのエスプリと江戸文化、女性限定公募の問題性、そしてオリンピックをめぐる諸問題と侮れないかっこよさ、といろいろテーマが出てきたのだが、とりあえずオリンピックのことを書こうかと思う。

私は基本的にオリンピックはあまり見ないし、選手たちについてもよく知らないのだが、日本が頑張ってくれると嬉しいし、金メダルをはじめ成績も順調に上がっているのでそのあたりも良いことだなと思う。

しかし今回のオリンピックには様々な問題もあることは確かで、開会式の演出についての世界中からのクレームや、水質に問題があるセーヌ川を使ったトライアスロン競技の強行などパリオリンピック委員会の独善性の弊害のようなものもいろいろ現れていると思う。

オリンピックをめぐる問題はさまざまな理由で発生するものがあるわけだけど、一つにはポリティカルコレクトネスやwokeの行き過ぎという問題がある。ポリティカルコレクトネスやDEI、wokeの問題は西側先進国全体の問題でもあるわけだけど、フランスは特にライシテ、世俗主義が国是になっているため、宗教否定と瀆神行為、ブレーキのかからないwokeismなどの問題が、今回の大会においては顕著に目に見える形で表れていると思う。まずは開会式の「最後の晩餐」のパロティや、ヨーロッパの王室を招いてのマリ・アントワネットの生首シーンがあったが、「性別不適合」の選手を女子ボクシングに出場させ、相手がすぐに棄権して勝利した問題があった。

ここまで書いてこの件について調べてみて、全く認識を改めざるを得ない問題があることを知った。これはトランスジェンダーやwokeの問題とは違う意味での深刻な部分のある問題だったのである。

実は、アルジェリアのケリフ選手と台湾のリン選手は二人とも東京オリンピックには出場しているのだそうだ。ケリフ選手はベスト8敗退で今回は金メダルだが、今日は台湾のリン選手も出場する。詳細ははっきりとはわからないけれども彼女たちはトランスジェンダーではなく性分化疾患DSDで、テストステロン値が高いために引っかかったのだという話と、よりストレートにDNA検査でMaleと判定されたケースもあるのだという。

しかし出生時の性別が女性と判定されても大人になって染色体検査を受けたらXY染色体を持っていた、ということもあるらしく、今回の選手たちはそういうケースなのだそうだ。

これは精神的な性別の違和感からのトランスジェンダーや生物学的な性別は明らかに男性なのに自認がどうしても女性の性同一性障害GIDとはまた違う問題なので、「女性として「生まれて」育ってきた人を女性競技への出場から除外する」のが正義か否か、という問題になるようだ。これはボクシングという競技の性質から言っても難しいところがあるわけだけど、東京では敗退したから問題にならず、パリでは優勝したから問題になった、というのも難しい問題だなと思った。

ただこれは報道の問題もあり、私もこの文章を書くために調べるまでは単純にトランスジェンダーのMtFの選手が出場して金メダルを取った、これは女子競技の存亡に関わる問題だと認識していたので、トランスジェンダーではなくDSDの問題だということは周知した方がいいと思った。

しかし、逆に言えば今までこうした選手たちは女子競技から締め出されていたのが、トランスの選手たちが出場するようになってそのハードルが低くなったということもあるかもしれないとは思う。私も今の時点で結論は出せないけど、人間存在の複雑性とか本来の意味での多様性の問題として、深淵を覗くような問題ではあるなと思うし、まさに深淵もまたこちらを見ているということなのだと思った。

また、今回はヨーロッパで、特にフランスとは軋轢を抱えるアルジェリアの選手の問題であり、負けたのがイタリアつまりヨーロッパの選手であるというレイシズムの問題も絡んでくる感じはある。もう一人のリン選手も台湾だから対戦相手によってはまたクローズアップされることもあるだろう。

パリオリンピックは様々な問題を抱えていることは確かだが、逆にいえば今まで潜在化していた問題が顕在化しているだけ、という面もあるのだろうなという気もした。

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