見出し画像

🦊 とんかつ うえはら

溜池山王駅から歩いて3分のビルの地下に
その店はある。

とんかつ うえはら。
昭和のにおいをそのまま残した雰囲気ありすぎる店構え。

ビルの地下がミニ商店街になっていて、どの店も年季が入っていた。そのほとんどのシャッターが降りていた。

中に入ると、店内は10〜15名くらいが座れるように席が用意されていた。
客はおらず、70代〜80代くらいの男性が、ひとりいた。
「はい、いらっしゃい、壁のこれメニューね、席はどこでもいいよ、テレビ、見えるところ座りなよ」


僕はテレビが見える席に座った。
メニューは、とんかつ定食800円、ひれかつ定食950円など。安い。信じられん。
コーヒー1杯の値段と変わらんじゃないか。
「ひれかつでお願いします」

店主の男性、というかおじいさんは、僕が店に入ってから出るまでの間、ずっと僕に話しかけてきた。

「お兄さんくらいだと、年齢なんてあんまり気にしないでしょ。僕なんてあと10年あるかないかって、残りの年、数えちゃうからね」

「僕がお兄さんくらいの頃は女の子のことばかりだったよ。今は色々娯楽があるから、デートとか面倒くさいってテレビでやってたけど、あれ本当なの?」

(選挙のテレビを見て)
「当選前まではオイシイことばっかり言ってるんだよなこれはさ〜まったく」

お話ししている間に出来上がり、出たきた定食がまぁ美味しそうなこと。

これで950円、、
「おまけでつけてるアジフライが美味しいってみんな言ってくれるよ」

食べている間もずっと話しかけてくれた。
その中で、おじいさんがあと1年と少しでこの店を辞めるつもりということを話してくれた。

ビルが老朽化しているので、建て替えるのだという。そのタイミングで辞めるのだとか。

新しくしたビルに店を出さないんですか?と聞くと
「いやぁもう、いままでたくさん働いてきたからね。
残りは、美味しいもの食べて、温泉に浸かって、死ぬよ」と、笑いながら答えてくれた。

食べ終えて店を出る時には
「家は遠いの?気をつけて帰ってらっしゃい」
と言ってくれた。

祖父が高校生のとき、祖母が今年他界した僕に、また近しい存在を感じさせてくれる、良い時間だった。

kou

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?