「モディ化するインド」:今日のインドを多様な面から描写していて興味深い

5月22日(水)曇り

昨日はブログを書いたあと荷物の整理をしたり母の施設に荷物を取りに行ったり、クリーニングを取りに行ったり。あれこれ税金のことなど考えていて住民税を払い忘れていることを思い出し、銀行でおろして納付に行ったりなど。お昼は昨日の残りがあったが牛乳とティッシュがなくなったので買いに行ったり。細々した仕事は次々に出てくるものだなと思う。

お昼を食べてから作業場へ行って少し片付けをしたり、いろいろ考えているうちに結構落ち着いてきた。実家は自分の間尺に合わせて整備してないから、作業場の方が自分の意思が貫徹しているので(散らかりを片づけ切れてはいないが)落ち着くのだなと思う。

職場に出てからも駐車場を借りる人が来たり弟が買っておいてくれたカーテンが届いたり。なんだかバタバタいろいろ忙しかった。ものも人も言葉も出たり入ったり、出入りが活発な感じがする。新しい仕事も出来そうな感じになってきた。

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空いた時間は「モディ化するインド」を読んでいた。いろいろ面白い。

インド人民党が州政府を握っている州では卵を学校給食から排除するなど菜食主義の強要が起こっているとか。これは「ヒンドゥー至上主義」の現れの一つとのこと。

現在のインドの与党インド人民党(BIP)の母体になったのが民族義勇(奉仕)団(RSS)であり、ガンディーを暗殺したゴドセを輩出している。現在のモディ首相はこのRSSの元活動家である。RSSはガンディーを売国奴、マザー・テレサを植民地支配目的と糾弾していて、人民党政権にガンディー暗殺者ゴドセを崇拝させるよう教科書改訂を推進しているとか。

ヒンドゥー至上主義の構成要素はいくつか考えられるけど、その根底にあるのがイスラム教徒に支配されてきた歴史やイギリスによる植民地支配に対する怒りであり、「インド人は平和を愛しすぎたためにイスラムやイギリスに蹂躙されてしまった」という思想が根底にあるのだと思う。そういう意味では反植民地主義ではある。

インド人民党は調べてみるといろいろと面白い。ガンディーを売国奴と批判するところなど、日本に「融和的」だった汪兆銘を「漢奸」と断罪する中国共産党によく似ている。李氏王権を最大限尊重しようとした伊藤博文を暗殺した安重根を義士とする韓国歴代政権にも。インド人民党や民族義勇団というのは中国共産党やともに民主党とかがもうちょっと過激な行動するイメージでとらえればそんなに間違ってないんじゃないかという気がする。

インドの国是は独立以来、特にネルーの国民会議派が政権を取っている間は「世俗主義」だったわけで、この辺はアタテュルク以来の世俗主義を強力に推進したトルコの人民党政権の時代とよく似ている。現在のエルドアン政権与党の公正発展党が親イスラム主義であり、ムスリム同胞団と関連を持つのと状況も似ている。

インド北東部のアヨーディヤーは古代コーサラ国の地であり、ラーマーヤナの主人公ラーマ王子の生誕の地とされているが、ここにはムガル帝国初代皇帝のバーブルの名を冠したモスクがあった。ヒンドゥー至上主義者はこの1992年にこのモスクを破壊し大規模な宗教暴動に発展したが、モディ政権成立後の2020年にはここにラーマを祀るヒンドゥー教寺院が建設されたのだと。

ヒンドゥー至上主義とイタリアファシズムの関係は以前から指摘されていたが、最近はそれを取りあげる教員が大学当局から停職処分を受けたりしているのだという。日本におけるフェミニズムの暴威によるテニュア剥奪事件などにも共通項を感じる。

インドでは若年層の雇用不足(失業)が深刻で、公的部門に若者が殺到し、軍が新規採用を4年の任期制に限定すると制度改悪に抗議するデモや暴動が頻発したのだという。西葛西にインド人が増えているのもそういう文脈もあるのだろうか。

コロナ後乗用車の販売台数は伸びているが二輪車は手痛いか減少していて、これは大企業と中小零細の格差が拡大しているからだと言い、V字回復ではなくK字回復だといわれたりしているのだとか。

モディ政権下のインドでは統計調査に不熱心で、2021年に行われる予定だった国勢調査がまだ実施されていないし、経済調査も2011年のものがいまだに使われていたりするのだという。インドの人口は中国を抜いて世界一になったと言われるが、調査されてないから本当の人口はわからないのだという。

日本におけるクルド人に対するヘイトを煽る内容がクルド人を称するアカウントから発出されていたが、多くはトルコ本国のトルコ人がクルド人を騙っていたとのこと。イングランドでのインド・パキスタンの移民同士の抗争も、インド本国からのSNS投稿がかなり煽った面があるのだという。

2022年の4月に日本がウクライナ支援のために物資の備蓄拠点であるムンバイに自衛隊機を派遣しようとしたところ、事務レベルで合意していた受け入れが閣僚レベルで「ロシアに配慮して」ひっくり返され拒否されたのだという。日印両政府は詳細を明らかにしていないのだという。すでに岸田政権である。

ロシアの極東での軍事演習に中国はもとよりインドも参加した、というのは知らなかった。インドは一応北方領土での海軍の演習には参加しなかったというが、クワッドにインド入れてて大丈夫か、という感じはしなくはない。まあこの辺はロシアとの綱引きになるんだろうけど。グローバルサウス、といわれる諸国の動き方の一つの典型例ではあるのだろなと思う。

インドが自国の利益のためにロシアと付き合うのは正当だと主張しているらしいけど、この辺はイスラエルの虐殺正当化の論理に似ているところがある。モディ政権はめっちゃイスラエル支持してるんだよね。

インドにとって最大の脅威は中国なので、クアッドは海洋防衛には役立つが陸上の国境防衛には役立たないからロシアと緊密にならざるを得ない、軍事演習に参加するのもロシアが必要以上に中国寄りにさせないため、という指摘は割となるほどと思った。日本は中国を牽制するためにインドに接近しているけど、インドとしてはそんなに日本やその背後にいるアメリカは当てにできないと思ってるということだろう。伝統的にインドの兵器はソ連製だし、そこから続く関係もあるだろうし。やはりイギリス植民地統治に関する強い反発は残っていて、それがアメリカを信用できない理由でもあるだろうし。

いろいろ読書メモを書いてきたが、「モディ化するインド」、面白いですね。インドの権威主義化への懸念という視点も左翼の人には大きいだろうけど(保守派でも無視はできないが)、なぜインドがロシアと手を切れないのかという話も説得力がある。全体に、「今日のインド」というものがよく描写されていると思います。


頼清徳新政権が発足した台湾だけど、台湾は地の利を生かして海洋国家化していく方向性を持っているようなのだけど、台湾は海洋国家だ、という主張に「中華民国イデオロギー」が強い一部軍人が反発を感じる、というのはなるほどと思った。中華民国は大陸国家だというわけである。大陸反攻をしようというわけではないだろうけど、精神としてはいまだに持ち続けているということなのだろう。


近所で工事が始まり、ちょっと集中できないので今日はこの辺りで。

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