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映画と本のこと

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2016年8月の記事一覧

満州国演義

満州国演義

 直木賞作家の船戸与一は、71歳で亡くなった。
 胸腺癌だった。
 癌が見つかったときに、医者から、余命1年と言われたのだそうだ。
 その宣告を受けて、船戸与一が何をやり始めたかというと、本当に書きたかった小説の執筆だった。
 それが『満州国演義』である。
 最終的に『満州国演義』は、四百字詰め原稿用紙で7500枚の大長編となったが、これだけの仕事を、闘病生活の中で成し遂げたのだ。
 命を使い切っ

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辞書になった男 ケンボー先生と山田先生

辞書になった男 ケンボー先生と山田先生

 少し考えれば、すぐにわかりそうなものなのだが、いままでずっと気付かなかった。
 現在、日本で一番売れている国語辞典である、新明解国語辞典の名前のことだ。
 新明解国語辞典が世に出る前に、明解国語辞典というものがあって、その新装版だから、「新」がついているのだ。
 本書「辞書になった男 ケンボー先生と山田先生」を読んで、初めてそのことを知り、自分の鈍感さに対して、なんともやるせない気がした。
 そ

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