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続うつ病日記7

 昨日の午前中はカフェインレスコーヒーを片手に『翻訳文学紀行Ⅳ』の校閲作業をした。毎回、特に初稿への校閲はかなり念入りにやる。少し口うるさいくらいかもしれない。あまりに口うるさくて、訳者に「じゃあ自分で訳せよ!」と怒られるんじゃないか……と毎回少しドキドキしている。自分自身、指導教官による手厳しい朱入れに耐えきれずに博論執筆を断念した人間だ。指導教官に対して、「そんなに文句があるなら、自分が書けよ」と何度も思った。だからこそ『翻訳文学紀行』の校閲をするときは、「これはあくまでも『原著者の文章』であり『彼らの訳文』なのであって、『わたしの文章』『わたしの訳文』ではない」と自分に言い聞かせるようにしている。その一線だけは絶対に踏み越えてはならない。よっぽど気心が知れている相手でない限り、できるだけ命令文は避け、言葉を選んで書くようにしている(創刊号、第2号のときは、不慣れ故に寄稿者に対する配慮が足りなかったかも……と反省している)。

 校閲に集中しすぎて、整骨院へは行くことができなかった。一方、婦人科は予約制なのでキャンセルするわけにはいかない。切りの良いところで作業を終わらせ、小腹がすいたので青汁と豆乳とバナナのスムージーを飲み、婦人科へ向かった。

 婦人科の診察はすんなり終わった。「続うつ病日記2」で言及した心療内科の主治医と違い、現在かかっている婦人科の先生はとても親切で、必要な説明もしっかりと行ってくれる。「不安な症状があれば、すぐに電話をしてきてください」と言ってくださるなど、配慮も行き届いている。先月、悪夢のような生理痛にうなされていたときも、夕方の診察時間に無理やり予約をねじ込んてくださった。ありがたい…。
 今回は77日分の低用量ピルを処方してもらった。しめて7270円…。今年の確定申告はなかなかやりがいがありそうだ。医療費控除に期待。

 帰宅後は、夫がチャーハンを作ってくれている間に、『翻訳文学紀行』の校閲作業の一部を終わらせた。昼食には夫特製のチャーハンを食べた。夫も原稿がうまく片付きそうだと言う。食後にフルーツ酢で乾杯し、締めにカフェインレスコーヒーを飲んだ。食器の片付けはわたしが担当した。

 わたしも午前はかなり仕事がはかどったから、午後は近所の本屋さんへ予約していた本の受け取りに行くことにした。残念ながらまだ『ボヘミアの森と川』は届いていなかった。昨日買ったのは、このふたつだ。

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 いずれも前から読もう読もうと思いながら目を通すことができていなかった。
 左は「桃山商事」の清田隆之 著『さよなら、俺たち』。

男性学は、ここ数年わたしが関心を持っているトピックのひとつだ。わたし自身がマッチョな感じの男性(ここでは身体的なマッチョではなく精神的なマッチョを指していると考えて欲しい)が苦手であるということや、フェミニズムとの関連性などさまざまな理由があるが、最も私的な要因としてあげられるのは夫との関係だ。
 夫とはマッチングアプリで知り合ったのだが、彼は付き合い始めた頃、度々自分の収入の低さを気にしているような発言をしていた。わたしは自分自身収入が低く、かつお金に執着がなかったので、彼がなぜそれほどまでに収入の低さを気にしているのかよく分からなかった。
「お金は、万人に分かりやすいように数値化されたただの指標だよ。わたしにとっては、数値化されえない価値のほうがずっと重要なんだよ」
 そう伝えても、やっぱり当時の彼は、自分が一般的なサラリーマンより収入が低いことを引け目に感じているようだった。彼もまた、世間にやんわりと広く染み込んでいる「男性は女性よりも稼ぐものだ」という固定観念に縛られて苦しんでいたのだと思う。

 上で「お金にあまり執着がない」と言っておきながら、右にあるヤマザキOKコンピューター著『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』は、投資をテーマにした本である。

ただしこの本は、「どこにどうやって投資したら儲かるか」というハウツー本ではない。どちらかというと、より面白い未来を作るために自分たちでお金の流れをかえていこう、そうするにはどうしたらいいだろうか?というようなことが書かれている。わたしはお金そのものにはそれほど執着はないが、「お金の巡り方」には結構強い関心がある。というか、ここ数年は「小さな文化的経済を回す」というテーマを掲げて活動している。本屋さんや出版社、翻訳者や作家、役者や画家、イラストレーターやミュージシャン……。わたしが愛してやまない文化に携わる様々な人たちが、自分たちの好きな活動をしながらなんとか生きていける世界を作ることができないものか、と常に思案しているのだ。

 店主と1時間ほど立ち話をして、夕飯の買い物に行って帰宅。夫も仕事が順調に進んだようでご機嫌だった。わたしのほうはというと、久々に人と長話をしたので、アドレナリンの処理が追いついていなかった。急いで薬を飲む。

 16時からは、麦茶を片手に、先週延期したオンライン・タンデムをした。Mはいつものように元気そうだった。Mとタンデムを始めたのは、彼が日本学科で本格的に日本語を勉強を始める前だった。そのため、わたしたちは基本的にチェコ語で会話をしていた。けれど、昨日彼が日本語を話すところを聞いてみると、なんと、素晴らしく上達しているではないか! 長い修飾語がついた複雑な文も、ゆっくりとではあるが、正確に話すことがでるようになっている。1年弱でこれほど上達するとは、感心である。きっと一生懸命、そして彼のことだから心から楽しんで、勉強を続けてきたに違いない。脱帽だ (klobouk dolů)。

 タンデムのあとは、夫と夕飯を作った。ホウレンソウとツナと玉ねぎのトマトパスタにサニーレタスとトマトのサラダ。サラダには塩レモンで作ったドレッシングをかけた。
 その後入浴し、しばらく読書をしてから薬を飲んで9時には就寝した。

 今朝は5時前に目が覚めた。布団の中でしばらくもぞもぞした後、起床。スーパーで割引されていたライ麦入りパンのトースト(ライ麦の粒が入ったパンであってライ麦パンではない。ドイツ人やチェコ人にこれをライ麦パンだと言って出したら、きっと怒られる)に、目玉焼き、ウインナー、サニーレタスを食べ、カフェイン入りのコーヒーを飲む。それでも小腹が空いていたので、ヨーグルトを食べ、青汁と豆乳とバナナのスムージーを飲んだ。

 今日は午後に大学でチェコ語講座をすることになっている。リラックス、リラックス! その前に今日こそは整骨院に行こう。

 

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