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秦への大敗という挫折を乗り越え、改革を成功させた趙の初代王様の話【教養を深める中国古典のお便り#17】

皆様、こんにちは!

メンバーシップ向け特典記事の「古典のお便り」17通目になります。

こちらのシリーズでは、普段の記事では取り扱っていない古典・史書から、さまざまな名言をお届けします。

前回は『史記』からお届けしました。

今回は劉向(りゅうきょう)の『戦国策』を取り上げます。

『戦国策』は前漢の劉向によって編纂された全33篇の史書。

戦国時代の始まり(前403年)から始皇帝の天下統一(前221年)までの、約200年間の歴史を扱っています。

西周・東周・秦・斉・楚・趙・魏・韓・燕・宋・衛・中山というように、戦国時代の12個の国々ごとに区分けされているのが特徴です。

史実を淡々と記すのではなく、「遊説家が国王へ献策する」という観点からまとめられているので、リアリティのあるやりとりや例え話などがとても面白い歴史書だと思っています。

今回はそんな『戦国策』から、現実に即した知識と経験が大事なのだ、というお話を見ていきましょう。


『戦国策』趙策に学ぶ

今回取り上げるのは『戦国策』趙策からの言葉。

書を以て御を為す者は、馬の情を尽くさず
(読み:ショをモッてギョをナすモノは、ウマのジョウをツくさず)

『戦国策』趙策

書籍で学んだ知識だけで馬に乗ろうとする人は、馬の気持ちを十分に理解することはできない、という意味。

趙の王様が家臣に対して語った言葉です。

つまり、見聞きした知識だけでは不十分であり、何事も実践してみなければ本当のところは分からない、ということですね。

まずは、この趙の王様のお話から始めていきましょう。


趙国に現れた初めての王と胡服騎射

今回の言葉を語ったのは、趙の武霊王(ぶれいおう)という王様です。

趙を一躍強国に押し上げた名君で、世界史の教科書にもチラッと名前が載っているほどの偉人になります。

武霊王(在位:前325年〜前298年)は、戦国時代の趙国の6代目の君主。

趙で初めて王として即位した人物です。

しかし、そんな武霊王の前に秦が立ちはだかります。

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