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絵の上手い下手とは?

元美大生が考える絵のこと。絵を描くことについてのありがちな誤解。

絵を描くのがコンプレックス?

半年間だけ行っている非常勤の大学で「来年のカリキュラムを変更するので、その内容を詰めましょう!」と、先日、先生方と打ち合わせをしていた時。

「学生達の絵を描くということへのコンプレックスが根強い」という話を聞き、

「分かる分かる〜」と思うと同時に、

「そんなに気にしなくて大丈夫なのに。」

と感じた自分の考えを整理するためにメモしてみます。

絵が上手いとは?

私も美大に行く時にはデッサンをしていたので、写実的な絵を描く練習はしましたが、漫画的な絵は一切描けませんでした。だからちょっとした手紙とかメモにささっとイラストが描かれてたりすると、いいなーと思っていましたし、自分は全然絵が描けないと思っていました。
では、今回大学の学生さん達はどんなことにコンプレックスを感じているのかというと?
プロダクトとか建築関係の学生さん達なのですが「絵が“上手くない”のであんまり描きたくない」らしいのです。実はこの“上手くない”というのが、1番厄介であり、1番のポイントだと思います。

まずは絵が上手いとはそもそもどういうことか?ということですが、写実的なリアルな絵が描けるとか、漫画のようなキャラクターやイラストが自由に描けるということにしてみましょう。ではそんな絵が描けるように上手くなるためにはどうすれば良いか?ひたすらに絵を描き上手くなる努力をする!
つまり上手くなるまで努力すれば良いのですw
でもそういう問題じゃないですよね?😅
学生さんの言うところの
「絵が“上手くない”のであんまり描きたくない」
けれど、
「描く必要があるから描かなくてはならない」
という状況だからこそ、コンプレックスを感じながらも絵を描くしかないのだろうと思います。

絵は伝わることが大切?

絵が上手くなるには上手くなる努力をすれば良いのですが、そもそも他に本業を持ち絵描のプロになりたいわけじゃなければ、先程言ったようにひたすら上手くなるように練習することはなかなか難しい。今回の学生さん達もプロダクトデザインや建築関係の仕事を目指しているので、絵を描くことばかりに集中してはいられないわけです。
そうなると
“何のために絵が必要なのか?”
ということだと思います。

例えば、プロダクトデザインをする時の絵は、製品の色や形、質感が伝えられるかどうか?とか、建築関係では実際に建築が建った時、空間にどんな風に存在しているのかというイメージが伝えられるか?など、それぞれに目的があるはずです。

つまり目的が達成出来るのであれば、
「上手い必要はなく、伝われば良い」のです。

今から描く絵は何のために必要なのか?何を伝えるための絵なのか?その目的が達成出来るかどうか?が重要であり、伝えたいことが伝わる絵なら、それは上手い絵なのではないでしょうか?

例えば製品の色を伝えることが大切な絵について、他の人から「この部分の形が違う!」とか「写実感が足りない!」とか言われても気にする必要はないでしょう。だって論点が違うのです。もし質感も含めた色が必要なら、質感描写も含めた絵を描く必要はあるかも知れません。でも色を伝えるための絵について、形が違うからあいつは絵が下手だとか言われても何のことやらって感じですよね。(もちろん形による色味の見え方の変化ということもあるので、切り離せない部分はありますが)まずは判断軸を明確にして、この絵は相手に伝えたいことを伝えられるのか?というレベルを自分の基準で追求する。そこからその判断軸で、自分の描いた絵が相手に伝わったかどうかチェックしてもらう。違う判断軸での評価や、違う軸での上手い下手の評価は、そもそも気にしなくていいズレた評価だと思います。大切なのは判断軸を合わせた状態でアドバイスをしてくれる人でしょう。
伝わる絵こそ上手いのであり、伝わらない絵こそが下手な絵。写実的なリアルな絵かどうかが大切なのではなく、ヘロヘロの線で描かれていても、伝えたいことを伝えたい人に伝わるかが大切で、上手い絵は“伝わる絵”だと思います。

まとめると
・絵を判断する基準(目的)を明確にする。
・大切なのは上手い絵ではなく伝わる絵。

ということだと思います。

だからあんまり周りのことを気にせず、自分なりの“伝えられる絵を描く上手さ“を獲得出来たら、それでいいと思うのです。

でも絵は深い

今回は伝わる絵ということで、どちらかと言うとツールとしての絵、みたいな捉え方なんですが、そうじゃないものもありますよね?
例えばアートという文脈での絵。これは伝わるということはもちろんですが、“表現”という難解な問題が入り込みます。

ん〜これはスーパーフラットの概念を用いて、キュビズムの多角的な視点とサブカルを合わせた、新たなジャポニズムを表現している!みたいな。(適当なことを言ってますので内容は気にしないで下さいね)

この“表現”というのは、感情・スタイル・文脈などいろんなものを表現してくるので、一概にいうのは難しいのですが、絵には伝わるということ以外にも大きな要素があります。
他にも思考するために絵を描くとか、絵を描きながら思考するとか。そうして出来上がった絵になんとも言えぬ魅力があったりもします。私が好きなジャコメッティ という、人体の存在に向き合うような絵を描く人や、レオナルドダビンチのような解剖学的な描写や科学的に自然に迫るような絵もありますし、伝わるとかいう世界とは全然違う絵もこの世界には存在していると思います。アウトサイダーアートと呼ばれるものもそうだと思いますね。

なので、伝わる・伝わらない、ということだけでは絵を判断することは出来ないのですが、まずは仕事とか普段の生活の中で絵を描く必要があったら、伝わるかどうかを大切にしたらいいかなーと思います。

そうすると、「なんか自分の描く絵がやだなー、とは言っても何をどうしたらいいのかわからん!」みたいな時、どうやったら伝わるのかを考えていくことでなら自分の絵を修正できるように思うのです。“どうやったら伝わるか“これがあると暗闇の中の道を進む時の道標にもなるかなーと。

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