今飲食店が取るべき対応策とは。

急激な環境の変化で、飲食店は危機にさらされています。今までの当たり前が急に消え、無理やり戦い方の変化を余儀なくされる。きっと多くのお店がこの変化の渦の中でできることを考えていると思います。

僕は2年前様々なリスクを自分なりに洗い出した中で、今の働き方を考えました。今の僕がレストランをやっていたとしたらどんなアクションを取るか。ここで真剣に考えてみます。そしてこの考えが、今のレストランや飲食店の人に参考になればと思います。




人の動きが止まるなら物を動かすしかない


大前提としてレストランやリアルな場所は人が存在しないと始まりません。今回の頃の様に人の動きが止まる場合は壊滅的です。この場合できることは物を動かすことになります。

このとき考えられるのは、フードデリバリーもしくはECによる食べ物の販売です。どちらも許可が必要のなので、アクションの起こし方が変わりますが、それぞれのメリットデメリットを洗い出すことから始めましょう。


先ずはデリバリーフード。これはウーバーイーツなどを使う場合です。

ウーバーイーツの場合は手数料が35%かかります。利益率の低い飲食店からするととんでもない額ですが、原価管理をしっかりすれば利益を残すことは可能です。ただ人件費とのバランスが必要なので、今すでに多くの人材を抱えているお店はバランスを取りにくいかもしれません。他にも出前館等がありますが、ここではウーバーイーツだけで話を進めます。

手数料35%をどう乗り越えるのか?この場合は単純に単価を上げるしかありません。通常1200円で販売するものでも1800円にしなければ数字が合わない。これは結構大変なことです。

一回の食事にかける金額が600円増えるのは普通のことではありません。そして普段からウーバーイーツを利用している人にどの様に知ってもらうかも考えなければいけません。

普段SNSで定期的に発信をしていて、ファンがいればある程度どうにかなるかもしれません。でもウーバーイーツで届けられるのはせめて30分以内の商圏だけでしょう。東京から鹿児島へは届けられません。

販売対象が限りなく絞られるのが現状です。





調理効率は考えられているのか?


普段お客様がお店に来る場合は営業時間の概念で料理をすればいいのですが、デリバリーでは考え方が変わります。

店の様にキャパシティーが決まっていないので、ランチタイムにどれだけ多くの料理を捌けるか?という概念のもとで料理をしなければいけません。この時間を逃すと機会損失になり売り上げが伸ばせない。

もちろん時間がずれてもお客様は購入しますが、ゴールデンタイムは確実に存在する。そしてここを逃すとロスが出る確率も格段に上がります。そしてなにより美味しさの劣化という概念が存在する。

基本的に料理は作り終わった瞬間から劣化します。その事をレストランでは意識する必要がないのですが、デリバリーは絶対にそれが存在します。この事を考えた上でロスを出さずに機会損失もせず高速で料理を回すことは簡単なことではありません。

ウーバーイーツは簡単に手を出せるのですが、数字を作るのは簡単ではないとここに記しておきます。


調理効率だけで言えば1時間でどれだけの量が作れるか?という概念と、それが一体いくらの売り上げになるのか?という考え方が必要になります。

一皿を作るのにトータルでどれくらいの時間がかかるのか?この考え方ができるかどうかがこの先にお話をするECにすごく関わってきます。




ECとデリバリーの違いはなんなのか?



僕はレストランが準備をするならデリバリーよりも圧倒的にECだと思います。これは時間の使い方と概念が違うからです。

デリバリーは先ほどお話した様にゴールデンタイムと商圏の狭さというハードルがあります。絶対に逃せない制約が存在することで、製造効率も販売効率もかなり影響を受ける。労働集約の最たる形です。

ではECはどうでしょうか?

僕は最初の頃にBASEというプラットフォームを使っていました。こちらの手数料は一商品あたり6.6%と40円です。詳しくはこちらで確認してください。


例えば1200円の商品ならば10%が手数料です。これは単価が上がればもう少し下がります。一商品あたり40円なので単価が上がればこの比率が下がるのです。

先ほどのウーバーイーツと比較しても25%違います。この数字をどう考えるかで戦い方が変わってきます。もちろんECなので配送料が別途負担がかかりますし、それをお店側なのかお客様なのかどちらが負担するかでも考え方は変わります。

考え方次第ですが、先ずはECにおける製造効率の話を聞いてください。



1時間あたりの製造効率とは?


考え方は簡単です。1時間でどれだけ多くの商品が作れるか?ということです。仕込みをどれだけ綺麗に回せるかという言い方もできます。

飲食店で働いたことのある人なら分かると思いますが、同じ作業はなるべくまとめて滞りなく進められる方が効率が上がります。

営業時間にオーダーをさばきながら仕込みをしたことがある人はイライラした経験があるのではないでしょうか?基本的には製造と販売を切り分けた方が良いのですが、小さなお店では同時にやることも少なくありません。

そしてオーダーに仕込みを止められると、普段10分で終わることが倍以上の時間かかることもあります。当たり前ですが時間がかかれば状態も変化します。非効率なのはいうまでもありません。

それに商品を販売できる状態にするまでの過程も違います。デリバリーの場合は容器があり、その容器にいかに効率よく短時間で盛り付けできるかが優先されるので、作る商品と盛り付けがある程度固定されます。そして移動に耐えうる状態を目指す必要があるので制限がある。

ECの場合は何を販売するかにもよりますが、瓶や缶、真空パックに入れることが多くなるでしょう。この場合はどの容器に入れるのかとその際に使う機器の占有時間に影響されます。

しかし、営業時間の様に時間に煽られることはほとんどないので、機械の占有時間が少なければそれだけ効率を上げることが可能です。あとはカレーの様にまとめて仕込める商品の場合、そこにかかる人件費もまとめられるので圧倒的に作業効率が良くなります。

営業時間という概念がないことも関わるスタッフの精神的なストレスも減るはずです。これは思いの外大きく、飲食店の場合時間に囚われないということはほぼ不可能なので、この意識を持つことが少ないです。

しかしこの意識を適切に持つことで考え方がかなり変わるので、意識をフラットにした上で考えることがかなり重要です。




かかる工数を明確にする


ECでもデリバリーでも自分が作る商品にどれだけの工数がかかっているかを意識しなければいけません。デリバリーの場合、飲食店で食べれるものがそのまま届く、という概念なので、商品が簡素化されていると印象が良くありません。

そのため彩りや全体のバランスを見てサイドメニュー的なものを作ることが多くなります。こうなると作業工数が増えることになり、結果提供までにかかる時間が長くなってしまいます。

これによってゴールデンタイムを有効に使いにくくなるケースもあるので、特にシェフは効率を意識した商品開発をしなければ利益を残すことが困難になります。

ECの場合は1つの食事というよりは食事の中の一品という概念の方が強いと思うので、全体のバランスよりもその商品力が問われます。

先ほどのカレーであれば見た目などよりも圧倒的に美味しさにプライオリティーがある。(もちろんデザインも重要ですがここでは割愛)

なので商品自体に力を入れることができ、制限も少ないのでシェフの強みが活かしやすいのではないか?と僕は考えます。

更に製造を一回にまとめて大量にすることで数的有利を活かせるので、スタッフが多い店はEC用の商品の制作を考えた方が良い気がします。真空パックの場合チルドか冷凍になるので送料はかかってしまいますが。





自分の強みは何なのか?




ここまで考えてから、デリバリーで1時間に捌ける料理の数と、ECで売るための商品が1時間でどれくらい製造できるのかを天秤にかけます。これは商品選びでかなり差が出るので単純比較はできないのですが、商圏の違いやロスが出るかどうか、商品の劣化があるかどうかなども比較検討して考える必要があります。

この様に自分が何が作りたいのか、何が作れるのか?どこで誰にどの様に販売したいのかを明確にしていくことで、作る商品が決まります。それによってデリバリーに向いているのかECに向いているのかが決まってくる。

自分のファンがレストランの近所の人が多いのか、日本全国が販売対象になり得るのか、自分の強みを可視化して認識することで戦い方が見えてくる。

梱包などもスタッフが多ければ効率的にできる。少なければ瞬発力勝負でデリバリーを選ぶのが良いかもしれない。

自分たちの仕事にどれだけの工数と時間がかかっているのかを知ることがとても重要になってくるので、タイムマネジメントができるかどうかが分かれ道になります。

ただ美味しいものを作るだけで良かった飲食店とは違う考え方や戦い方が必要です。そしてこれらのものを販売するために販売戦略も必要なので簡単ではありません。

飲食店を営業しながら自分のファンをどれだけつけられたのか?どれだけ多くの人に知ってもらえているのか?自分の強みは何なのか?

今回の自体がきっかけで改めて自分のことを客観視して見ることが大切だと思います。

僕は自分の性格や能力からECを選択しましたが、これは人によって答えが違うと思います。どちらも平行に動かせるなら動かすべきだとも思います。

今飲食店は帰路に立たせれています。でもだからこそ出来ることを考えぬき、この状況を乗り越えなければなりません。

誰でも簡単にネットショップは開けるし、登録すればデリバリー販売もできる。だからこそ始める前に自分なりの戦略を考えてみてはいかがだろうか?

もちろん顧客の求めるものが何かも考慮した上で、何を選択するかはあなたの自由です。

今僕が考えていることや意識していることの幾分かはこのnoteでお伝えできたのではないか?と思います。

もし何かあれば連絡してください。すべての人へは対応できませんが、今僕にできることがあるならば相談に乗れるかもしれません。

少しでも多くの料理人がこの非常事態を乗り越えられる様に、そして僕自身も多くのスタッフと会社を守れる様に様々なことを考え、対策し、少しでも早く世の中が安定することを願います。

料理の力は偉大です。だからこそ皆で乗り切りましょう!!!


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新しい料理人の働き方から、個人でどう生きていくか、どう価値を生みだしていくかを色々な視点で書き綴ります。月3~4回ほどの更新なので、定期購読がお勧めです。

曜日や時間、場所に捕らわれずに料理を自由に表現するためにレストランを辞めた料理人の働き方を変えていく奮闘記。 これから増えていくだろう料理…

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