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Road to the Sky

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レッドスピネル空軍基地へ転属になったオリアーナ・オトウェイ大尉。しかも配属はカイアナイト空軍で「デスサーカス」と呼ばれるカイザー・オロフ・エルセン中佐率いる第一飛行戦隊だった。デ… もっと読む
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2021年1月の記事一覧

08 ナイト・サーカス

「よう! サイレント。そっちの子、今度うちに来る子だろ? さっきレッドファングに聞いたぜ。栗色の髪にブルーアイのかわい子ちゃんだって! 聞いた通り、かわいいね! 俺は、同じ第一飛行隊のライモンド・モハーニ大尉。タックネームはベル。よろしくな、かわい子ちゃん。んで、名前は? タックネームは? 彼氏いるの?」  矢継ぎ早に繰り出してくるベルことモハーニ大尉に、一瞬面食らう。ベルというタックネームの由来は、聞かずとも察してしまった。  ヨアヒム程ではないが背が高く、赤毛にスモークブ

07 ナイト・サーカス

 基地の主要施設の案内は、その後も続いたが、途中で頼りにしていたハーマンがいなくなったために、ヨアヒムと二人きりになった。  物静かすぎる相手が苦手なオリアーナだったが、それでも「男性至上主義者」よりましかと思い直す。  軍隊の中には偏った思考の人間など腐るほどいる。中でも軍人など女が務まるものではない、後方の支援にのみ徹していろという偏った考え方の人間も多い。  そうしたタイプは女性蔑視とも取れる言動を平気でとれる。そしてそうした視野の狭いタイプは早々に自滅する。最もパート

06 ナイト・サーカス

 微妙な気持ちで手のひらの飴を見つめていると、ヨアヒムもハーマンもすでに口の中に転がしている。一人だけ食べないのも、かえって子供っぽい意地を張っているように見られる気がして、オリアーナは飴を口に放り込んだ。  爽やかな柑橘系の味だった。 「ところでフィッシャーマン。団長のタックネームが思い出せないんだけど、なんだったか覚えてる?」  ハーマンは年上だろうとなんだろうと、あまり気を使わないらしい。階級が少佐であっても自分のペースで話しているが、バリー少佐は怒るどころか普通にして