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憲法の中で一番大切な条文は?

憲法は103の条文があるわけですが、一番大切な条文はあるのでしょうか?もちろん、人によって一番大切に感じる条文はちがうことはあっていいと思います。あるべきだと思います。戦争直後の世代にとっては第9条について相当思い入れがある人もいらっしゃると思いますし、篤い信仰を持っていらっしゃる方には第20条かもしれません。芸術家にとっては表現の自由を定めた第21条かもしれません。(教師として、ほぼ何も知らない状態の生徒に一番大切だと思う条文を選ばせたらどの条文を選ぶんだろうかと空想を膨らませています。憲法を学ぶ前にそのようなワークをやってみてもいいかもしれないですね!)

ただ、やはり公民という科目を教えるにあたっては、憲法第13条が一番大切であるように思いますし、私自身も勉強する中でその根拠は納得のできるものと感じています。

第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法13条の一番大切なところは個人として尊重されるという部分につきます。いや、当たり前じゃんということだからこそ大切なんです。

前回でも触れましたが、条文が書かれている背景には必ずと言っていいほど、その悲しい過去と克服の歴史があります。

歴史上幾度となく権力者のもとに、その人権を侵害されてきました。その際たるものが戦争です。そこでは国民は個人として尊重されることなく徴兵され戦地に向かうこととなったのでした。

人は誰一人として同じではなくて、一人ひとりが違った存在であることを認め合うことが全ての人権のスタートなのです。わたしにも権利があり、あなたにも権利があり、それを認め合うことで私たちは人間らしい生き方ができます。それぞれが、自分の好きなように、その人に合った、その人が望むような生き方が出来ることが、人間らしい生き方として必要なのです。

そのような意味で、この第13条の個人の尊重が一番大切だと考えられているのです。

そして、この個人としての権利を憲法11条で保障しています。

第十一条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
(補足:享有...生まれながらに身につけ持っていること。)

戦後日本を統治したGHQも、日本の封建制の解体とともに民主的な国家にするために、基本的人権の尊重と臣民ではなく個人として尊重することを日本政府に強く求めました。

基本的人権とは簡単に言うと人間らしく生きる権利です。こうした権利が一人ひとりにあるとわかりますね。こうした権利が広く認められる社会になったのは、人類史の中でもほんとうに最近なんですね。しかも、大事なのはこの権利はいともたやすく奪われてしまう危険性があります。

第12条では、国民の不断の努力によって守らなければならないことが書かれています。

第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

また、第13条に戻りますが、後半部分の

第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

について、第14条~第30条に規定されず、憲法制定後の社会変遷の中で「新しい人権」として保護されるべきだとされるようになったことについては、この第13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」の部分を根拠に認められることがあり、近年注目されています。(新しい人権についてはまた別の回で)

ただし、その権利は「公共の福祉に反しない限り」と定められています。第12条にも公共の福祉という言葉が書かれていますね。
さて、次回はこの公共の福祉について考えてみたいと思います。
こいつがすごい厄介なんですよね......(と自分は感じています。)

それでは、皆さんにとって一番大切な条文・好きな条文を見つけてみてください!

(現在は憲法や人権の分野を担当しているため必然的にここらへんの投稿が多くなりますね。コロナ×人権について書こうと思うのですが、緊急事態宣言などでまた大きく状況が変わりそうなので、いったん様子をみたいと思います。今回のnoteは単なる条文の説明みたいになってしまいましたね......)

まだ駆け出し者の文章を読んでくださり本当にありがとうございます!