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いつか、本を書く日。

大学の卒業旅行で、私は”とある予言”を受けたことがある。

25歳。1浪して入った6年制大学を卒業する歳のこと。
大学の友人たちとアメリカのグランドキャニオン周辺をめぐる卒業旅行だった。
どこまでも赤褐色の大地、美しいカーブを描く地層、広すぎる満天の星空、
どの景色もそれは印象的だった。
だけど、心にずっと刻まれていたものは別にあった。

セドナ、という街で、事は起こった。
どうやらアメリカ随一のパワースポットらしい。
ガイドさんも、この空気感わかるよね?、と自信気である。
まったくもってそういう類に関心の薄い人間なのだけれど、
当時はそういうものかと思い切り息を吸い込んでみたりしていた。

友人の発案で、観光がてら、私たち一行は占いのお店に入った。
値段と時間の兼ね合いで、代表の1人を占ってもらうこと。
「卒業したらいついつによいパートナーが現れて・・・」などと
それらしいことをそれらしく占い師のおばあさんは教えてくれた。
大学卒業という節目の時期でもあったので、
みんな思い思いに今後の人生に思いを馳せていた。

ふと、占い師のおばあさんが、せっかくなのでという感じで
一緒に聞いていた私たちにも一言ずつ言葉をかけてくれた。
そこで私が言われたのが、
「あなたはいつか、本を書くよ」
という言葉だった。

私のことをなんにも知らないはずの、
異国の地のおばあさんの言葉だったけど、
じっと目を見て言われると
「おお、そうなのかもしれない…!」
と真に受けやすい私の心はすっかり感化されてしまった。

小さなころから本が好きで、読むことが好きで、書くことも好きで。
ずっと、背中を押してくれる言葉がほしかったのかもしれない。
思いがけないところからもらったその言葉を、
私は、大事に、大事に、心に刻んでおいた。

それから10年弱。急に思い立った。
いつか本を書く日、それは今日だ。

私の言葉がどこのだれに届いていくのかわからないけれど。
10年越しに私の背中を押した言葉があるように、
私が何気なく綴ったものごとによって、
つながったり、はじまったりすることだってあるような気がする。

なにはともあれ、「いつか本を書く」記念すべきはじめの一歩の日。

・・・

目標は、2024年12月1日の文学フリマ東京39に出す本をつくること。


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