映画『返校 言葉が消えた日』の感想

※この記事では映画『返校 言葉が消えた日』に関する感想をだらだらと方向性なく語ります。「返校は正直微妙だった……」という方が読まれると心身に重大な不快感を及ぼす可能性があるので、お控えください。


 今期自分の中では一番話題性があった映画『返校 言葉が消えた日』

 有名声優さんが実況したりと原作からして有名だし、まあ近場で見れるだろう……という考えを軽やかステップで飛び越えて、公開館数の少なさたるや………………

 これ下手すりゃ前回の『ライトハウス』より少ないのでは?

 そんな愚痴は置いておいて見てきました。


 政治的弾圧による国民同士の相互監視や密告の強制という台湾における暗黒の時代〈白色テロ時代〉を舞台にした同名のホラーゲームを原作にジョン・スー監督がワン・ジン×ツォン・ジンファの二人を主演に迎えたホラー・ミステリー。

 監督からして長編映画初挑戦(?)のようで、主演を演じたツォン・ジンファも映画初出演という、まさに新進気鋭といった雰囲気を纏って現れた映画だが、

2019年度台湾映画No.1大ヒット!

第56回金馬奨12部門ノミネート、最優秀新人監督賞等最多5部門受賞

 という「あらぁ、強いじゃなぁい」という勲章を引っ提げてついに日本公開。

 予告を見る限りかなり原作ゲームをリスペクトし、雰囲気作りを徹底しており、さすがと言うかあの当たりの国の画作りはすばらしいなと――

 というわけで感想。


 まず初めに、

 これめっちゃおもしれーぞ。と

 しかしあまりにシンプルかつ単純でわかりやすいから感想に困った……

 こういう映画はこんなボンクラ文字書きがあーだこーだひねり出す文章よりも「いいから見てこい」と口に押し込むのが正解な気がするんですよね。

 この映画の魅力とはズバリ”見やすく・わかりやすい”ということです。

 こういう点においては『ゲット・アウト』を思い起こしますね。

 こちらは現代なにかと話題になる、一見して難しいテーマをホラー映画というジャンルで包んでわかりやすくしていて、今回の『返校』は歴史上の難しく扱いずらい話をホラー映画にして伝えていますね。

 じゃあ、ホラー映画としてはどうなのよってなると思います。

 じゃあまずそこから。

 普通に怖い場面は怖く撮れているし、不気味な場面は不気味です。

 残酷な場面も手を抜いた表現はせず、しっかりと年齢制限に沿った形をとっているためそこも抜かりありません。

 ただ一つ。この映画で割かし目立つ、個人的にちょっと気になった点がここにあって。

 あくまで個人的かつ映画館で見た、ということもあるので個人差はあると思うが


 音がデケえよ


 そんなことしなくても普通にいいと思います。

 何と言うかこの演出のせいで場面<音にびっくりの割合が傾いちゃってて純粋に驚けなかったな……と。

 それ以外の恐怖場面はちゃんと怖い。

 ゲームにも出てきたアレをオマージュした、この手の映画にはつきもののクリーチャーのビジュアルもしっかりとこだわっていて3dっぽさはあるものの、こいつとの追いかけっこや隠れるシーンは滅茶苦茶緊迫感があって怖いし、ここにもゲームをリスペクトした演出がある。

 しかもそれだけじゃないのがこの映画のいいところ。

 このモンスターと恐怖演出にも意味合いを持たせて、追いかけっこが何を現しているのか見ている側にもわかりやすい。

 こういった細かい場面一つとってもとにかく場面の比喩的表現や伏線回収が丁寧でわかりやすく、だからこそ難解かつアプローチの難しい歴史的な部分と、そこに生きた人々の苦悶の感情がダイレクトに伝わる。

 そして観客とスクリーンに映される登場人物の恐怖の意味が中盤を境に転換するのが最高。

 序盤で提示された謎や伏線。それらが恐怖演出として襲い掛かかる中盤までと後半で丁寧に謎が解かれていき、そこまで不気味かつ意味不明な“漠然とした恐怖”として襲い掛かってきたものが肉付けされていき、主人公たちが生きてきた時代に実在した“恐怖・葛藤”と言ったものが形を成して襲ってくる。

 これらは過ぎた物として抵抗の虚しい変えようのない現実として襲い掛かっては来るものの、ホラーとしてのSF要素をうまく活用し追体験としてワンクッションを置いたからこそ、主人公がその時代でも潰えなかった強い意志を受け継ぐという展開はやはりアツイ。

 そしてこれがエンディングへ繋がると……これ以上はネタバレになるので詳しくは語らないが、ゲームでは示されなかったテーマに対する監督なりの現代へのアンサー的な部分が、その時代では救われなかったり、だれもが悔いたことであろう部分に対するある種の救いとして示されているのかな……?という感想です。


 今回は前回より多分結構短くなったと思うけど纏めます。

 まあなんだかんだ自分が面白く感じた映画だから全肯定っぽい感想になってはいますけど、やはり単純に怖がるためのホラー映画としてみると肩透かしを食らうかも。

 前述した通り後半はホラー映画らしい恐怖演出は結構薄れていて、サスペンス・スリラー的な謎解きになるからってのはあると思う。

 しかしやはりストーリーは決してつまらないなんてことはないのでぜひ見てほしい。

 以上、くだらない駄弁に付き合って下さりありがとうございました。

 


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