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ご質問にお答えします!『ミステリーを書くのは難しい?』

脚本家志望の方からこちらのご質問をいただきました。

ミステリーの脚...

ご質問ありがとうございます!

脚本家が原稿を書き始めるときには以下の2つのパターンがあります。
1)放送や上映の目途が立っている企画の脚本執筆をプロデューサーから依頼された場合
2)オファーを受けているわけではないが、自分が企画提案したい作品に着手する場合

これを前提に私のミステリー執筆経験をお答えしますと、1)の「オファーを受けて書く」というパターンで書いたことはありません。
ですが、ちょうど今、2)の「企画提案をしたい作品」でミステリー要素のあるものを書こうとしており、日々試行錯誤しています。

二つ目のご質問の「ミステリーの難易度」についてですが、これは「書き手によりけり」ということに尽きるのではないでしょうか。
今の私は「ミステリーを書くのはとても難しい」と感じていますが、これは、コメディや青春モノに比べて経験値が低いからだと思います。
逆に日常的にミステリーを書いている人が、コメディを書こうとすれば「難しい」と感じるのでしょうし、ミステリーに限らず、一般化して「このジャンルは他のジャンルに比べて特別難しい」といったことは言えないはずです。

上に「私はミステリーの経験値が低い」と書きましたが、この「経験」にはアウトプット、インプットの両方を含んでいます。
書き手が「どの程度ミステリーを書いてきたか?」はもちろんのこと、「どの程度読んできたか?」も、その人が感じる難易度に影響するはずです。

もちろん「たくさん読んでさえいれば、書ける」というものでもありません。
以前、こちらの投稿にも書きましたが、世界の飲食店を食べ歩けばグルメにはなれますが、料理人にはなれません。
どんなに舌が肥えていても、包丁を握ったこともない人には、「お金を払ってでも食べたい」と思われるような料理は作れないでしょう。
同じ理由で、ミステリーマニアがそのままミステリーの脚本家になれるわけではない、というのが私の考えです。

ですが、舌の肥えた人が料理の基本を学んで習得すれば、そこから先は過去の食べ歩きの経験が大きく活きるはずですし、書き手に関しても、同じことが言えると思います。
作劇には、ジャンルの壁を越えて共通するルールとセオリーが存在します。
それらを習得した後は、数多くインプットしてきたジャンルが書きやすいと感じるはずです。

私はコメディを書くのが好きで、「得意」と言ってもいいと思うのですが、シナリオスクールに通い始めた頃、自分がコメディのつもりで書いている作品が、大して笑いを誘わないことにショックを受けました。
「飲み会で私がしゃべると、結構ウケるのになぜ……?」と思ってましたね(笑)。
これは、脚本のルールとセオリーが身に付いていなかったからだ、と今となっては分かります。
単純に、基礎ができていなかったということです。
基本のルールとセオリーが身に付いてからは、原稿を読んだ人に「笑える」と言ってもらえることが格段に増えました。
子どもの頃からコメディ要素のある作品に多く触れていたことが、ようやく活きてきた、ということだったのでしょう。

言い方を変えると、
「書き手の個性が発揮されるのは、基本が身に付いてから」
ということなのだと私は考えています。
時おり、脚本家志望の人から「スクールに通って型にはまると、自分の個性が消える気がする」という言葉を聞くことがありますが、私の考えはまったく逆です。
型を知ってからでなければ個性は発揮できないと思いますし、型を学んだ程度で消えてしまうのならば、もともとそれは個性と言えるほどのものではなかったのだろうと思います。

これからもお互いがんばりましょう!

ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。


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