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ゲームモデル、戦略、戦術の考え方

今回は僕なりの戦略に対する考え方をガシガシ書いていきたいと思います。
ここでいうゲームモデルや戦略、戦術は人によって定義が違うかもしれないので、先に本文中での定義をします。

ゲームモデル:ゲームをする際のコンセプト、軸となるようなアイデア
戦略:ゲームモデルに基づき、かつ具体的なシステムのこと
戦術:戦略よりも規模の小さいミクロなシステムのこと

この記事では便宜的に戦略戦術をセットで扱います。

まず最初に僕の主張、哲学を紹介させていただきます。

相手の能力の影響を受けるものは戦略ではない

僕は心の底からこう思っています。言葉としては、「相手の能力に影響を受けるような戦略は戦略たり得ない」の方が正しいのかもしれませんが、あえてこう表現させていただきます。この意味は下で説明していきます。

ゲームモデルの考え方

これは一度記事に書いたことがあるのですが、ゲームモデルはゲームの構造に基づいて考えます。ここで大事なことはどんな相手であっても逆らうことのできないルールと物理の制約を意識することです。つまり、「相手の能力に影響されないこと」がゲームモデルの大前提になります。

例えば、「ボールを持っていないチームは得点することが出来ない。」というルールからポゼッションを重視するかキックによるエリアマネジメントを重視するかという話が生まれます。相手を完全に無視すればポゼッションを重視する方が合理的ですが、相手のことを考えるとエリアは大事になるかもしれません。しかし、エリアを獲得するためにキックを行うということは、自分たちがDFをしてT.Oできるかどうかという要素が絡んできます。もし相手に隙がなくT.Oすることが出来なさそうであればエリアを取る意味がありません。ゲームモデルを考える時点で想定していることはゲームでは簡単に裏切られることがあります。

つまり、ゲームモデルは相手の能力に依存するべきではないのです。
どんな相手と対戦しようともブレないスタイルというものがゲームモデルです。

戦略の考え方

ここまでで説明したゲームモデルというものはとても抽象的なものです。

「ATの時にはスペースにボールを運びましょう。DFの時にはプレッシャーをかけましょう。T.Oしたらすぐに攻撃しましょう。T.OされたらすぐにDFラインを整えましょう。」

くらいのものです。これを理解すればチームのある程度の方針はわかりますが、さすがに試合をするにあたってこれだけしかコーチから伝えられなければ不安ですよね?選手によって解釈が違ってくるかもしれません。

そこで戦略というものを考えなければいけません。
戦略とはゲームモデルを実現するためのシステムです。
ゲームモデルを考える上で「相手の能力に影響されないこと」が前提として存在しているので戦略を考えるにあたっても同様に「相手の能力に影響されないこと」を意識しなければなりません。

「フィジカルが強いから9シェイプやFWの縦突進でゲインしていくんだ!」
「BKが強いからステップを切れるスペースを作るんだ!」
「競り合いが強みだからハイパントを蹴り続けるんだ!」

というものは僕としては戦略と言えるのか正直疑問です。
上にあげたものは全て相手の能力に依存しています。もし世界で一番フィジカルやBKやハイボール処理が上手いのであればなんの問題もありませんが、世界二位のレベルでは上に勝つことは出来ません。
そういう意味で、構造的に対処することが不可能な戦術を考えるということが必要になります。

相手に合わせて戦い方は変えないのか?

今までの文を読んで違和感を感じた方もいらっしゃると思います。相手チームの分析は何のためにするのか?相手の戦略を分析して戦略を立てるのではないのか?

もちろん分析、対策はします。ただそれによって立てるゲームプランは戦略ではなく、対策に過ぎないと思っています。
相手の分析をして得ることのできる情報は、「ラグビーの構造的弱点」ではなく、「チームの傾向的に弱点になりやすいところ」です。相手チームの戦略の傾向として弱点になりやすいということはわかりますが、もしかすると自分たちよりその点においても優れているかもしれません。また、そうした「チームの傾向的に弱点になりやすいところ」はチームによって異なります。
現実問題として毎回相手チームに合わせて戦略を立てるということを行うと、練習すべき項目が大きく変わってきますし、軸のないチームとなってしまいます。
結果として良いパフォーマンスをコンスタントにしていくのは難しくなってしまうので、対策はあくまでも枝葉の細かい部分という認識がベストだと思います。

一言で言うならば、チームの根幹部分は相手に合わせず、枝葉は相手によって合わせるということです。
何をゲームモデルにして、何を枝葉の部分と捉えるのかは人によって変わってくると思います。ただ、絶対に変えてはいけないようなチームのアイデンティティーはカルチャーとしても、チームを強くする上でも必要ではないかと思います。



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