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シニアの住宅改修を妨げるもの

高齢者の方が住宅改修に後ろ向きな理由に、「先が短いから」「お金をおいておきたい」という話はよく聞きます。人生100年時代が来ようとしているのに、購入してから30年以上経つ建物に手を加えようとしない人が多くいます。外壁や水回りはメンテナンスされていても、間取りを変えたりすることには抵抗がある方も多いです。

10年ほど前、私の両親が、自分たちの生活スペースではなく、2階の全く使っていない部屋の内装を新しくしていました。理由を聞くと、弟家族が帰ってくるかもしれないから、という謎の理由でした。私の兄弟は全員結婚して家も購入し、実家に帰りたいと思っている人は誰一人もいないのにも関わらず、そこにお金をかける両親を見て、一瞬「騙された?」と思ってしまったほどです。弟は親との折り合いが悪く、絶対に帰ることはないと断言しているのに、そこにお金を使ってしまう両親の哀れさに悲しくなりました。ちなみにその部屋に子供の誰一人として1泊もしていません。

子供が独立して出て行っても、もしかしたら帰ってくるかもしれない、と考えて広い家を残しておられる人が多いように思います。ただ、広い家はメンテナンスにもお金がかかりますし、毎年庭の手入れに頭を悩ませ、無理して脚立に乗って、足を踏み外して捻挫・骨折というのはしょちゅう聞きます。

さらに介護される方に合わせた改修をためらわせるのは、介護を受ける方がいる家庭に子供が同居している場合です。晩婚化、非婚化、ひきこもり、非正規雇用など要因は様々かと思いますが、介護を受けてる家庭の3割くらいの家庭に成人している子供がいるように感じます(あくまでも私の感覚です)。子供家族と同居に比べると圧倒的に多いです。①働いている子供②働いていないが家事や介護は助けてくれる③働いていないし家事も介護もしない、の3パターンがあります。①②の場合は通院を手伝ってくれたり、異変に気付いてもらいやすかったり、とメリットもありますが、③の場合は親が、自分の面倒と子供の面倒の両方みないといけないので、自分の面倒が後回しになっている方が多いです。②の場合も将来の不安はぬぐえず、通院を控えたりされることがあります。

そのように何かしらの理由で子供が同居している場合、そのお子さんが50代や60代であっても、将来そのお子さんが住みやすい家を残してあげたいと思うため、自分に合わせた手すりや改修を拒むことが多いのです。また、子供が親の亡き後の利用方法を決めており、そんなことをしてくれたら困るというような方もおられます。息子家族の子供の一人部屋が欲しいから、おばあちゃんを施設に入れられた方もいました。

子供の幸せを願わない親はいないと思いますが、この先30年生きるかもしれないと考えたとき、子供が使う確証もない広い家をメンテナンスし続け、住みにくい住環境で我慢し続けることは得策でしょうか。


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