グランメゾン東京の楽しみ方。7
今回はミシュランを取るために料理人が様々なものを犠牲にしている。という話の展開でした。これは本当にその通りで、料理を突き詰め、サービスをよくしようと思うとどうやっても時間が足りません。
寝る間も惜しんで、とは言ったものですが、それを地でいくのが料理人という生き物です。それ自体が良いかどうかという議論ではなく、それほどまでに料理に打ち込めていることを知って欲しいです。
彼らはやりたくて自らその環境に身をおいているのです。(のはず)
何故そこまで突き詰めるのか?
これは2014年のカンテサンス岸田シェフのインタビューですが
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「オリジナリティや驚きを求めるあまり、おいしさの追求がおろそかになっているのではないか?」
そうなった理由としてよく「おいしいのは当たり前だから」と言われるけれど、岸田さんにその発想はない。
「アスリートがコンマ何秒の速さを競うように、コンマ何ポイントのおいしさを追求していくのが職人でしょう?」
岸田さんはアスリートでありたいのだ。その先に初めてお客様の満足が生まれると思うから。
新しい料理のひらめきは、いつも素材がもたらし、調理場で形になる。「触って、切って、火を入れて。その中からしか生まれない」。一方で、ラルースやエスコフィエにも立ち返る。「偉人たちが考え抜いた知恵を使わない手はないですよね」。
百年経っても古くならない、歴史に埋もれない料理が目標だ。
「驚きが失われた時に真価が見える。僕が目指すのは真価です」
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僕はこのインタビューを見て感銘を受けました。
昨今色々なテクニックや表現方法で料理はエンターテイメントだと言われます。僕はそれに心底疑問を持っており、見た目や変化球のようなテクニックは一度体験すると二度目からは感動が生まれにくい。
それが感動要因になったとしてもそこには必ず美味しさがあるはずで、この順番が逆になることはないと思っている。(個人的な意見です)
歴史の中で残って来ている料理は見た目の煌びやかさや驚きではなく、理にかなった機能美に近い美味しさや本質があると思っている。
だからこそこの岸田シェフのインタビューを見たときに心が震えました。
そしてシェフとしてやるからには自分自身もアスリートのように突き詰めようと考えた。ただ僕の中では突き詰めることと追い込むことはイコールではなく、いまの時代にあった働き方や仕事の効率化があると考えていたので、なるべく合理的な料理の作り方をしていました。(属人化しないようにとか。岸田シェフもあれだけ多くの後進を育成しているので、かなり効率化された仕事をしているのでは?と思います)
価値観と方向性の違い
とはいえ多様性がなければ業界は発展しません。エルブリが現れ、業界にインパクトを与えたことや、nomaが現れたことで、確実に業界が進化しました。
inuaも同じです。
温度湿度を管理する管理庫や発酵を駆使することで生み出す新しい味。今まで見たことの無いようなテクニックで生み出す味は新しい境地を見せてくれます。
これに関してはどちらが良いではなく、自分の目指す方向性はどこなのか?という価値観の問題です。
今までの価値観にないものに触れた時に新しい可能性を発見するのか、簡単に否定してしまうのかでその後も変わるので、なるべく多様な価値観をフラットに見れようになると良いな、と自分自身考えています。
個人的にはやはり岸田シェフの考え方に近く、普遍的な食の真価を突き詰めていきたいと思っています。
その想いの根元には母の料理があるからです。
非日常の場と母の料理は比較する対象では無いかもしれません。でも僕は、美味しさの原点は母にあると思っています。これは世界共通なのでは無いでしょうか?
リオレ(riz au lait)もそうでした。
一流の料理人が作る素晴らしい料理も母の愛の前には勝てなかった。これはかなりノスタルジーのなせる技ですが、僕はここに本質を感じます。
誰のための何のための料理なのか?毎日仕事をしているとそんな当たり前のことが見えなくなってしまいがちですが、ここを意識することがとても大切なのでは無いでしょうか?
リオレは日本米ではなく、粘りの少ないお米で作るのが美味しく仕上がる秘訣で、レモンやラズベリーなどで酸味を足すと日本人でも食べやすいかなと。僕は結構好きです。おはぎの生クリーム版みたいなイメージですかね???
料理人な働き方はどうなるのか?
料理だけでなく、働き方にも多様性が求められる中、料理人は一体どうなっていくのでしょうか?僕の肌感覚では、今までの働き方ではレストランの運営が難しくなるお店が増えるのでは無いか?と思います。
それは若い人が料理人になりたいと思わなくなって来ているのでは?という部分や、働き方自体が時代にあってない部分など色々あると思います。
これはレストランが難しい部分ももちろんありますが、それ以上に時代の問題だと思います。だからこそ、レストランも料理人も新しい仕組みを考える必要があるのでは無いか?と感じます。
僕はレストランをいつでも辞めれる状態を作る。事を目標に掲げています。
違和感を感じるかもしれませんが、レストランとは生き物なので作ったからには走り続けるしかありません。シェフはレストランだけで生計を立てている人が多いので必然的にそうなります。
でも身体を壊したらどうするのでしょうか?災害でお店がなくなったら?
自分ではコントロールできない何かが起きた時に、保険がなければいきて行けません。
そして本当の意味で自分の作りたいものを料理で表現したいならば、様々な制約をなくす必要があるとも感じました。
だからこそ、多くの事を考えなければいけないし、料理以上に世の中の事を学ぶ必要があると考えています。
このドラマが最後どんな結末を迎えるかは分かりませんが、より多くの人に感動と学びを与えてくれると思っています。
来週も楽しみですね。。。
皆様の優しさに救われてます泣