【再考】神様が不在になり残ったもの
まず前提として、私は宗教や信仰を否定ていません。
私自身は無宗教ですが、無信仰かと問われればそうではありません。
先に逝った家族が中心にあると思っています。
特に祖母に関しては大きいと思います。
ただし、今回のテーマはそれではありません。
10年以上お仏壇を必要とするお客様のお相手をし、お仏壇を作ってきた私だからこそ言える最近の傾向をこの機会に考察したいと思っています。
当社は現状、地元でお仏壇を求める人の終着駅のようになっています。
どういうことかと言うと「大手販売店に行ったけど納得いかない」ということです。
その理由は「予算が合わない」「派手すぎる」「余計なものがついてくる」「いかにもな雰囲気で入りづらい」等々様々。
一昔前まではお仏壇と言えば宗派により、そして地域により「コレ」というものが決まっていました。
売る側も買う側も何も考える必要が無かったんです。
売る側にとっては在庫をストックできるので営業しやすいメリットはありますが、買う側にとっては私のポリシーに反する動機があります。
それは、家族が亡くなって判断力が低下している相手に対して「これはこういう物です」「この中から選んでください」と詰める商法。
これ、合法と見せかけた押し売りだと思いませんか?
多様性がなく単純化しているからこそ出来る手法ですので、私は逆をやりたいと思いました。
時間をかけてお客様の本音を聞きながらご提案をするという方法です。
「お寺様が49日までにって言うんです。」「早く仏壇を作ってあげたいんです。」
ちょっと待って。と言います。
なんなら寺には私から言いますし、急いで後悔しても亡くなった家族は喜ばないでしょう。
縛られる必要が無い理由にとらわれて判断を誤ってほしくない。
それが私の考えです。
たぶん多くの人にとっては一生に一度のお買い物。
家具を買うのとは意味合いが違います。
さて、ここまでを踏まえて最近ご来店するお客様の傾向があります。
それは「神様より家族が大切」ということ。
これは実は、私は昔からそうだったはずと思っています。
だけれど仕方なかったんです。
創業70年以上になる当社は第二次世界大戦後に創業しました。
今でもお客様のお宅に伺うと兵隊の姿をした遺影を多く見かけます。
圧力で大切な家族を戦場に向かわせる心境は私の想像を超えるでしょう。
神頼みしかないんです。
どうか無事に帰ってきてほしい。
上に言われるがままの運ゲー。最弱の立場ですからね。
戦後は戦死した家族の恩恵があって豊かな暮らしができるようになり、自分たちが新しい家を作る際に高価な仏壇を購入することがせめてもの恩返しになります。
高度経済成長も相まって家がどんどん建ち、仏壇バブルが起きます。
そしてその後、私のように戦争を身近に体験していない世代が生まれます。
その人たちが今お仏壇を必要とする場合、何を求めるでしょうか。
どうしても宗教心は弱くなります。
だって、今の自分たちがあるのは形の無い神様のお陰ではなくて、幼いころ優しくしてくれたじいちゃんばあちゃんのお陰なのだから。
ここで重要なのは「仏壇なんていらない」とはならないのです。
その慣習は残るというのがとても大切。
つまりは、形なんて何でも良いんです。
おリンなんて本来お経を読むための打楽器ですからね。
今、どれだけの人がお経を読むために求めるでしょうか。
形に大した意味は無いということです。
残された自分たちが感謝の気持ちを込めて先祖を思える場所やきっかけ、何らかの形がほしいと願った結果、記憶にあるおリンを鳴らしてお仏壇に手を合わせるという行為が残るんです。
行為は残っても、心は神ではなく知っている家族に向きます。
これは当時と比較したら「神が不在になった」ということに近いと思います。
これまでの常識だったメッキが剥がれアップデートされた状態ですね。
そもそも常識というのはそういうものです。
とらわれすぎて良いことなんてありません。
そのアプデの頻度が昨今高くなっているだけです。
情報のインプットが激しいのが大きな理由だと思っています。
締めに入りますね。
皆がスマホ片手に日常を過ごすオープンな時代になっても残っているもの。
それは「ありがとう」の気持ちです。
これは、私自身の体験も含め業界のトレンドだと思います。
だけれど、まだ新しいベースができていないのが現状です。
多様性というのは大手企業にとっては手間でしかありませんね。
同じものを大量生産することで安定して高利益を出すのが大手の理想ですが、皆の求めるものが違うので中小零細の方がまっとうな仕事に手軽にチャレンジできるチャンスはあると思います。
なんだかよく「感謝」っていう言葉を都合よく軽々しく使ったり理念にしたりしている企業って多くないですか?
当社の理念も「木のものづくりを通じて感謝の思いをつなぐ」が企業理念ですが、これはイメージアップのための言葉ではなくて本音でしかないんですよ。
誰かのために頑張れるってとても有意義ですよね。
「めんどくさい」とか言いながらも結果「ありがとう」って言われたら多くの人がやって良かったと思いませんか?
これ、商売の核だと信じています。
誰かに言われたわけではなく、実体験から得た本心なのでなんの迷いもありません。
一見相反する出産祝いの商品も、お仏壇をはじめ祈りに関する商品も同じ理念の元で作っています。
最も簡単で最も重要な「命にありがとう」という気持ちが残ったことは個人的には嬉しいです。
それで言うと神様は不在になっていません。
神様は身近にいるという結論になりますかね。
ここまで綴っておいて一概には言えないと思っていますよ。
宗教を否定なんて全くしていません。
信仰は必要だと思っています。
形は様々ですが、私は仕事を通じてそれぞれのご要望に可能な範囲で応えていきたいと行きたいと思っています。
できないことが多く不器用なんですがね。
それでも選んで頂けるのならお手伝いさせていただきますよ。
広告みたいになっちゃった。
広告ではないです。
必要としてくれる人に必要とされることしか望んでいません。
それでは今日はここまで。
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