DVシェルター

流れゆく景色を呆然と見つめながら私達が
乗る車は、札幌のとある区のDVシェルターに
到着しました。

外の玄関は高い鉄格子で施錠され、周りは
ブロック塀で囲まれ、逃げ出す事も侵入する
事も出来そうにない様子の防壁。
建物自体はシンプルな白い箱の様で、逆に
それが妙な怖さを物語っています。

警察官二人を先頭に、大きな荷物を持った
私達は逃げ込むようにシェルターに入っていきました。

着いてすぐ、警察官と母親でDVシェルターの
館長と話をし、ここで警察官の方達とは別れました。

「大変だったねぇ、よくここまで頑張ったね」

深い皺が刻まれた温厚そうな館長は、
疲れきってヘロヘロな私達に穏やかな声で
癒すように思い慰めてくれましたが、
私は卑屈なので
お前に私達の何が分かるんだ。鼻につく奴だなと腹立たしく感じたのを覚えています。

ひとしきり今日までに至った経緯などを話した後は、施設の中を案内しながら説明を
してくれましたが、精神的な疲労がピーク
だったので私は殆ど覚えてません。

ただ廊下は広く、外観から見るよりは中は
比較的綺麗で、廊下に点るオレンジ色の電気が
温もりを感じさせる様にしているんだなとか、
どうでいい事ばかり考え、とにかく早く眠りにつきたかったです。

そして最後に私達が寝泊まりをする部屋に案内されました。

10畳ほどの畳のひと部屋で、パッと目に付いた
生活雑貨は使い古された木目のテーブル位で、
襖を開けるとこれまた古めかしい布団が3つ
ありました。
ティッシュはボックスではなく、ビニールに
畳まれておりゴワゴワした感触で配給制だそう。

そして何より驚いたのは、
窓に鉄格子があった事です。

恐らく、自殺防止の為でしょうか。
ここがDVシェルターだという事を
思い知らされる様な感じでした。

館長との話が終わると、私達は自室のドアを
閉めて荷物をドサッと置いて、緊張の糸が
途切れてその場にへたりと座り込みました。

気づけば外はもう真っ暗。
あまりに事が早く進み、めまぐるしく休む暇もなく活動をしたので途方に暮れ、疲れがどっと出て暫くは動けませんでした。

その日は、ここに来るまでにコンビニで購入
したお弁当を食べてから、就寝準備をしてすぐ
布団を敷いて横になりましたが精神的ストレス
と慣れない場所での睡眠という事で中々
寝付けなかったのを覚えています。