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戦略はラインアウトで7割分かる

タイトルで大きく出ましたが、最近僕は本当にこう思っています。
流石に7割かどうかは調査していませんが大体わかります。

ラインアウトからチームの戦略を考える時には相手のナンバーとそこからの3フェイズを見ることが大事です。

この記事ではラインアウトでいかに獲得するかではなく、獲得した後の狙いは何かという点にフォーカスしながら書いていきます。


◇ALL men◇

ALL menラインアウトをチョイスする理由:

・BKに55mの幅でATさせたい
・相手FWのDFスタート位置を1サイドに固定したい

基本的にこの二つですが、敵陣G前で相手のオフサイドラインが10mよりも前になる時と言うのもあります。基本的にゲインラインより後ろで止められる可能性が高く、ナンバーを減らしてモールを組んでも相手の方が早く到達するのでALL以外のメリットが薄いという事になります。

ALL menのメリット:

・中盤であれば1次のBKの大外ATでゲインが見込める。
・相手のフォールディングを妨害できれば順目に数的有利を作れる

一つ目は相手がキック処理に人数を割いているので、数的優位を最初に利用しようというものです。
対して二つ目では2,3次での数的優位を作るものです。
例えば、1次は近場でクラッシュし、BDに参加した選手がしっかりとDFを押し込んで相手のFWが順目に回りにくくなるようにします。その間にATのFWは順目へと回ることができるため2次での数的優位が見込めるます。また、そのフェイズを止められても同じことをすれば3次でも数的優位を作ることが可能です。

他にも、一番後ろでキャッチして後ろピールオフをすればFWを相手のBKに当てることが出来ます。もちろんここでのミスマッチでゲインすることも出来ますが、BKを巻き込んでいるため次のフェイズで順目の数的優位を作ることが出来ます。

ALL menのデメリット:

・参加している人数が多く獲得が難しい

まとめるとALL menはハイリスクハイリターンのオプションであるということです。獲得することは難しいですが、そこさえ超えてしまえば構造を活かした効果的なATをすることが可能だということです。


6men/6+

6menのラインアウトも基本的な考え方はALL menと同じです。ほとんどのFWを1サイドに固めることが出来るという点に変わりはありません。その上での違いをメリットとデメリットを紹介しながら説明します。

6menのメリット:

・参加人数が一人減るため獲得率が少し上がる。
・浮いたFWでミスマッチを作ることが出来る。
・ATオプションが増える

上に挙げたものはALL menと比較してのメリットです。基本的にラインアウトは人数が少なくなるに連れて消極的なオプションへとなっていくので6menはかなり有効ではないかと考えています。

また6+というものも存在します。
これは6menラインアウトで本来SHがいる位置にFWを立たせるというものです。
6+のメリットはモールを組む際に発揮されます。モールのDFをする時は最初に4人頭を差し込まなければ止めることが難しくなってきます。6+の場合ではDFが競るために1ユニットをリフトしてしまうと残るDFは3人です。ALL menの場合は4人残るので比較的余裕を持ってDFすることが出来ますが、6人になるとモールを警戒するためDFは競ることが少し難しくなってきます。
ここで6menと6+の使い分けという部分に意識が行くと思いますので説明すると、6menではモールに参加できる人数はスローワーを入れて7人とSHです。6+では8人参加させることが出来ます。SHをこのエリアに立たせるメリットはパスアウトさせる以外にないので、ピールオフやモールを使うと決めている時には6+を使う方が良い場合が多いです。
また、6+ではモールが来ると相手に警戒させることが出来るため、ラインアウトで獲得しやすくなるという面もあります。

デメリット:

・ALL men同様獲得が難しい


◇5men/5+◇

5menのメリット:

・獲得しやすい
・FW2人をあらかじめ外に配置できる

5menではDFは基本的に2ユニット上げることが出来ません。また5人で10mを使うため、かなり獲得しやすくなってきます。そのため、ALLmenや6menで獲得できなくなったチームが獲得最優先で途中から使い始めたりするシーンがよく見られます。

余談ですが、中盤でのラインアウトオプションが途中から5menに切り替わったチームは、やりたかったオプションを封じられるためATの効率が悪くなってしまったりするため、負けの流れになっていくことがとても多いです。

獲得しやすいという理由から自陣G前のオプションとして使われることも多いです。

5+についてですが、これも6+と同様の理由で採用されます。6+よりも獲得しやすく、相手の参加人数が減るためモールをかなり組みやすくなります。また、この人数でのモールをDFするとなると、ほぼ全員が頭を入れなければならないのでモールのサイドが空きやすくなります。ラインアウトが解消される前にピールオフなどで攻めるというオプションを持つことが出来るためDFしづらく、中盤でのモールを組む時には有効なオプションとなります。

デメリット:

・相手のFWを1サイドに固定できないためストラクチャーでのゲインがしづらくなる


4men

4menといえば逆目AT。と言い切ってしまうほどこの二つは切っては切り離せないです。

4menのメリット:

・獲得しやすい
・逆目ATというオプションを持てる

4menでラインアウトをするということは、FWがBKラインに3人並んでいるということです。この選手達を1次でヒットさせて、2次はBKが一斉に逆目に仕掛けるというのがオーソドックスな形です。
逆目に仕掛ける理由は、逆目にいるDFはラインアウトに参加した5人のFWであることと、少なくとも15m以上のスペースがあるということです。
ミスマッチが存在し、かつFW一人あたりのタックルレンジが3mになるためゲインできる可能性が高くなります。もちろんこうしたATをすることによって順目に回るスピードが鈍くなることも考えられるので駆け引き要素が一番強いのが4menの特徴ではないかと思っています。

デメリット:

・リフトスピード次第では5menより獲得が難しい
・4men=逆目ATという認識が一般的なため警戒されやすい

メリットの欄に獲得しやすいと書いておいて、デメリットの欄に獲得が難しいと書いているのは何事だと思う方も多いと思います。僕もそう思います。

4menはスキル次第な部分が大きいので僕は5menの方が獲得しやすいと思っています。
例えば5menで2-1-2という形で並べば前、後ろのどちらで跳ぶのかという迷いを相手に与えることが出来ます。
(1人リフトが出来る場合は例外ですが)4menでは結局のところAT3人が集まるところで跳ぶことは分かっているので、ジャンプの位置を合わせやすくなります。
もちろんDFはリアクションでやっていかなければならないので不利なことには変わりありませんが、リフトのスピードがATよりも早ければスティールすることも十分可能です。
そう考えると4menよりも5menの方が構造を利用して獲得しやすいため、トップレベルのスキルは必要ありません。
4menの場合は相手よりスキルが必要になってくるので、「基本的に獲得しやすいが、相手次第では困難」となります。


なぜラインアウトで戦略が分かるのか

さて、ここまでそれぞれのナンバーでできることについて書いてきましたが、この記事のタイトルは『戦略はラインアウトで7割分かる』です。
この記事にあるそれぞれのナンバーの特徴を頭に入れた上で、実際の試合のラインアウトからのATを3フェイズ見ていただきたいと思います。

基本的にどのチームも構造的に空いている場所をATしていると思います。ただ、構造的に空く場所というのは一つではありません。ALLmenで言えば1次の大外も空いていますし、そもそもDFの間隔が広いためそこを攻撃することもできます。
ただ、複数スペースがある中で、どのタイミングでどのスペースを使って最終的にどのような形を作ることが目的なのかという部分でチームによって差が生まれます。

1次に外でビッグゲインを狙うチームもあれば、モールからのピールオフでじわじわと数的優位を作るチームもあれば、2フェイズで数的優位を作るチームもあります。

ラインアウトは自由度の高いセットプレーです。
ナンバーやその後のATにチームの色が出ます。だからこそ、そのチームがラグビーをどのような側面から見てプレーをデザインしているのかということを理解するためにはうってつけなのです。

だからこそ僕は、スクラムやポッドではなく『戦略はラインアウトで7割分かる』と思うのです。


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