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エトワルのたまご

2015年9月以来、山口県防府市の喫茶店「エトワル」を訪れた。
「エトワル」は全国の喫茶店を記録した本「47都道府県の純喫茶」の中で山口県代表として紹介されている。


旅に出る前夜、エトワルの店主に渡すことを思いつき自作のフォトブック「喫茶店の旅」をリュックに入れた。

「喫茶店の旅」は私が「47都道府県の純喫茶」を読んだことを機に、「47都道府県の純喫茶」掲載店を中心に全国の喫茶店に訪れた思い出を記している。



私が運営しているブログ「喫茶のすたるじあ」は検索で訪れてもらうことを重視しているため、情報がメインで自分について書くことはほとんどない。

「喫茶店の旅」は喫茶店を通して出会った人との触れ合いの記録だから、苦手な自分語りがメイン。

喫茶店に行く過程がすべて旅だと思っているけど、旅らしくするために大阪の喫茶店は載せていない。



エトワルは「喫茶店の旅」に載せてないが、5年前に来た際に店主と著者の山之内さんの話をしたこともあり差し上げてもおかしくないと思ったのだ。


接客してくださったのは、長男ご夫妻の奥様の方。
気さくな人柄で常連さんに慕われている。

渡して困惑されたらどうしようかと心配していたけど、杞憂だった。
「後で読みますね」と快く受け取ってもらえて安堵する。

運ばれてきたホットケーキを食べていたら、涙がこみ上げた。



そのとき、卵型の椅子が目に留まる。
同時にヘルマン・ヘッセの「デミアン」の一節が浮かぶ。


僕等は卵から生まれた少年という名の鳥なんだよ。

鳥は卵の中から抜け出ようと思う。
卵は世界だ。

生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。
鳥は神に向かって飛ぶ。


ああそうか、私の望みは「喫茶店の旅」を渡すことだけだから、それが出来ただけで十分だったんだ。

渡したことでわずかだけど成長できた。


・エトワルの前に設置してある種田山頭火の句碑
「あさせみ(朝蝉) すみ通る コーヒーをひとり」

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