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登山とアシの話

またまた登山へ行ってきた。

低山とはいえ荒々しい足元を進むのはかなりキツくて、楽しいかと聞かれたら今のところ楽しいとは言えない。

けどシーズンごとのトレッキング用の装備を買っていくうちに既にまあまあお金がかかっているので、もったいなくて途中でやめられないっていう。。

なにより間違いなく運動不足解消になるしな。


その日の夜、痛む足にダンナ君が使い切らずにたくさん残っているケトプロフェンテープを貼った。


大腿骨頭壊死症を発症して整形外科にかかり始めた頃から、毎日寝る前に足腰に貼るのを手伝っていた。

一枚を半分に切って、少しずつ貼る場所を変えて。

股関節を庇って足を引き摺るように歩いていたから、色んな所に負荷がかかっていたのかもしれない。

男性にしては色が白くて、しっかりした骨格にあたたかくて柔らかい肉付きの脚。

あの時は確実にしっかりと血が通い体温があって存在していたのに、今は跡形もない肉体。



……それと足にまつわる話。

ダンナ君の足の爪はいつも私が切っていた。

最初の脳の手術後、脳神経外科の病棟から泌尿器科の病棟に戻った時、足の爪を切ってあげようとした時だったか、ダンナ君の足がやたらと臭くなっていて驚いた。

あまりに臭いので、私は病室の手拭きペーパーにアルコール消毒液を染み込ませて拭いてみたりと試行錯誤し始めた。


「頭の手術したら足がクサなった…!」


プチパニックの中、ダンナ君の言葉に爆笑した思い出。


……

そして死の直前、救急車を呼ぶ前日から急激に自分の意思で持ち上げられなくなってしまった脚。


闘いきった身体を燃やしてお骨上げをする時、トレーに乗って登場したダンナ君の骸骨には、太ももの骨の上部が左右とも全く残っていなかった。

スカスカになった大腿骨頭は炎に耐えきれずに無くなってしまっていたのだ。


………

仮に元気だったとしてもダンナ君は登山なんかしないんだけど、代わりにというか何というか、とにかくダンナ君の分まで歩くぞ、という気持ちでまた登る。


















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