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【2024年創作大賞感想文】1作で2度楽しめる~たおたおさん著「新米メイドは男装令嬢のお気に入り」~

たおたおさん著「新米メイドは男装令嬢のお気に入り」を拝読しました!
読者を楽しませようという工夫が感じられ、とても勉強になりました。

勝手ながら、魅力的に感じた部分を3点あげて感想文とさせていただきます!


①世界観の描き方

ランズベリー領は周りを山々に囲まれた盆地で、隣の領地に続く山や谷それに森には野生動物や魔物も多いことから、王国内では『辺境』や『陸の孤島』なんて呼ばれているらしい。それでも領民たちはのびのび生活を送っていて、農作物や果物は美味しいし何より人々が優しい。

たおたおさん著:新米メイドは男装令嬢のお気に入り

架空の世界を描くにあたって、その世界観や社会背景の構想が重要になってくると思います。
しかし、序盤で設定を長々と書いてしまっては、読者が飽きてしまう。

そんななか、本作では世界観を地の文章のみで説明するのではなく
うまく登場人物のセリフに取り入れることで、ストーリーを進めながら世界観を繰り広げています。

読み進めるうちに作品の世界が頭の中に広がり、そのうえで登場人物のやり取りを楽しむことができました。

②キャラクターの多面性

本作では、主人公目線と第3者目線が交互に取り入れられています。

そのため、主人公の主観と、第3者から見た時の客観的な見られ方のギャップにキャラクターの多面性とその面白さが感じられました。

1話までは主人公の一人称で主人公の両親と兄弟との関係性などが語られ、家族思いの女の子という印象です。

ところが、2話目から父親目線で主人公が語られると、少しずつ違和感が生まれていきます。

「お前もあいつのことは良く知っているだろう。魔物や山賊を怖がると思うか? 野宿だって平気なんだぞ」
「まあ……お嬢なら可能か」

たおたおさん著:新米メイドは男装令嬢のお気に入り

その後も、主人公目線と第3者目線の話が繰り広げられ、
主人公の語りからは分らない、第3者から語られたときの意外性が際立っています。

周りの人との関係性が変化していくにつれて、
だんだんその意外性が当然のように受け入れられていく流れも楽しめました。

③フリが効いている

本作では、この後の展開が予想できるようなフリがちりばめられています。
そのオチまでが完璧でした。

特に、主人公の事をいじめるメイドと、それをものともしない主人公の会話は読者の期待どおりの流れで、最高です。

今までここに押し込んだ新人は大体初日で私たちに泣き付いてきて、それ以降は私たちの言いなりよ。フフフ、明日が楽しみね。

たおたおさん著:新米メイドは男装令嬢のお気に入り

なんだろう、この敗北感は。私たちの様子を王宮内で見かけたらしい他のメイドには、『諦めなよ。ありゃ無理だわ』と声をかけられる始末。

たおたおさん著:新米メイドは男装令嬢のお気に入り

このような読者の予想通りな展開と、
一方で読者の予想を裏切る展開の使い分けがうまく、
とても勉強になりました!


ここまで、3点を取り上げて感想を書かせていただきましたが
本作の一番の見どころは、主人公の魅力でしょう。

裏表なく自分のままで生きているマリオン。
その魅力に、周りが陥落していく様子は読んでいて気持ちが良いです。

物語を読み進めていく中で次々と明かされる主人公の真実。
それを知った後で、最初からもう一度読み直したくなる1作で2度楽しめる作品でした!


今後もフォロワーの皆様の作品に稚拙ながら感想文を書かせていただきたいと思っています!
皆様の作品から、たくさん学ばせていただければ幸いです!
(勝手に感想文を書かせていただいておりますため、もし意に反すると感じられた場合には投稿を削除しますので、お知らせください)

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