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ご質問にお答えします!『映画を観るのが億劫な時があります』

脚本家志望の方からこちらのご質問をいただきました。

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ご質問ありがとうございます!
「自分は楽しめる映画の幅が狭いのかもしれない」という質問者さんのご推察は、おそらく正しいのでしょう。
映画に限らず、あらゆるコンテンツは、経験値が高い人ほどより幅広く、深く楽しめるものだと思います。

映画マニアと呼ばれるような人たちは一般に、「映画を楽しむポイント」を数多く持っています。
「この監督は一貫してこのテーマを追い続けている。一作ごとに深みが増してるな」
「この俳優は、こういうイメージの役を演じるのは初めてだけど、すごくハマってる。新境地開拓だ」
「こういうカメラワークは斬新で面白い」
「この脚本家は、回想の使い方がうまいんだよな」
といった具合に、多くの作品を鑑賞して知識を蓄えている人は、さまざまな角度から映画を楽しむことができるのです。

ならば質問者さんは「荒療治的に、片っ端から見ていくのがいい」かと言えば、それは、私からはお勧めしません。
質問者さんの目標は「脚本家になること」であって、「とにかく数をこなして、映画マニアになること」ではないからです。

上述の通り、多くの映画を観ていけば、徐々に幅広く、深く映画を楽しめるようにはなるはずです。
ですが、多くの映画を”観ただけ”で、映画の作り手になれるわけではありません。
世界中の飲食店を食べ歩けばグルメにはなれますが、料理人になれるわけではありません。
日々厨房に立ち、包丁をふるっている人が、あちこちの店を食べ歩いたとき初めて、人の料理からヒントや着想を得ることができるのです。

さらに言えば、料理人がヒントや着想を得るのは「おいしい!」と感じる店に行ったときのはずです。
「まずい……」「これは酷いな」という経験を反面教師にすることもできるでしょうが、おいしく感じたときの「秘訣を知りたい!」「自分の料理にどう活かせばいいだろう?」という強い探究心のほうが、料理人の腕を上げるにはずっと役立つことでしょう。

以上の点を考えて、私から質問者さんにお勧めしたいのは以下の三つのことです。

1)「勉強になりそうな作品」より、まずは「面白そうな作品」を優先して鑑賞する。
名作の誉れ高い作品だと聞かされても、質問者さんにはピンと来ない、食指が動かない、という場合もあるでしょう。
そういった作品を「でも、観ていないと恥ずかしいのかも……」と、無理をして鑑賞したりしていませんか?
「ピンと来ないな」と思いつつ、その作品から何かを学ぼうとしても効率が悪いので、まずは率直に「面白そう!」と思う作品を優先してはどうでしょうか。
そうするうちに”映画経験値”が上がり、楽しめる作品の幅が広がっていくだろうと思います。

2)観た作品の面白さを分析し、言語化する。
見終えた後、「ああ、面白かった!」で済ませてはいけないということです。
質問者さんは「構成やストーリーの研究のためにインプットに力を入れようと思っている」とのこと。
それならば、「自分が面白いと感じる作品の構成には何か特徴がないだろうか?」「今日観た作品のなかで、展開がうまい!と感じた個所はどこだったか?」等々の考察が必要です。
「なぜ面白かったのか?」という視点を持ち、その答えを自分なりに言語化できるかどうかが、「映画の作り手」と「映画ファン」の違いだと私は思います。

3)インプットだけで満足することなく、自分の作品も書き続ける。
大事なことなので繰り返しますが、どれだけ食べ歩きをしていても、包丁を握ったことのない人に料理は作れません。
自ら厨房に立っている人だけが、「人の料理から学ぶこと」ができるのです。
質問者さんも、「映画をたくさん観ていること」だけで満足せずに、日々自分の作品を書くことに挑み続けてください。

尚、インプットに関しては、こちらの投稿でも私の考えをお答えしていますので、よろしければお読みになってみてください。


これからもお互いがんばりましょう!

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