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ロード・オブ・ヘブン

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イヴァンが国境警備隊として初めて配属された場所は国道326号線国境検閲所。通称ロード・オブ・ヘブンと呼ばれる場所だった。初任地・所任務・初夜勤。最悪尽くしのこの日に紹介されたイヴ…
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2020年3月の記事一覧

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04 魔の手はそっと忍び寄る  信じられない! 信じられない! 信じたくない!  エーレがゲイだったなんて!  アホでも猫馬鹿でも、それでも出来る時は出来る男だと、頼りになる上官だと見直したばかりなのに!  ひどく裏切られた気持ちだった。嫌悪感もあったけれど、それ以上に信頼を裏切られた気持ちが勝っていた。  仮にゲイだったとしても。  こんな一方的なやり方をするような男だと思わなかった。さりげなく気配りし、それとなく隊員をフォローするような男だと思っていた。そこに尊敬を見出

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03 魔の手はそっと忍び寄る  結局エーレはコミュニケーションルームにはいなかったが、他の隊員がリーヴィと遊びたがっていたのでそこで解放し、イヴァンは食堂へ向かった。日勤の隊員たちが引けたあとなので、いつもよりも空いている。  一週間たっても、おいしいとは言えないが食えないよりかはマシという程度の朝食は、珍しくサラダがあった。生鮮食品はこのロード・オブ・ヘブンでは貴重な食材だ。週に一度、買い出し班が下山して食糧を調達することもあれば、本部からヘリコプターの空輸で運ばれること

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02 魔の手はそっと忍び寄る  今日はイヴァンたち第八小隊の中の第一分隊が非番となっている。他の分隊は通常任務についているが、夜勤明けの分隊の姿も確認できるため、施設内はそう閑散としたものではなく、遠くから笑い声などが聞こえていた。  ふと前方から同じ分隊のアードルフ・クラナッハが歩いてきた。イヴァンに気付くと片手をあげた。 「やぁ、イヴァン君。小隊長の彼女をナンパしていいの?」  ニヤリと笑ってイヴァンをからかった。エーレの飼っている黒猫への認知度は、すでにそれで知れ渡っ