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鍋いっぱいの愛は、自分のため

鍋いっぱいの愛を、自分に捧げる話。


憎き、低気圧よ

低気圧が、憎い。
宇宙との交信か!ってくらいの耳鳴りと、
私これから床に根を張ろうとしているのか?ってくらいに
体、特に足がとにかく重くて動くのに一苦労だ。おまけに夜から謎のじんましんが出現。

これから梅雨、そして台風、
毎日が低気圧フェスティバル!!を考えただけで、気が滅入る。

でも、気が滅入る自分にひたすら浸る
なんて、ごめんだ。

日々の暮らしがあるのだから。

心身の不調はあれど、ようやく低めの低め、やや安定な日々を(これは安定と呼ぶのかはちょっと疑問だけど)
過ごせるようになったのだから。

日々を少しでもやり過ごせるように
自分のご機嫌をとれるように
私は自分で自分に、愛を送ることを思いついた。

よし、私だけの愛を作ろうじゃないか!

愛=ラタトゥユ=夏の生命線

野菜室には、にんにく、なす、ズッキーニ、芽が出始めたたまねぎがある。
色鮮やかパプリカは、なし。(なかなか購入するには躊躇する値段だから)
そうだ!にんじんに参戦してもらおう。

パントリーには少しほこりをかぶってしまったが、トマト缶もある。

ローリエは、期限が5年前で止まってたので手を合わせて使いこなせなかったことを謝罪しながら処分した。(ローリエを使いきれる人、尊敬だ)

見栄えはあんまりだけどこれだけ材料があれば、できる!

今からの時期こそ、出番だ!
ラタトゥユ!

夏野菜の煮物、フランス生まれの煮込み料理。私はこの料理でここ数年の低気圧時期、さらには真夏に起こる胃の不調と食欲低下、病的なやせ方をしてしまう体重減少をしのいできた。

生命線なのだ。

だが、私以外の家族は苦手な料理であるため(トマト煮込み全般がダメ)
夏の食卓に出現することはほぼない。
夏の間作るのは、私のためだけ。

私だけの料理。


隠し味は、愛ならぬ〇〇

耳は宇宙との交信継続中、体は鉛みたいに重いけど、いざキッチンへ。

ひたすら野菜を切って、厚手の鍋につぶしたにんにくとオリーブオイル。
弱火で、にんにくの香りが漂うのを待つ。あぁ、良い香りがしてきた。
これ、アロマだな。
にんにくアロマ。

クンクン嗅ぎながら、焦らず野菜たちを投入して、塩こしょうで炒める。
とにかく、焦らずに、弱火でがポイント。
優しく、優雅に、焦らずに。
ここはフランス、ニースだ!私は今、
フランスのママン。
ママンの手料理をこさえているのだ。

野菜たちに熱が伝わったらトマト缶を投入。さらにここで隠し味を
入れるのだ。

愛と同じ二文字。

日本人の心、味噌。

料理家、榎本美沙さんのレシピだ。

味噌を入れることで、海外の味から日本人の魂がよろこぶ、ほっとする味へ変身。さらに少しだけ、私はお醤油を垂らして煮込むのが好きだ。
(榎本さんのレシピのままで充分美味しいのは間違いない!)

フランスママンの味から、かあちゃんの味。

かあちゃんの愛がたっぷり入った、
ラタトゥユの完成だ。

鍋いっぱいの愛

鍋いっぱい、たんまり出来上がった。まだ熱い出来立ての愛を口に。
そうそうこれこれ!!
待ってたよ、かあちゃん!この味を!愛を!
トマトの酸味とゴロゴロ野菜の触感、そして味噌が織りなすまろやかさ。

なんだろうか、泣けてきたのだ。
自分で自分のために作った料理の味は、抱きしめられたような感覚だ。
「セルフハグ」
この時間と味、すべてがセルフハグだ。

両親は商売と日々の生活に精いっぱいで、放置気味に過ごした三人兄弟の真ん中、子ども時代。
いざ大人になるも、寂しさの穴を埋めたくて誰かに愛されることばかりに執着し、トラブル続きだった長い時間。

でもそこから、このセルフハグの時間をこれから繰り返すことで
自分の機嫌は自分で、自分をまずは労わる、誰かからではなく自分を愛するを少しずつ理解して体に染み込んでいくのかもしれない。

大丈夫だ、きっと
低気圧も台風も、夏の暑さにだって
今年もなんとか持ちこたえられるよ
ついでに、過去のトラウマたちも、ね

だって、鍋いっぱいの愛があるから!

このあと冷ましたら小分けにして、
冷凍貯金もしよう。
そうしたらいつだって、愛を噛みしめることができるもの。

鍋いっぱいの愛は、自分のために。


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