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ご質問にお答えします!『脚本家という仕事は先細りなのでしょうか?』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

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ご質問ありがとうございます。

ファッションブランドのエルメスは、もともとは馬具のメーカーだったそうです。
車が一般化し始めた時点で「これから馬車が廃れるから、馬具を売る商売は先細りだ」と判断して、馬具と同じ革製品(バッグやベルト等)も扱うファッションブランドに方向転換したそうなんです。
エルメスのスカーフ等に馬や馬具の柄が多いのは、馬具メーカーだった頃の名残りだそうですよ。

……というウンチクを披露したいわけではなく、「車が一般化して馬車が廃れるから、馬具メーカーの未来は暗い」ぐらいの明確な根拠があれば「脚本家の未来は暗い」という話も「なるほどね~」と納得できるんですが、「そのうち脚本も、映画監督が書くことが増える」の根拠が分からないので、「なるほどね~」とはならないです。

そもそも「映画監督が脚本も書くこと」は、現時点でもまったく珍しい話じゃありませんよね。
「脚本は書かない」という監督もいれば、「常に自分で脚本を書く」という監督も、「自分で書く時もあれば、書かない時もある」という監督もいて、この状況は昨日今日始まったことではありません。
「監督が脚本を書くことだってできるんだから、脚本家のニーズが下がる」ならば、脚本家という仕事はとっくに廃れて、なくなっているはずじゃないでしょうか。

「(脚本家はニーズが下がっていくから)脚本も書ける映像作家を目指すべきだ」と発信されている方が、「なんか、そんな気がするんだよねー」というレベルで言っているのだとすれば、私の実感としては、「五年、十年で廃れていく仕事とは、まったく思わないですけどねー」というところです。


「日本の脚本家は地位が低い印象があり」という質問者さんのご意見に関しては、私も完全に同意です。
私自身の実感として、明確に低いです。
詳細は省きますが、担っている役割の大きさに対して、置かれているポジションが低すぎると感じることが度々あります。
質問者さんは「アメリカに比べて低い印象があり」と書かれていますが、下のツイートによると、アメリカでも「正当に評価されていない」と感じている人が多そうです。

これについて私は、「嘆いてばかりいても仕方がない」「『どうせこんなもんなんだ』とあきらめた瞬間にすべてが終わる」と考えています。
ですので、脚本家の地位向上のために、自分は何をすべきなのだろうかと日々考えています。
不当な扱われ方をしたと感じた時は可能な限り相手にそれを伝えていますし、「この人は脚本家という職業を低く見ているし、私のことも軽く扱っている」と認識した時には、クライアントになり得る人であっても(というより、だからこそ)きっぱり関係を絶つことにしています。

私がこういったことをしたからと言って、それだけで何かが劇的に変わるわけではありません。
それでも、脚本家を軽く扱うことを当然と考えていたであろう人が、間違いに気づくきっかけにはなり得ますし、”広大な砂漠にゾウさんのじょうろで水を撒くような行為”だとしても、止めてはいけないのだと自分に言い聞かせています。

実は、noteで脚本家志望のみなさんからのご質問に答え続けているのも、「脚本家の地位向上につながるかもしれない」という思いもあってのことです。
脚本家を目指す人が増え、その結果として脚本家の層が厚くなり、良いホンが一つでも多くこの世に生まれれば、脚本家という職業の地位向上にもつながるはずだと信じて、日々ご質問にお答えしています。

これからもお互いがんばりましょう!

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