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第1回 高知の水産女子会ミーティングを開催しました

高知の水産女子会ミーティングとは、高知県内の水産業の現場で働く女性たちが集まり、勉強会や意見交換を通して、多様性のある水産業の形を目指すことを目的としたミーティングです。第一回は2024年7月24日、高知城歴史博物館で開催し、8名の参加者とともに実施しました。

高知県水産振興部長濱田さん

まず高知県水産振興部長濱田さんからの挨拶から始まりました。濱田さんは、水産女子会第一回開催にあたり、高齢化が進む高知県水産業の現状と、特に若い世代、特に女性の減少が著しいことを説明しました。担い手不足という深刻な課題を克服するため、水産業の活性化と若い世代、特に女性にとっての魅力的な水産業への転換を強く訴えました。「水産女子会が、県内の水産業活性化の一助となり、女性の参入促進に貢献することを期待している」という言葉が印象的でした。

その後、参加者全員による自己紹介が行われました。自己紹介では、参加者それぞれが、水産業に携わるようになった経緯や、現在の仕事内容、そして高知の水産女子会への期待を語りました。

その後、高知県の現状と取組について、高知県水産振興課課長補佐の井上さんから説明していただきました。高知県では、水産業における担い手不足が深刻化しており、特に若者や女性の減少が目立っているとのことです。この問題に対し、県では、新規就業者向けの研修や、女性向けの水産事業の支援など、様々な取り組みを行っています。

続いて、今回の水産女子会のアドバイザーであるフィッシャーマン・ジャパンの島本さんと安達さんに進行が渡り、勉強会がスタートしました。

まず、日本の水産業の現状について、安達さんから説明がありました。日本の水産業は課題が多く、データからは明るい産業の未来が見えないが、世界では成長産業であることを語り、そこに向かっていくために様々な取り組みが必要であると述べました。今回の女子会はその一旦を担う、重要な取り組みといえることを強調しました。

休憩後、三津大敷株式会社 漁労長の山本幸生さんを講師に迎え、「三津大敷における女性活躍について」と題した講演が行われました。山本さんは、三津大敷株式会社において、長年漁業に従事されているベテラン漁労長です。山本氏は、自身の経験を踏まえ、水産業の現状や担い手不足について具体的に語りました。

山本さんは、これまで雇用に力をいれており、求人のPRをSNSを活用して実施したり、就業フェアに出向いたり、また実際に受け入れるにあたっての住宅の斡旋まで行っていたそうです。また待遇をよくする努力も続けてきています。
初めて女性から働きたいと応募があった際、その受け入れをするために、周りの漁師等を説得する必要があったそうです。地域としても女性が船に乗って仕事をするということに抵抗があり、『女の子が、漁師の仕事ができるわけないだろう』『体力的にもきついし、船の上での生活も大変だ』という声も上がったそうです。しかし応募してくれた女性は、すごくやる気に満ちていて、そのやる気に答えるためにも山本さんはひとりひとり説得し女性の漁師の雇用を、地域で初めて実現させました。
女性が船に乗るためにトイレの整備もし、周りもだんだん女性の実力を認めてきたころ、人間関係の問題で離職に繋がったそうです。
一方、自身の腰痛を言い訳に仕事を休みがちになり、それでも給料・ボーナスを満額受け取っており、それが社内での孤立につながり離職になってしまった男性の事例もありました。

参加者は山本さんの実体験からのお話をとても興味深く聞いていました。長年漁師として働き、後継者不足という問題に直面してきたこと、そして若い世代、特に女性が水産業に就くことをためらう傾向にあったことなど、自身の経験に基づいたお話は、大変印象的でした。

山本さんの講演後、DE&Iのスペシャリストである森田恵子さんを講師に迎え、「女性の活躍・ジェンダーについて」と題した講演が行われました。森田さんは、ジェンダーの概念や、ジェンダーバイアスについて解説しました。ジェンダーとは、社会的に構成された性差であり、生物学的な性とは異なる概念です。ジェンダーバイアスとは、ジェンダーに基づく偏見や差別のことです。

森田さんは、ジェンダーバイアスは、日常生活の様々な場面に存在し、私たち自身の無意識の偏見や差別意識によって生まれていると説明しました。また、ジェンダーバイアスは、女性が社会で活躍することを妨げる大きな要因になっていると指摘しました。ジェンダーバイアスを解消するためには、まずは、自分自身のジェンダーバイアスに気づくことが重要であると訴えました。また、多様性を受け入れ、互いに尊重し合う社会を作っていくことが重要であると訴えました。自分自身の無意識の偏見や差別意識に改めて気づかされるものでした。

その後、参加者は2つのグループに別れて意見交換を行い、会の感想や今感じている課題について話しました。参加者からは、水産業の現状や課題、女性の活躍について、様々な意見が出されました。

・水産業に参画するのであればそれなりの覚悟をしてくるべき。それができなければ漁師としては働けない
・逆に女を使って嫌な仕事をやらない人がいる。そういった人への指導を心がけている
・1年間人を雇うのは難しい、繁忙期にだけ人を雇えたらいい
・1年間安定して仕事を作る工夫をしなくてはいけない
・よいリーダーがいると女性や県外の受け入れに対して、乗組員や地域の考えが変わっていく可能性がある

ジェンダーへの意識よりも、現在の水産業の担い手の確保や、繁忙期閑散期の売り上げの変動などに危機感を持っている印象でした。

最後に、参加者より親睦会の実施の提案がなされ、盛り上がりました。

参加者の立場ーー経営者、リーダー、現場の作業員ーーによって、課題感が変わる部分もありましたが、みなさんどなたも自身の仕事に誇りをもっていらっしゃることが伺えました。

次回は9月ごろに先進地の視察を行い、11月に第二回高知の水産女子会ミーティングを実施する予定です。

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