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文化観光 高付加価値化の実践事例をご紹介する事例集note始めます

この事例集で伝えたい事

初めまして。令和3年度 文化資源の高付加価値化促進事業におけるコーチング施策の統括担当の永谷です。

今年度、自身もこの事業におき、全国津々浦々、有形・無形文化財合わせて30か所ほどの視察を行い日本の文化財の危機的状況を目の当たりにしました。
経営難で改修できない、維持できない文化財や、祭りや花火大会のような無形文化財も収支が見込めずどんどん無くなりつつあるところにコロナが拍車をかけています。

これらを背景に「今」、文化財をはじめとする文化資源を高付加価値化し、理解あるマネタイズと継承を図ることが必要不可欠です。しかし、文化財の活用において日本はまだまだ積極性が乏しく、ましてや高付加価値化事例については少ないのも現状です。

このnoteでは、文化観光という文化の理解を深める観光とはどのようなものなのか、かつ、どのように文化財を活用すれば高付加価値化が実現できるのかを担当のコーチの目線でわかりやすく各事業の事例を用いて説明していきます。
タイトルのキーワードである文化観光についても、次回、詳しく紹介しますので、そちらもご一読を。

コーチング施策について

まず、この文化庁の本事業のコーチング施策とはなんなのか?について紹介しますね。

文化財の高付加価値化においては、未だ成功事例が少ないことを背景に各事業をより効果が高く、かつ、継続性の高い事業とするために、本事業で派遣されたコーチによる伴走支援を行いました。

本事業におけるコーチングの定義は、「コンテンツ・クリエイティブ・プロモーションなどの各分野のプロフェッショナルが事業の自走、継続および拡大を目指し、事業体制、計画、制作、実施等について改善指導等を行うこと」。

事業期間内に、一度だけ現地訪問して助言するといった従来型の専門家派遣とは違い、本事業では、コーチが各事業に伴走する形式を取っています。
そのため、本質的な課題をコーチと事業者が共有し、その解決に向けて熟考します。その結果事業成果の向上はもとより、地域全体の課題解決につながる実績も多く見られました!

コーチは各事業の課題に合わせ、新規マネタイズ案、コンテンツの磨き上げ、イベント演出、SNS活用プロモーション、ホームページ改修、各種デザイン監修、人材育成に至るまで幅広い領域のアドバイスに対応しています。
このnoteでは、各カテゴリーにおける様々な事例を紹介します。
今後、文化財においてさらなるブランディングやマネタイズを検討される方々のナレッジと、「文化財活用って、このように実践するのか!」という理解を深めるものとなると思っております。

コーチング施策のサイクルについてどのような仕組みで、この施策を好循環するかは下記の図を参照ください。
地域の文化の担い手 の想いをくみ、①企画に仕立て、②文化資源へ還元されるまでの設計をし、継続して事業が行われるように③事業性 ④実行力 を確保するといった、各進行段階に応じたPDCAサイクルを行なっています。

図1

文化財における避けられない課題

そもそも私自身はマーケティング領域の人間なのですが、「文化を継承しなくては!!」という文化庁の掲げる理念と現状に大きな乖離があると思っています。
多数見受けられた課題をいくつかご紹介しますので、「これは当てはまる!」と思われた文化財保有者及び活用事業者の方々にとってこのnoteは必見です。

1.拝観料、入館料、入場料の設定が低すぎる
神社・仏閣・美術館など、文化財は自治体の管理になっており、近隣住民が活用しやすいよう低価格にて条例設定されている。自治体が定めた条例なので、行政指導がありません。また、無形文化財は花火・祭り・お神楽など無料観覧のみのものがほとんど。
何ヘクタールもの広大な庭園が入場料200円、大理石の美術館が入場料300円など、どこを見ても驚くほどの低価格設定です。
一方で、自治体の予算は、防災、移住、コロナなどの新たな課題対応の影響を受け、文化財対応予算は年々減額されているところもあり、文化財自体を活用して「稼ぐ」方法を見出すことが必須となっています。地域住民と外部の訪問者との入場料を分けるなどの施策が急務だと思われます。

2.文化財が何なのかを説明できていない
文化財そのものの説明が、文化財設置のパンフレットにしか掲載されていない事例が多数見受けられました。
公式ホームページに記載があっても掲載箇所が分かりづらく、その文化財が何なのか、を訪問者が理解せずに訪れ、そのまま理解せずに帰るパターンは多いです。検索しても説明が探せない問題は深刻。音声ガイド、VRより先にまずは公式HPの改善が必要です。

3.文化財、ユニークベニュー等の良質な活用においての人材不足
神社・仏閣、美術館などのアイドルタイムである夕方以降を活用した、ライトアップや食事などのイベントを良質かつ継続性高く運用できるノウハウや事業者の不足が全国的な課題です。史跡を活用したコンテンツ造成もしかり。文化財の高付加価値化は旅行商品とは違います。地域(地元)での人材発掘と育成が必要なのはもちろんですが、そのためにも初回は外部ディレクターの活用も有効です。
何はともあれ、継続を見据えた、運営、収支計画を。

これらの課題は文化財が抱える課題の一部ではありますが、多くの文化財に共通して見受けられたものです。

着手しないと始まらない

まだまだ、「とにかく触らないでおこう」という保存の概念が強いですが、前段でもお話した通り、このままでは文化財を維持できないのが現状です。
これから、それぞれのコーチが紹介する事例のもと、管理者の方、自治体、DMOの方々、ぜひ、少しずつで良いので文化財の活用をチャレンジしてください。

文化資源の高付加価値化は、安価に大量ということでは決してありません。
文化観光という理念に基き、文化財の価値を理解してもらい、継承へつなげるために維持して行くことです。それにはコストもかかります。寄付やクラウドファンディングのほか、訪れる人々のニーズを捉え、その価値を損なわない活用方法が必ずあるはずです。
保存だけでなく活用しながら維持する糸口をこれらの事例からぜひ見出していただければ幸いです。

まずは、文化観光についての理解を深めてもらうべく、次回は文化庁の丸岡氏より文化観光についてをご説明します!


永谷note

永谷亜矢子
株式会社an 代表取締役
立教大学 経営学部 客員教授
大学卒業後、リクルート、東京ガールズコレクション、吉本興業にて企画、編集、メディアやイベントのプロデュース、企業の代表を務めた経験を活かし、anでは企業や自治体のマーケティングやPRのコンサルティング、様々な事業プロデュースを担う。令和3年度の観光庁/文化庁の事業においてコーチング統括業務を行なっている。

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